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『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』ブームを更に大きくするエンターテイメントとした劇場版。これを観た子供達の将来が楽しみ。

とりあえず、観ようと思い、問題は何処でどんな環境で観るかということだった。IMAXも考えたが、TOHOシネマ池袋の轟音上映に行く。確かに音は大きいようで、この映画を観るにあたっては良い環境だった。とにかく、シネコン全てで1日20回前後の上映。コロナ禍の入場制限があったとしても、今までに観た事もない上映体系。ここ、日、月と別のシネコンに行ったが、映画館は、なかなか人が多く盛り上がっていた。

私は原作は読んでいない。アニメシリーズは観た。ということで、先の話を知らずに映画を観ている。その辺りは、様々な人がいるのだろうが、原作の売れ行きを見れば、多くの人が話を知って観に来ているということなのだろう。そういう意味では、紙の上のものが、どう動くのかという楽しみで来た人が多いのだろうか?アニメの楽しみは昔からそういうところにあるのかもしれない。

結論から言えば、117分、私はスクリーンに釘付けにされた。目まぐるしく動くアニメアクションに魅了されていた。列車というアイテムは、まずはとても魅力的である。鬼が制圧した列車に、鬼殺隊が乗り込み、鬼の思い通りに眠らされてしまう。

この夢と現実が交錯する部分がなかなか秀逸。脳の無意識領域にある核を壊せば、鬼殺隊は力を失うという流れで、キャラクター個々の思いを見せていく。この辺りは、心理学的というか、スピリチュアル的というか、哲学的な話の流れ、今の子供達はこういう話をどう理解しているのだろうか?

そして、列車内のバトルが始まると、もはや止まらないアクションの連続。日本のエンタメのレベルの高さを見せ付けるような展開。土俵が違うのかもしれないが、「TENET」よりは面白かった。ある意味、最近では珍しい勧善懲悪的な世界の中で、自分の心がスクリーンに飲まれて高揚していくことを感じた。子供の目で見たら尚更だろう。

そして、この映画主役は、竈門炭治郎というよりは、煉獄杏寿郎である。炎柱の彼が、鬼殺隊の厳しさ、生きること、家族に対する思いなど様々なことを炭治郎たちに教えてくる。それは、スクリーンを観ている子供達に対しても同じだろう。この映画には、そういうスクリーンとの一体感がしっかりできている。

とは言え、私みたいなおじさんも十分に納得してしまった。そう、「鬼滅の刃」というコミックは、この不安定な時代の中で受け入れられるべくして受け入れられたということだ。国のトップからして鬼ばかりの存在が目立つ昨今。鬼退治は、今の子供にとっても重要だということだ。

そして、もちろんこのアニメ、子供騙しではない。大人のエンターテインメントとして十分に成立している。テレビの草創期には、「大人の視聴に耐えうるものでないと子供は満足しないしヒットしない」と言った人もあったと言われる。しかし、実際は子供の観るものは子供しか見なくなっていき、日本のエンタメもテレビも衰退して行ったとも言える。

そう考えると「鬼滅の刃」は大人をも巻き込んだブームの中で映画が作られ、良質な作品コンテンツができたということだろう。私が見ても、日本映画という枠で見れば、今年最高のエンターテインメントとなっていたという評価である。面白かった。そして、力づけられた。もう一度観たいと思わせるきめ細やかさ。どの方面から見ても一級品だ。関わったスタッフ、キャストの皆さんに心より拍手を送りたい。

今朝もニュースで、興行成績や主題歌の売り上げが記録を刻んでいることが報道されていたが、質も伴ってのこの快挙に映画というものの希望さえ見えてくる。そして、この作品に熱狂する子供たちが、将来、どんな社会を作ってくれるか?どんな映画を作ってくれるか?楽しみである。

まあ、この一代ムーブメントにケチをつけたところでなんの意味も持たない気がしたというのが観賞後の高揚した私の意見である。


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