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「松本清張「顔」」昔の名前で出ている俳優たちの艶のなさが作品を輝かせない理由?

いまだに、松本清張原作というのはドラマにして視聴率を取れるのだろうか?推理劇にしたら古典になりつつあるし、社会的な側面から見ても古臭くなってる感じはする。そんな中、ネットで曲がバズるみたいなことや、引きこもりみたいな現代的なものを放り込みながら、アレンジしている脚本家の皆さんも大変だなと思ったりした。とはいえ、この「顔」のクライマックスでの身バレする感じはもう一つサスペンス性には欠ける気がする。

とはいえ、私がこのドラマを見たのは、後藤久美子が久々に日本のドラマに出たということである。子育ても終わり、これからそれなりに女優業を再開していく気なのだろうか?「男はつらいよ おかえり寅さん」が2019年だったから、四年ぶりの女優復帰ということになる。「寅さん」でも固さが目立ったが、まあ、画面に出てくるオーラもそれなりにあった。

と考えると、今回はもう一つ「歳をとったな」と感じる印象が強かった。メイクはそれなりの人に頼んでいるのだろうが、もう一つ若い男までを魅了する女性ではなくなっている。共演している、オスカーの後輩の武井咲の肌がまだまだ若いせいもあるが、30歳の彼女と49歳の後藤を比べても仕方はないか・・。

そういうことよりも、この2人ともが芝居が硬いのがすごく気になった。武井咲は殺人犯ながらも、ネットで歌がバズり顔を出さずにデビューする役なわけだが、もう一つ過去への葛藤みたいなものも感じられず、シンガーとしてのアイデンティティも見えてこない。このあたりはもう一つ感情が描けていない脚本が悪いのだろうが・・。

そして、有能な弁護士である後藤久美子もそのオーラみたいなものが出せていない。やはり、現役を退いていた女優が女優に戻るのは大変なのだなと思ったりする。そして、引きこもりの娘(吉柳咲良)とのやりとりも、もう一つ重厚感が出てこない。吉柳は「アイドル誕生」同様に、なかなか印象的な演技をしているので勿体無い。結果的には、脚本の薄っぺらさと女優の現場に慣れていない感じの空気感がドラマにモロに出てしまっている感じで辛かった。

そして、彼女たちが二人で退治するコトになるYouTuberの緒方直人。緒方拳の息子がこんなミミッチー役をやってはダメですよ。彼の配役の違和感みたいなものが、作品の質のいい加減さをものがってるようにも見える。

そういう部分が、松本清張原作だからで済む話ではない。江戸川乱歩や横溝正史作品なら、その舞台の時代性がはっきりしているので時代を現代に置き換えなくても作品として上手く描けるわけだが、松本清張作品は、多くの作品が戦後の昭和の日本が舞台であり、いろんなものが現代に置き換えると齟齬を産んだりするわけである。それでも、作られるのは、高齢者から見たら安心して見られるということか?それなら舞台を現代に移すこともない。

色々と、良いところが見つからないままの二時間だった。まあ、昔の二時間ドラマのテイストが懐かしくもあり、つまらなくもあり、その時代には戻ってほしくないとも思った。

後藤久美子、本当に魅力がなくなったよね。

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