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「ANNA アナ」冷戦下という舞台で、アクションの王道を貫く輝きと覚醒感

リュック・ベッソン監督の女性主人公アクション。本作は、もう面倒くさいこと言ってないで、楽しめ!と監督の声が聴こえるような、王道のアクション映画である。主人公アナを演じるロシアのモデル出身のサッシャ・ルスはとにかく切れ味の良い強い姿を見事に演じ切っている。そして、自由を求めるその意思もしっかりと伝わってきて、とにかくクールである。

1秒刻みでカットが割れていく感じの最初の方のアクションシーンで見事に観客を掴んでいく。編集において、殺陣を仕込んでいくような感じはとにかく心地良いし、編集者のリズム感がしっかりしていないと完成度は上がってこない。この映画に関しては全てのシーンで満足のいく出来であった。

物語の舞台は1985年から1990年のモスクワ、パリ、ニューヨーク、ミラノ。1991年にソ連は崩壊するので、冷戦下の最後の物語的にできている。そして、KGBとCIAの馬鹿しあいの中で翻弄される、殺人マシンが主人公。クールで、強すぎるくらい強い!映画はそれでいい。問題はそれを演じる肉体だ。

主人公を演じるサッシャ・ルス。確かにモデル体系の美女である。蒼い眼と、薄い金髪が印象的。モデルのシーンもあるが、圧巻であり、そこでカメラマンにキレるシーンも徹底的に自己主張をする。そして、ミッションは確実にこなしていく。別に筋肉質では無い体型はただ、マシンのようにたおやかに動く。絵面として、最高のものを得て映画が撮られた感じだ。

そんな彼女をスパイとして、細かい指摘をしながら完璧にし、最後には利用するKGBの女役のヘレン・ミレンに、彼女がスパイとして成長していく感じがわかりやすく描かれているのもいい。それは、人間のプロとしての成長でもある。このヘレンさん、年齢を見ると、75歳。世界的にみなさん年齢比で若くなってるんですね。

そして、この作品、ミッションを描いては、時間を戻す作りになっている。少し間違えると、このやり方で失敗しそうだが、見事にこの時間軸の使い方がこの映画の面白さにもなっている。コトを起こして、種明かし。それが、観客の予想を上回っていくコトで、ある意味、単純な組織のバカ試合を、濃厚なドラマに変化させているのだ。

最後も、こちらの予測をはるかに上回っていた。娯楽作的には、ある意味、快適な終わり方。日本映画によくある、変な人情的なところがないのが良い。

女性の肉体の美しさを闘いに生かしていく感じは、ただただ心地よい。アクションの連打は、観客の脳を直撃する。そして、彼女が行うSEXに関しても、それはアクションである。心の命ずるままに濃厚にというレベルを超え、戦闘的に快楽をむさぼる。こういうSEXの描き方は、愛だ恋だでアクション映画を中断する気がないコトを示している。そして、ランジェリー姿の主人公は限りなくエロティックである。そう、主人公を決して全裸にせずに、これだけエロティックに昇華できているのも、監督の技である。

紛れもない、ノンストップアクション。映画館がコロナで中断し、再開後、これで4本目の鑑賞だが、最高にテンションが上がった。梅雨にも入って、まだまだ有事の雰囲気が残る中で、こういう映画を見られることは心地よい。映画館に30人くらいのお客さんだったが、皆、顔に満足感が出ていた感じである。

まずは、アクティブな日常を思い出したいと思った一本である。映画館に行ってみようとお考えならオススメの一本である。

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