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「明け方の若者たち」黒島結菜に、更なる成長を見たということで満足だった

正月2日目は、この映画を観る。松本花奈監督初長編とのこと。ある意味、1960年代頃にもよくあった、明日に向かう若者たちの苦悩とときめく青春像というか、そこに今風のエッセンスも入れながら、それなりには楽しめた。ただ、この題材に116分の時間は長い。特に、恋愛話に決着がついてから、そう、黒島結菜が消えてからが長すぎる感じではある。そのせいで、色々結末を勘繰ったが、特に捻りはなかった感じ。(これ以降、なるべく避けて書きますが、多分、映画をこれから観る予定の人にはネタバレになると思うので、ご注意ください)

この映画は「伏字」の映画というか、最初にカットしておいた部分が、後になって大きく意味をなす。私的には、そんなことをしなくても、十分映画は成立すると思うが、それのほうが、ちょっと全体がミステリアスになる感じということだろう。原作がどうあれ、この辺りの匙加減は監督が考えることだ。そう、ここでは、男側の北村匠海の方から語られている映画だが、全く逆として、黒島結菜から描くとまた違う風景の映画になるだろう。そういう意味で、さまざまに立体的に描ける可能性があるところを監督はこうしたという感じなのだろう。それはそれで、なかなかキチンと骨太にできた青春映画だ。

北村が勤める、印刷会社の風景は、昭和から変わらない風景。いまだにお辞儀判子の話など馬鹿馬鹿しいが、まだ、上司は昭和生まれだからこんなところは多いのだろう。昭和生まれの私からみても、こういう古典的な会社は早く無くなってほしい。主人公の今後はどうだか知らないが、このせちがない世の中では、会社は辞めないほうが無難というところか?その辺りは、あまり新しさを感じないし、この話からの未来は不透明…。そういうのを、青春映画と呼ぶのだと思う。

黒島が就職先を海外の素材でバッグなどを作ってるというので「マザーハウス」みたいなところだなと思ったら、その通りだった。原作もそれをヒントにしているというところか?だが、マザーハウスの代表の山口絵里子は、こんな軟弱なドラマに出すには勿体無い人だ。彼女の人生を映画にしてほしいと私は思っている。絶対に感動するものになるはず。

その黒島結菜だが、私は、テレビドラマ「ごめんね青春」の頃から注目して見ているが、今年の3月に25歳になるところ。女をちゃんと演じられていた。というか、SEXシーンや、北村と話すところなど、なかなか色っぽい。そう、スクリーンの中に引き込まれてしまった。スクリーンの向こうに、惚れる女がいる感じになっていた。今年は、朝ドラのヒロインもやるわけで、彼女のステージアップの年になる予感はすごくある。

まあ、そのSEXシーンで脱ぐ必要はないのだが、最後のSEXがバスローブを着たままなのはいただけない気がした。それも、行為の後ろからのカットなど、なんか美しくない。別にバストトップを見せる必要もないが、二人の愛の真実をこのSEXシーンでしっかり描いて欲しかった。女性監督から見たら、この最後のSEXは惰性ということなのだろうか?ここだけが、不満だったが、この映画の黒島は、登場シーンから、すごくいい女だった。

その失恋の後で、無理やりだが、風俗に行く北村。これ必要か?と思ったが、風俗嬢役の佐津川愛美が、なかなか好演。彼女「タイトル、拒絶」でも、狂った風俗嬢役をやっていたが、なかなかリアリティがある。男は、こういう風俗嬢を記憶に残して大人になるのだ。そういう雰囲気を佐津川は、すこぶる持っている。

役者は皆さん、頑張っていたし、確かに演出もしっかりしている感じだが、なんか、爽快感が足りないのは、最初に書いたように、長いのだ。最近は、作品を2時間に無理やり持って行っているような作品が多いが、こういう悪き風習は本当にやめてほしい。90分のほうがまとまって見えるものはそうすべきだ。

多分、これ、私は黒島見たさにビデオで何回も見そうだが、彼女が消えてからはあまり見ないと思ったりする。そういう部分は本当に残念な作品。

とはいえ、2022年の黒島結菜、期待しております!


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