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対談|コロナが劇的に変えた"会社と個人"に求められる新しい"仕事様式"とは

STAFF(正社員)とPRO PLAYER(複業・フリーランス)によって、クラブチーム化するチームRuntrip。

クラブチーム化の名の下に、リモート環境を前提とした新しいチームづくりにチャレンジするチームRuntrip。そんなチャレンジへの思考を深めるため、対話を通じて良質な学びを得るために、本件を牽引するRuntripの冨田と"この領域"におけるプロ人材と対談形式で学びをオープンソース化していきます。

今回はキャスター取締役CRO(Chief Remotework Officer)として800名以上ほぼ全員がリモートワークの会社を経営し、「ボーダレス組織」を提唱する石倉秀明さん(以下、石倉)との対談を通じて、アフターコロナにおける最適なチーム作りを深めました。

冨田憲二|Runtrip取締役(@tommygfx90
石倉秀明|キャスター取締役CRO(@kohide_I

スタートアップのクラブチーム化構想とは

冨田|まずあらためてチームRuntripがなぜこんな「クラブチーム化」を志向し始めたか、端的に説明させてください。

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複業やフリーランスの人材にはRuntripの創業当初からサポート頂く機会が多かったのですが、直接的なキッカケは、今年そんな複業人材の一人にどうしても正社員になって欲しくて、代表の大森と頑張って口説いたのですが、恥ずかしい話口説き落とせなかったんですよね(笑)

でも、その方は繰り返しこう言うんです。

「ラントリップは好きだし、ずっと"プロ"として関わっていたいです」
「なのにどうして正社員じゃないとダメなんですか?」

これに、大森も私も、手を変え品を変え頑張って熱意を伝え、ロジックも通そうとするんですが、その過程で最終的に私たちも気づくんですよね、「確かに何で正社員じゃないといけないんだろう?」って(笑)

確かに企業と個人の関係値において、正社員か否かというゼロイチの選択肢だけじゃなくて、今はその中間にものすごく広いグレーゾーンで選択肢が広がっているなと。彼の言う「プロ人材」「プロ契約」をもっとお互い適切な距離間で企業と個人が実現できる世界観があるんじゃないかってことに、今更ながら気づいたんです。

そこからこの「プロ契約」というスキームと「クラブチーム化」というコンセプトを軸にRuntripのチーム作りを今年の春先から思いっきり方向転換しまして、あれよあれよという間に月ベースで60名程度の複業・フリーランス人材が稼働するチームになりました。

そんな時に、石倉さんが「ボーダレス組織」という概念を提唱していた記事を拝見して、これはぜひお話ししてみたいなと(笑)

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石倉|なるほど、ありがとうございます。すごくよく理解できました。あらためて「ボーダレス組織」なんですけど、元々キャスターは社員だけでなく複業やフリーランス、社員でもフルタイムでないメンバーはたくさんいまして、最初は「ホラクラシー」って呼んでたんですけど、実態としてティール組織でもない。

そんなことを考えているうちに、雇用形態とか場所とかじゃなくて、この人は「これができる」というものをベースにした組織を考えるべきだなって思ったんですよね。資本力の乏しいスタートアップではスピード感が重要だと考えていたなかで、正社員しか採用しない理由はないなと感じていました。実際、社員かどうかやロイヤリティに関係なく、役割を果たせる人に仕事を任せた方が効率的だったんですよね。

実利を追求した結果のボーダレス、リモートワーク

冨田|最初から「ボータレス組織」という全体像があったのではなく、外部環境や内部リソースといった前提条件のなかで、最適な事業運営を追求していくうちに「実態としてのボーダレス」にたどり着いた感じですかね。

石倉|そうですね。各役割を果たせる人を集めた結果、多様な雇用形態の人が集まっていた感じです。そのなかで、働き方として一つ決めていたのがリモートワークでした。

冨田|最初からそこは決めていたんですね。Runtripのクラブチーム化の実現もそうですが、複業メンバーを受け入れるうえでリモート前提での組織・事業作りは非常に重要ですよね。オフィスへ出社前提で新しいメンバーを雇用するのと比較して、当たり前なんですがリモート前提では受け入れではコストが全然違うなとあらためて感じています。

石倉|オフィスに通う前提での働き方だと、複業を受け入れる側も複業メンバーに合わせた働き方が必要になるので疲弊して長続きしないんじゃないかなと思うんですよね。

私自身、前職の経験からオフィスは必要ないなと思ってまして・・・人による部分はあるのですが、自席にいないことも多く都心の良い場所に席を用意してもらっているのに、これはもったいないなと(笑)

複業の実態と、本当の課題

冨田|ちなみに石倉さんの複業体験というか、業務委託でのお仕事経験でいえば、キャスターでのお仕事はフリーランスとしてスタートされたのでしょうか。

石倉|はい。法人も立ち上げていましたが、一人で仕事していたので実質フリーランスとしての働き方をしていました。

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フリーランスとして一部の時間を使って業務を請け負う経験自体は初めてだったのですが、よくよく考えてみると会社員時代とそんなに変わらないと思いました。というのも、前職では人事の責任者として新卒採用・中途採用、配属や育成などを兼務していたので、同じ会社にいながら全然違う仕事をしていたわけですね。その状態と、複数社で複数のプロジェクトに関わること自体の本質的な違いは無いんじゃないかと。

