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「テーラー 人生の仕立て屋」人生は自分で仕立て上げるものかもしれないということでしょうか?

最近は、昨年以上に洋画不足の感じがする。見たいと思う作品が少ない。そんな中で、ものつくりの映画に感じたのと、ギリシア映画ということもあって観る。そう、ヨーロッパの小品は個人的には好きなのだ。そこに異文化をみて感じるものがあれば、それは良き体験だ。

この映画、基本、親から受け継いだ、いや、親と一緒にやってきたテーラーが商売にならずに、新しい人生を見出す話。とはいえ、できることは、服を作ることだけ、屋台で仕立て屋をやるということを思いつく。そして、彼は屋台を自分で作り出す。この辺りは、さすがクリエイターという話である。そして、この屋台が結構丈夫なのに驚いた。そして、それを手で引くところから、バイクで引き、最後は車で移動仕立て屋となるという、なかなかのサクセスストーリー?いや、人生を変える話である。

とはいえ、さすがに屋台で高級な紳士服は売れない。そして、女性客がくるということもあり、方針変換。とはいえ、女性の服は作ったことがない。隣の奥様に手伝ってもらって、商売を続ける。そんな中で無理に作ったウェディングドレス。それを喜ぶ客の顔に少しづつ新しいやりがいを感じるというストーリー。

そんな彼をみた父親が、「仕立て屋」は「お針子」とは違うという言葉を息子に投げかける。ある意味、商品の裏にも男尊女卑みたいな考え方があるのだろう。「理髪師」と「美容師」の違いも似たようなものがあるのかもしれない。そう、「仕立て屋」というのは一生ものを作るクリエイターとしての誇りである。それに対し、女性の服を作るというのは、流行り物を作る感じなのかもしれない。そして、プライドを持つ仕事が負けていく世の末。なかなか、観ていて辛い感じもあった。

最後は、もう少し大きなサプライズがあるのかと思ったら、そうでもなかった。その代わりに最後の問題になったのが、隣の奥様との恋愛問題。その辺りは私自身あまり興味がなかったのでちょっと意外。ただ、この話をはっきりと奥様が断るというのではなく、その子供が、見事に意見を動作で示すシーンで決着!なかなかわかりやすかった。

そして、この映画、最初から説明的なセリフがほとんどない。彼の店が儲かっていないことは、店の中の空気感だけで見せてくる。そして、主人公を演じる男は、無愛想なのだが、表情で演技する。多分、字幕がなくてもそれなりに理解できる映画だ。そういう意味では優れている。

そして、結婚パーティーのシーンなどは、ギリシアそのもののシーン。日本では、ウェディングドレスも今は商売にはならない気がするが、まだまだこちらの人はそういう儀式は大切にしている感じ。だから、ドレスを安く作れば儲かる。そういう民族性の面白さは多分にあるが、父の病気の看病とか、傍に重い話があるため、全体的には軽やかさに欠ける映画だと思った。

ただ、ドレスの創作シーンなどは、それなりに楽しめるし、ラスト、店も完全にとられて、色々と吹っ切れた主人公の顔は爽やかであった。まあ、どこの国も大変だということか?

あと、先にも書いた、隣の子供の演技がアクセントになっているのも印象的。子役を使えば、客の心は動くが、それを全体のエッセンスとしてうまく使いこなしている映画は、よくできた映画であると言えると思う。

そして、女性監督視線の映画であることは確かで、男たちの再生に対してそこそこ厳しい感じはしましたね。そんなことより、地中海の香りがする街並みを見るだけでも、ちょっと小旅行できた気分になったのは、良かったです。


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