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BL短編集「キライな芸能人1位を抱くのも満更でもない」試し読み

2000字前後のアダルトなBL小説を10作収録した短編集。すべてR18。
現代ものから学生、社会人もの、ファンタジー、ゲーム転生、ジャンルはなんでもござれ。




【キライな芸能人1位を抱くのも満更でもない】

矢代 仁、二十代半ばにして映画ドラマ舞台に引っ張りだこの俳優。

芝居の技術を評価されながらも、素行のわるさが目立ち、世間の好感度は低い。
きっかけは共演したアイドルに「その腐った根性を治せないなら、とっととアイドル辞めろ!」と罵ったこと。

激怒したファンとマスコミに叩かれまくるも、以降、大物俳優、世界的映画賞を獲った監督、有名プロデューサーに悪態を吐きつづけ、そのたびに炎上。

それでも仕事のオファーは絶えなかったが、今年発表された「キライな芸能人」の断トツ1位に輝くという事態に。

そんな悪名高い矢代仁のマネージャーに俺が抜擢。
憧れの俳優、彼のいる事務所に就職できて万々歳だったのが、まさか初仕事でとんだ外れくじを引かされるとは。

果たして、仕事をしだしたら、噂どおりの口のわるさ。
ちょっとしたミスをしただけで「仕事に対する気合が足りていない証拠だ!つぎ、同じ舐めた態度とったらクビにするからな!」と超高圧的説教を噛ましたもので。

これじゃあ、マネージャーがどんどん逃げるのもうなずけるが、俺はかなりの負けずぎらい。
相手の当たりがきついほど「なにくそ!」と食らいつきたくなる性分。

【袋とじを開けておまえを見た記憶を消したい】

俺の従兄は同性愛者で、家族や周りに公言済み。
もちろん俺も承知しているし、打ちあけられたときは「だいじょうぶ、おまえはタイプでないから」と親指を立てられたもので。

まあ、幼いころから親しく、ゲーム仲間でもある従兄なので、俺がタイプか、そうでないかは、どうてもよかったのだが。

学校帰りに従兄の家にいくと、まだ帰っていないというに部屋で待つことに。
で、目にとまったのが、机の上のゲイ雑誌。

いやいや、カミングアウトたとはいえ、ここまで明け透けにする従兄ではない。
部屋が片づいているに、叔母が掃除をしてベッドの下から引きずりだしたのを置いたといったところか。

従兄に同情しつつ、さて、ここは悩みどころ。

色気より食い気、というか、お年ごろにして、ゲームまっしぐらな俺だけに、恋愛や性的なことに、あまり興味なし。
が、目のまえにエロ本が置いてあるのを無視できないほどには好奇心あり。

悩むことしばし、雑誌に手を伸ばして。

【いかれた博愛主義者は童貞の俺を許さない】

田淵はだれにでも親切で、惜しみなく愛情を注ぐ。
「生理的に受けつけない」と不快感を露わにする俺にさえ。

そうして拒絶するには訳がある。
まえに似たような博愛主義の男に裏切られたから。

人間不信の俺にして懐いたものを「あいつだけは、生理的にむりだわあ」との陰口を耳にしてしまい。

なんて経験があっては、田淵の博愛が、本物だろうと偽物だろうと関わりたくなかったが、あいにく同じ学科専攻で同じ教授に師事。
将来を棒にふって身を引くのも癪で、日々の博愛主義の押しつけに耐えていたのだが。

分かっている。
博愛を貫こうとする人間は、突っぱねるほど、むきになって干渉してくるというのは。

頭では分かっていても、トラウマがあるに体が拒否反応を示す。
対して「人は一人で生きていけないよ」「どんな人も愛でつながれるんだ」「人と理解を深めることこそ人生なんだ」と偽善的な言葉を並べたて、かまってくるから鬱陶しいったらない。

