見出し画像

「優しい音楽~ティアーズ・イン・ヘヴン 天国のきみへ~」新春にふさわしい、優しい家族と愛情のお話

そう、こういうのが新年に観たかったりするんですよね。というのは、歳をとったからだろうか?昨年の「人生最高の贈りもの」に続き、テレビ東京の新春スペシャルは洒落たホームドラマだった。原作、瀬尾まいこ 脚本、岡田惠和 演出、若松節朗。このメンツで、観たくなるドラマではあるが、そんな期待を裏切らない、題名通りの優しいドラマ。そして、最後のオチはなかなか想像できなかったし、それがあっての最後のキスシーンは素敵だった。

冒頭の、最初の極楽寺駅での出会いのシーン。観ている方には、「何が起こった?これはSFか?」とさえ思わせる、ちょっと変なシーン。ここの演出はちょっとうまくないかな?とは思ったが、土屋太鳳の呆然という感じはよくできていた。そして、彼、永山絢斗が、亡くなった兄にそっくりで、それが土屋の家族を過去に引き戻すような出来事であり、それにより、家族を亡くしていた永山にもまた、新しい出会いとして奇跡を起こすという物語。

岡田脚本は、いつも通りに言いたいこと、伝えたいことをしっかりと脚本にうまく封じ込んでいる。それにより、人の出会い、家族の大切さ、人が真摯に向かう態度が愛にかわり、奇跡を起こすみたいなことを、さらりと描いてしまう感じは、もはや現代のホームドラマの大家と読んでもいいだろう。

そして、昨今は映画で磨かれた腕なのか、若松演出もなかなか綺麗な湘南のシーンを使って、人と人とが対峙するシーンをうまく描いていく。冒頭のシーンはちょっと?とは書いたが、特に、ロングショットや少し長めのセリフのシーンがとてもリズムがよく感じられたし、ラストの家族合奏シーンからの告白の流れはとても綺麗だった。

主題曲「ティアーズ・イン・ヘブン」がとても美しく流れる中で、この世に生きる意味を思い直し、天に召された人たちをここにいるかのように思い出す。そう、新春にこういうドラマが見たいんです!と、本当に思った。テレビ東京さん、来年も期待しております。

そして、役者の皆さんもなかなか素敵でした。主演の土屋太鳳さんは、最後の「好きです」の顔がめちゃくちゃ良かったです。彼女は、演技全般として、どちらかというと表情が暗い方が演技として多い印象がある。少し、その分堅苦しい。元々綺麗な方なのだから、もっと笑顔で明るい演技を見たい気がする。まだまだ成長していってほしい女優さんだ。

そして、相手役の永山絢斗さんは、二役という難しい姿を結構しっかり演じていらした。多分、生きている役を主にして、回想の土屋の兄役を作ったのだろう。ちょっと、世の中に馴染めない感じの生きている役の方は、とてもうまく表現されていた。回想シーンは安田との楽しそうな表情が印象的。まあ、これだけできていれば及第点か…。

その、母親の安田成美さん。こういう、ちょっと病的な優しい母親というイメージにはぴったりでしたね。そして、思いが込み上げると、自分がコントロールできなくなる感じや、最後の歌で詰まって歌えなくなるところも好演。こういう雰囲気には、とても重要な女優さんと確認できました。

父親役の仲村トオルさん。あなたは、総理大臣より、こういう役の方が似合っています。他の家族や永山絢斗を優しく見つめているような抱擁感は素敵でした。

そして、脇で、ちょっと不器用な永山の親代わりを演じていた佐藤浩市さん。この歳になって、顔の皺の入り方が、三國連太郎さんに近づいてきましたね。息子さんの寛一郎さんが役者として出てきた分、役回りが変わってきたのに合わせているようにも見えます。まだまだこれから次のステージに上がる役者なのでしょうな。さらに期待!

まあ、元々の原作の素敵な部分というのがあるのでしょうが、岡田脚本は本当に最近の完成度の高さを保っています。今年も新しい連ドラ、楽しみにしております!

この記事が参加している募集

#テレビドラマ感想文

21,388件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?