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140字小説

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140小説まとめ
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記事一覧

140字小説 「湖で滑る者」

木々に囲まれた湖に一人の女がいた。月明かりに、ぽうと浮かびながら、くるくる回っている。滑…

霧満るろ
1日前

140字小説 「月と兎」

空を見ながらジャンプした。鳥のように飛びたかった。でも翼がないので、決して空に行くことは…

霧満るろ
2日前
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140字小説 「子供議会」

厳粛な空気の中、貫禄ある大人が、まだ小学生の女の子に意見を求めた。周囲で見守る大人たちは…

霧満るろ
3日前

140字小説 「祖父のカナリア」

山登りに来ていた私は、岩山の窪みで休憩したとき、一瞬で意識が遠のくのを感じた。走馬灯のよ…

霧満るろ
4日前
1

140字小説 「地名問題」

「今度、土地の名前が変わるらしいぜ」「誰だよ、そんな面倒なこと考えたの」「さあて、政府の…

霧満るろ
5日前
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140字小説 「なないろのある町」

太陽の傾く夕方。紫陽花の綺麗な通りのポストに、女の子がひまわりのシールを貼ったハガキを投…

霧満るろ
6日前
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140字小説 「海を見る」

海岸線を誰かが歩いていた。装いを見る限り旅の青年だ。浜辺前の道路に、荷物を積んだ大型バイクが停めてある。あの年頃では自分探しでもしているのだろうか。ふと気づくと、青年はその手に白い花を持っていた。そして波打ち際で、これを海に流し、手の平を合わせた。潮騒に乗る思い出は、きっと苦い。

140字小説 「熱々」

「一つだけ花火として打ち上げられるとしたら何が良い?」「ハートマークだね。パートナーが喜…

霧満るろ
8日前

140字小説 「笑顔の挨拶」

骨折して入院した。相部屋はお年寄りばかりで、ベッドも入り口の近く。暇な時間が続いたとき、…

霧満るろ
9日前

140字小説 「健康診断」

医者が俯いていた。嫌な予感が脳裏を過ぎる。思い返せば、あまり運動していなかった。煙草は吸…

霧満るろ
10日前
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140字小説 「飲み干す一杯」

巷で話題のラーメン屋がある。最後の一滴まで飲み干すとの触れ込みだが、移動式で神出鬼没。目…

霧満るろ
11日前

140字小説 「狙われやすい国」

宇宙人は地球侵攻に向けた会議をしていた。この星には人間という知的生命体がいるが、文明レベ…

霧満るろ
12日前

140字小説 「涙の理由」

友達に遊園地に誘われた。用事もなかったので、当日待ち合わせしてその日を迎える。思えば、遊…

霧満るろ
13日前

140字小説 「映らないカメラ」

犯人を映さないカメラが話題になった。犯罪を犯したばかりの人間だけ、そのカメラには絶対映らないらしい。何の意味があるのだろうかと人々は疑問に思った。ある日、噂のカメラが設置された金融街に強盗が押し入った。犯人は銀行強盗を成功させるが、ほどなく道端で、現金と犯人の服のみが発見された。