いい加減、俺も懲りて、教授に頼まれた作業を田淵としたとき。

【2000歳の少年風の魔物が俺の胸を吸いたいそうです】

魔物がはびこる世界で旅する一匹狼の冒険者であり、俺は武闘家。

旅の目的は、子供のころ魔物に誘拐された幼なじみの捜索。

誘拐騒ぎがあたころ、たまたま村に立ち寄った武闘家に弟子いりをして旅立ち。
独立してからは、ずっと一人で幼なじみの行方の情報を求めつつ、あちこち探しまわっている。

情報の入手方法で、もっとも有効なのが魔物に聞くこと。

魔物のなかには知能が高く、人と言葉を交わせるのがいる。
あまり人に危害を加えず、気まぐれながら、見返りによって人の願いを聞きいれてくれることも。

とはいえ、教会が「邪なるものと契約するのは禁忌」と定めているため、冒険者の多くは、そういった魔物と遭遇すれば、有無もいわさず倒そうと。
情報入手の邪魔になるから、一人で旅をしているわけだ。

今のところ収獲はほぼなし。
いや、手ごたえはあるようなのだが。

事情を語り、あらためて「なにか情報ないか」と聞いたところで「あーうん、ないね!」とすぐに消える。
目を泳がせ、言葉につまるあたり、知ってても教えられない訳がありそう。

【魔王の息子が鬱陶しいからいやらしい魔法をかけてやります】

俺には生まれつき人の体を癒す力があるらしい。
そのことを自覚したのは、幼き日のこと。

思い慕う冒険者の叔父が村に立ち寄って「骨折が治らなくて」とぼやいたのがきっかけ。
「いたいのいたいのとんでけー」と腕に手をかざしたら完治を。

世にも稀な俺の特異性に気づいた叔父は「この力を使っていけないし、人に知られてもならない」と深刻な顔つきで忠告。
曰く「魔物に狙われる」と。

冒険者として尊敬する叔父のいいつけなら従うというもの。

ただ、それから五年後、大切な幼なじみが崖から転落して重傷に。
とても見過ごせず、多くの村人がいるまえで、癒しの力を披露してしまい。

村人は良心的だったから、叔父と同じく心配をし、俺のことを秘密にしようとしたが、目撃したよそ者が話を漏らしたらしい。
幼なじみの大事故があって、すこしもせず俺は魔物に攫われた。

