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「カラーパープル」39年前の映画のミュージカル化だが、戦争が止まない世界の中では今見る方が刹那さを感じた

アカデミー賞で10部門でノミネートされ無冠に終わった前作の制作は1985年。ちょうど今放送してる「不適切にもほどがある」が描いてるのが1986年だから、そんな頃にS.スピルバーグ監督が世に送った黒人の姉妹を描いた映画だったわけだ。公開当時、封切りで見て、それなりに「いい映画」だと思った記憶があるが、ほとんど内容に関しては忘れていた。

今回はスピルバーグは制作にまわり、監督はブリッツ・バザウーレ。ミュージカルとしてどんなものになったかを楽しみにしてスクリーンに向かう。冒頭の村人たちが集うようなシーンはやはり上手いし、音楽に乗せられてその世界に入る感じ。そして、全編音楽は、力強いし、そこにブルースを感じられればいいのだろう。そしてラストは私の中に神がいるというゴスペル的世界で幕を閉じる。

前作はウーピー・ゴールドバーグのデビュー作である。今回のヒロインはファンテイジア・バリーノ。グラミー賞を獲ったこともある歌手であり、このミュージカル版の舞台を勤めた後でのこの映画ということで、見ていて問題ない安定感がある。他のキャストも、力強くスクリーンを彩るが、いまだに私は黒人の顔、いや、外人の顔の区別がつくまでに時間がかかる。そういう意味では、主人公の夫のパワハラ的な行為が続く中で、少し辛くも感じた。それがあるから、最後の和合の画が美しかったりもするのだが、まあ、こんな綺麗事でまとめていいのかとも思った。

特に、主人公の夫が改心する部分は、瞬間であり、わかりにくい。その後に妻の店を覗きにきたシーンは面白かったが、それがあって、ラストの妹の再会に続くわけだが、改心しても、どうもしっくり行かない感じには見える。でも、皆で歌を歌って宇宙を讃えれば、過去に起きたそれは小さいことということか・・。そんなに宗教やスピリチュアルな世界が強調されるわけではないが、日本人にはこの時代の歴史もあわせわかりにくいものもある。

そして、そんな歴史をそれなりに描くためなのか、中盤で音楽がないような部分も多く、その辺りはミュージカルとしては物足りなさも残った。でも、ちょうどこの時代、日本が戦争に明け暮れていた頃、黒人たちには別の戦争があったということを考えることは重要であり、その戦争は、まだ終わっていないわけだ。そういう意味では、日本人には少し難しい映画でもあるが、黒人たちの音楽のパッションが感じられればいいのかもしれない。

アカデミー賞はダニエル・ブルックスの助演女優賞がノミネートされているが、確かに、白人に向かって暴れて収監される演技というか佇まいはなかなか印象的で、人間的な怒りを彼女を見て体現できた気はした。

なかなか、日本人同士で話しても盛り上がらない映画ではあるだろうが、全体のまとまりとダンスシーンはそれなりに心躍った。そして、ラストシーンのメッセージはそれなりに心の残った作品ではあった。というか、スピルバーグ監督の前作を見直さなければと思った次第。



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