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「にじいろカルテ(第4話)」他人の過去、自分の過去、そして重なりながら現在がある

このドラマ、毎回、誰かを主人公にしながら綴られていく感じのようだ。今回は、井浦新の話。最初から、回想シーン。彼が何故、農業にこだわるのか?何故、ここにいるのか?辛い思い出の果てにここにいることが視聴者に語られる。

それと並行するように、北村匠海が、ぶよに刺されたあとが痛くて、のたうち回っている。彼は何も無いように嘘をつくが、同じように刺された村人たちが集まってくる。今回の村人たちの役目は、ここでの騒がしだけ。ジジイズも出てこない。伝えたいことを伝えるために、今回の出演者は至ってシンプルな感じ。そして、光石研だけが井浦の過去を知っている段取りもここで伝えられる。

このドラマ、少しうざったくもある田舎の人間関係みたいなものが、すごく瑞々しく感じる。その雰囲気を作るためのキャスティングは見事としか言いようがない。ファンタジーと考えれば、キャラがはっきりしている出演者が必要だったのだろう。そこをうまくいかしている。

井浦の亡くなった恋人役は佐々木希。彼女もまたプライベートでも辛い状況の中、女優としてやっていくということなのだろう。今回の役は、悲しい役だが、結構難しい役だ。井浦の心に残っているイメージをしっかり演じていた。久々に現場に馴染んでいくのは大変だろうし、まだまだコロナ禍のなか、良い仕事をしていって欲しい。

そして、話は今日のクライマックスの土砂崩れ現場でのトリアージに。過去を思い出して、しっかりと役目を果たそうとする井浦。患者に怒鳴るシーンはドラマを締める演技。「患者の言葉を信じてはいけない」。確かに私も、自分が被害者だったら、「自分は大丈夫」と言いそうだものな。異次元の中では、冷静な判断も客観的な判断も自分ではできないということだ。そういう、本質を深くはないが、ちゃんと描いていく感じは好きである。

そして、最後に水野久美が出てきて、みんなで「カエルの歌」の輪唱。このドラマはそういうドラマなのだ。とにかく、観終わった後に、ちょっと心が柔らかくなる感じが好きである。視聴率優先主義の日本のテレビドラマにあって、こういうテイストで作られるものが最近は少ない。エキセントリックな演出のものがあってもいいが、テレビドラマは明日の心の活力になる様なものであって欲しいと思ったりする。

人は皆、それぞれの過去を持ち。皆、隠したいことも多く持っている。そして、それを捨てようと思いながら抱え続けていたりもする。そんな、過去を持ってこそ、人は他人に優しくなれたりもする。そんな人々が交錯するときに化学反応が起きて、それが虹のように輝くのかもしれない。そんなことを感じさせてくれる1時間は貴重である。

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