つれていかれたのは世界の果てにある魔王の根城。
かなりご高齢のしわくちゃの魔王曰く「おまえは我らにとって脅威であり有益な存在だ」と。

【どうしてお前と仲直りエッチをしなきゃならないんだ!】

せっかく入手困難なチケットを確保し、ライブ当時をたのしみにしていたのが。
阿保の友人の田原は「浮気がばれて、今、三人で修羅場だから」とドタキャン。

チケットは「ギブミー!」と泣いていた女の子にあげたとはいえ、ドタキャンに思った以上に落胆して、ライブでは今一、はしゃげず。
ライブ終了後には、悲しみは怒りに。

もちろん、田原からは謝罪のメッセージがたくさん届き、電話もかかってきたが全部、無視。
大学でも徹底的にシカト。

そんな俺を追いながら、あわあわしていた田原は一週間経って、ついに強行手段に。
大学から帰ろうとした俺の腕をつかみ、どれだけ罵られても放さず、アパートに連行。

すでに用意していた腕自慢の料理をふるまい、酒をたらふく飲ませて懐柔を試みたよう。

まあ、貧乏学生となれば、まんまと絆されるところだが、俺の恨みは深く、酔っぱらいながら「約束を痴話げんかでおじゃんにするなんて最低!」と責めまくり。

【不能なせいで婚約破棄された侯爵はモブの俺を監禁したい】

このごろ乙女ゲームにはまっている姉は、よくリ居間のテレビを占拠し、大画面でプレイ。
風呂上がりに、ぼうっと見ているうちに、俺もすっかり詳しくなり。

で、主人公の幼なじみの、ミゲル侯爵を大嫌悪。

幼いころ、ミゲルは「将来はぼくのお嫁さんになって!」とプロポーズ。
そのあとも一途に思いを寄せるという、乙女ゲームにおいて王道のお相手ながら、落とすのは困難。

まず第一に、ミゲルと主人公の家がいがみ合っているし。
第二に、イケメンのミゲルに、皇女がベタ惚れし、主人公をイジメるし。

そして、なにより、ミゲルが優柔不断な鼻持ちならない軟弱野郎だから。

皆にいい顔をしようとし、自分の意志を明確にしなければ、腹をくくっての判断や決断をしない。
ただただ状況に流され、当たり障りのない態度に徹する。

結果、主人公のヒロインを泣かせてばかりで「ごめんよ、情けないぼくを許しておくれ」と自分に酔った発言を垂れ流し、すこしもせず皇女に媚びへつらう根性の腐った男だ。

が、姉は「やだあ、また泣いちゃってかわいー」とめろめろ。

【「好きだ」といわない君は、さも愛おしげに俺を抱く】

大学の友人に高級の家庭教師の仕事を紹介された。

雇い主は資産家の親で、俺の通う大学に息子をいれたいらしく、学生に勉強を見てほしいと。

たしかに俺は大学トップクラスの成績だから、雇い主の期待に応えられそうだが、勉強以外は割とぽんこつ。
しょっちゅう物忘れをするし、初歩的なミスをしてばかりだし、上の空になりがちで、よく、まぬけな顔をしているし。

おかげでバイトが首になっての友人の紹介。
ダメもとで親と面談したところ、なんと合格。

「面談の動画を見て息子が気にいったから」と顔をしかめたに、父親は不服なのだろう。

果たして、親の意見に左右されずに俺を指名した息子、翔太くんは、年齢以上に大人びていた。
空手を習っているらしく、俺より大柄で、且つ秀才であり、知的で品のある言動やふるまい。

べつに家庭教師なんかいらなくてもいいでのは?と思うほど、勉強ができて「この公式を使ったほうがいいのでは?」と俺のほうが、なにかと勉強させてもらう日々。

ふつうなら「年下のくせに生意気なあ!」と癇に障るのかもしれないが、能天気な俺は「仕事が楽なうえ、高い給料もらえてラッキー!」とむしろご機嫌。

【勇者一行の問題児の俺が魔物に体を売られてもだれも助けてくれない】

俺は勇者一行に欠かせない黒魔導師でありながら、手におえない問題児。

原因は親にもあると思う。
幼いころから、俺を黒魔導師にすべく英才教育を。

おかげで、世界屈指の最強黒魔導師になれたとはいえ、なにせ、遊び盛りの時期を、教育のため、ほぼ軟禁されていたから。

勇者一行に加わり、自由になったら、そりゃあ反動で遊び呆けるというもの。
とくに熱をあげたのはギャンブル。

自分の金をどぶに捨てるのは当りまえ。
借金をして大負けをし、勇者に泣きついたり、やくざものと乱闘したり、仲間たちと夜逃げしたり。

どれだけ負けても懲りずに借金トラブルを起こすのに「つぎ巻きこんだら、見限るからな」と仲間は警告。
一方、お人好しの勇者は「ベルのおかげで逃げ足が速くなったよ」と苦笑し、叱ったり、諭すことはなかったが。

勇者が大目に見てくれたし「なんだかんだ一流黒魔導師を失いたくないだろ」と高をくくっていたら、見事に足をすくわれて。

【そのパンチラに一目惚れした俺はトラウマ上等に抱かれかねない】

他校の学園祭に遊びにいったとき。
友人と談笑しながら階段をのぼっていて「きゃあ!」と耳を打ち、顔をあげたら、いちご柄のパンツが。

スカートがめくれたのは一瞬なれど、鮮やかなその光景は脳裏に焼きついたもので。
しかも、振りかえって顔を真っ赤にしたツインテールの女子の、まあ、かわいいこと。

すっかりハートを射ぬかれた俺は、のぼせあがって呆けてしまい。
友人に長いこと揺さぶられて、やっと意識をとりもどしたなら、もちろん、いちご柄のパンツの彼女を捜索。

といって、探しだすのは難しくなく。
だって、メイドの格好をしていたから。

「メイド喫茶やっているとこ知らない?」とまわりに聞いて辿りついたのは、果たして「女装メイド喫茶」。
「女装で女物のパンツもはくんかい!」と落胆しつつも、彼女、いや、彼がいないか尋ねると不在とのこと。

さらに詳しく彼について聞いてみたら「あいつ、男の娘で、ふだんからセーラー服で登校しているよ」という。

それを知った瞬間の絶望感たるや。

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