見出し画像

コンビニのおじさんズ

 自宅から徒歩3分のところにあるコンビニは、とてもフランクである。

 例えば、ポスティングチラシについてるクーポンを持参すると割引してもらえるキャンペーンの期間中、うっかりチラシを家に置いてきてしまい、「あっ、クーポンを忘れちゃった!」と思わず声に出せば、レジの片隅に置いてあるチラシのストックを手に取った店員さんが、「じゃあこれで割引しちゃいますね!」とやってくれる。

 ここは田舎の古い団地が立ち並ぶ場所。
 ざっくばらんで口さがない年寄りのお客さんが多いというのもあるだろう。

 クーポン割引は大盤振る舞い。「持ってきてもらわないと割り引けないんです」とは言わないらしい。サービス精神旺盛でラフだ。
 チェーン店だが、融通がきくので、お客さんも比較的多い。

 若干やりすぎなところもあり、会員登録制のポイントカードを持っていれば割引されるという商品を、私がそうと知らずにレジに持っていったら、店員のおじさんが勝手に自分のカードをピッと通して、「これで100円安くなるんでね!」とやってくれた。(私はカードを作っていなかった)

 私からすれば全然問題はないが、(むしろ100円得して嬉しくもあるが)、このおじさん、あとでバレて怒られたりしないんだろうか…と心配になったりもする。

 深夜帯だったし、時間帯マジックによるなんでも許されそうなノリで、なんとかなっちゃうものなんだろうか。

 小うるさい小売店の小うるさい店長の下で働いていた私は少しソワソワするが、こういうルールに則りすぎないマイペースな人を見ると、なんだかホッとして安心するのも事実だ。



 コンビニのおじさんといえば、東京に住んでいた頃に(10年ほど前だ)、たまに行っていたコンビニ店のレジの人が印象に残っている。

 お会計時、唐突に前振りもなく、

「リサラーソンさんですねー」
 と言われたのだ。

「いらっしゃいませー」
 と同じ声のトーンだった。

 私が着ているユニクロのリサラーソンコラボTシャツを見て言ったのだ、と2秒遅れて理解した。

 曖昧にぎこちなく笑みを作り、「ああ、はいそうです」と返事した私に、続くおじさんの会話は特になかった。声かけといてスルーかい!オイ。

 見た目・風貌からは、北欧系デザインに興味があるようにはまったく見えなかったけれど、おじさん、密かなリサラーソン好きだったのだろうか。

 とりあえず、着ているTシャツに印刷されたイラストの作者を一方的に当てられた……という状態になった私は、頭を(?????)の状態にして家に帰り、母親に報告した。

 それからしばらくの間、リサラーソンTシャツを着ると
「リサラーソンさんですねー」
 と声をかけ合うのが、我が家の中で流行った。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?