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原点回帰のフィニッシュ。サントリー美術館

生活の中の美。
それは、生活をしていてふと"美しさ"に気付くこと。
それは、生活という風景に"美"があること。

飲料メーカーとして有名なサントリーグループが手がけるサントリー美術館は、開館以来ずっと「生活の中の美」を基本テーマとして発信してきた。それは1961年に丸の内でオープンし、赤坂見附への移転、六本木への再移転を経ても変わらない。

東京都・六本木の東京ミッドタウンに移転して以来、初の大改修を終えてリニューアルオープン記念に開かれた3つの企画展。そのうち、最後を飾る展覧会はまさに「美を結ぶ。美をひらく。」というサントリー美術館のミュージアム・メッセージ、原点に回帰するタイトルだった。

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サントリー美術館の入り口

都営新宿線の六本木駅に到着したら、森美術館のあるヒルズ方面とは逆の東京ミッドタウン方面へ向かう。

サントリー美術館があるのはガレリアの3階。乃木坂方面にそのまま歩いていくと国立新美術館にも行ける。六本木アート・トライアングルの「あとろ割」を使えば、同じ六本木エリアの森美術館・国立新美術館・サントリー美術館の3つは入場料の割引ができるので覚えておくと便利だ。

今回の改修は、2007年に現在の六本木に移転して初の大規模な改修でもある。大きく変わった点は、建築家の隈研吾氏が設計したエントランス。日本美術と関わりの深い「水」を表現した、透明感のある受付カウンターは入ってすぐ目に留まる。

その他に、展示室内のLED照明や展示用ガラスケースも新しいものになっている。来場者の目にはなかなかパッと見て分かりにくいが、心地よい鑑賞や入念な作品保護のためにテコ入れがされているのだという。

和モダンな雰囲気の外観は、「都市の居間」をイメージしたそうだ。木の温かみに包まれ、まったりとくつろげるような居心地の良さがある。


リニューアル・オープン記念展Ⅲ
美を結ぶ。美をひらく。美の交流が生んだ6つの物語

展示室

サントリー美術館には常設展がなく、常に企画展のみを開催している。今回の企画展は、東洋と西洋・古代と近代など異なるものが「結びつく」ことで生まれる美、そこから「ひらかれる」美がテーマ。

最初のセクションは古伊万里の展示。彩豊かな器の数々を楽しめる。透明なガラスケースに貼ってある解説文は、暗がりの中で浮かび上がるように見えて素敵だ。

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光と影のコントラストが美しい展示空間。

色鮮やかな琉球の紅型(びんがた)は文様を作って一つ一つ手染めしたもので、高級品とされていたらしい。

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色鮮やかな琉球紅型の数々
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上から光が当たって下に影ができるライティング。美しい見せ方。

これは凄い職人技だった!
こんなに細かい模様を切り抜くなんて。

浮世絵、和ガラスの展示もかなり充実している。4階の第1展示室から階段を降りた先の第2展示室に広がる「ぎやまん・びろうど」のコレクションは、見た目も可愛らしく華やかで見応えがあった。

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昭和レトロのような可愛さを感じる作品も。

個人的な見どころは何と言ってもエミール・ガレ
植物学者としての顔も持ち、自然界にある「命」を深く観察する姿勢は作品づくりにも表れている。

豊かな自然の色、ユニークで規則性のない曲線、個性的なシルエット。斬新なデザインが当時与えたであろうインパクトの大きさは、想像に難くない。そんなガレは日本美術に影響を受けていた作家の一人でもあり、日本画の技法などを絵柄に取り入れていたという。

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エミール・ガレ作の美しい器

東洋と西洋が繋がり、混ざり合い、新たな美が生まれる。これまでの美の歴史と、これから広がる無限の可能性を感じさせて展示は終了した。


ミュージアムショップ

サントリー美術館のミュージアムショップは、美術館出口からそのまま導線が繋がっている。グッズや図録の他、オリジナルキャラクター「サン美ツル太」くんのモチーフにもなっている、所蔵品《色絵鶴香合》のグッズもある。

ミュージアムカフェ

隣接している「カフェ 加賀麩不室屋」では、お麩を使った御膳やスイーツを楽しめる。

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カフェ 加賀麩不室屋の入り口
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お麩のパフェを食べられる。

豪奢なパフェには生麩、揚げ麩、白玉のようなモチモチした麩などが入っている。サントリー美術館では、こうして心ゆくまで「和」を楽しめる。

ショップとカフェは美術館の閉館日に営業していることもあり、展示のチケットがなくても利用が可能だ。気軽に立ち寄ってみたくなる。最新情報は公式サイトで確かめてみよう。

年間パスポート

展覧会ごとに販売している図録は、サントリー美術館のメンバーズクラブ会員になると定価より少しお得に買うことができる。会報誌や限定イベントなどの案内もあるので、展示をよく見に行く人は入会を検討してみるのもいいだろう。

おわりに

古くから日本人の生活に寄り添い、馴染んできた"美"の数々。その奥ゆかしさは時を経た今も褪せることはない。最先端をゆく都心で、自宅の居間のようにくつろぎながら日本美術を眺める愉しみ。

ほっと一息つきたい時に訪れたい、素敵な美術館だ。

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サントリー美術館
〒107-8643 東京都港区赤坂9丁目7−4 東京ミッドタウン ガーデンサイド
TEL:03-3479-8600
公式ホームページ

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