冨田|なるほど、それよく分かります。職位が上がってくると関わる領域も広がるので、同じ会社でも全然違うプロジェクトに関わって頭や筋肉の使い方も変わってきますよね。

私の経験でいえば、Runtrip入社後もしばらく前職のお手伝いをしていました。最初は本業の時間とサブの時間で分けていたのですが、Runtripでも複数の事業に関わっていたため、途中から本業とサブの仕事をごちゃまぜにして進めるようにしました。そうすると、2社の仕事を分断していた時よりも仕事をしやすくなりました。

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Runtripでは今クラブチーム化を掲げて、積極的に複業やフリーランスの人材をPRO PLAYERと呼んで活躍できる環境整備を整えているのですが、実態として本業の時間と分けて仕事をしてもらうよりも、当たり前ですが切り分けを無くしてしまった方がタイムリーにコミュニケーションできて仕事が進む感覚はあります。とはいえ、会社の都合で本業の時間とサブの時間を分けないといけない方も多いと思いますけど。

石倉|そこは難しいところですよね。複業したい人のニーズと現実にはまだまだギャップがあるように感じます。内閣府のデータも踏まえると、複業人材のニーズとして「掛け持ちして収入を増やしたい」と「スキルを活かして空いた時間で少し働きたい」の2つに分かれると見ています。実際複業を活用できているのは年収レンジの低いダブルワーカーか、年収の高いハイレイヤーの人材で、真ん中はぽっかり空いている。

普通に考えれば、本業よりも圧倒的に短い時間で同じ成果を出すのは難しいのですが、複業を受け入れる側としては専門的な知見を活かして本業と同じ成果を求めている。こうしたギャップもあり、クラウドソーシングのプラットフォームでも仕事を獲得できる人がごく一部に限られているんです。

複業を受け入れる側の会社が変化しないと複業が広がる世界は実現しません。「複業解禁」ばかりが進んでいて、受け入れは進んでいないのが現状でしょう。

冨田|複業やフリーランスの受け入れ側に、必要な「変化」というのは具体的に何なのですかね?

石倉|特に大手企業だと自社の社員には複業OKしておきながら、コンプライアンスの関係で個人のフリーランスとの契約を受け入れないといった矛盾がまず挙げられます。

ただ、それ以上に受け入れ側が環境を整えてあげられていないことが大きいと思います。結局、仕事は作業だけでなく「コミュニケーション」が欠かせないので、「情報格差」があると能力のある人でも機能しづらいものです。

複業人材が活躍するための環境とマインドセットとは

冨田|受け入れ側が情報・コミュニケーションへの投資などで環境を整備し、複業メンバー自身がベースとなる能力があれば活躍できるようにしていく必要がありますが、これができれば複業の潜在的なマーケットも大きくてチャンスですよね。

石倉|今、複業やフリーランスの受け入れを増やしたい人も多いなかで環境整備も大切なのですが、受け入れ側の働き方自体も変えていく必要があると思っています。

場所問わず働けるようにするのはもちろんですが、コミュニケーションのOSを変えないといけないと思います。具体的には、必要とされる基本能力がオフィス前提の口頭で「話す」中心のコミュニケーションから、「書く」「読む」に変わってきています。

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他にも、社員へのコミュニケーションが過度に集中しないよう、複業・フリーランスが自走できる環境が必要です。自走してもらうには「情報へのアクセシビリティ」「権限」「自分で考えて動ける能力」「失敗しても許容される範囲の線引き」という4つが必要だと考えていますが、このなかで能力に該当するのは1つしかないんです。つまり、自走できるかどうかは環境が大きい要因になっていると思っています。

たとえば、キャスターだと雇用形態や立場に関係なく情報をオープンにしており、Slackで流す情報も基本的に出し分けしないようにしています。

冨田|大変参考になりますね。まずあらためて「書く」「読む」力はリモート前提だと本当に大事だなと思っています。例えばシリコンバレーでDAY1(創業時)から全社員リモートワークの経営をしているZapierという会社が「ガイドブック」として彼らのリモートワーク前提の組織づくりのノウハウをまとめているのですが、そこでも雇用する人材の用件として「書く」「読む」能力の重要性を挙げていますね。

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Runtripでいうと、STAFF(社員)側はより、PRO PLAYERに活躍してもらうために非同期のテキストコミュニケーションで伝える能力を高める必要があるとも考えています。

石倉|伝える能力や整理する能力も大切ですが、さらにテキストコミュニケーションで見落とされがちなポイントがあると思っています。

手段はテキストでも、あくまで「コミュニケーション」なので双方のやり取りのなかで理解を深めていくものですが、テキストで伝えようとすると一方的で長い文章になりがちです。会話ではなく「伝達事項」と「受け取り事項」に分断されてしまう。

これだと結果的に会話量が増えず相互理解も進まなくなるので、短いテキストで会話できるかどうかが重要だと考えています。

冨田|面白いですね。仕事上のチャットのスタイルと、口頭のスタイルって実際違いますもんね。確かに分ける必要は無いのかも。

コミュニケーションはコストではなく投資

冨田|この文脈で私が最近思っていることは、テキスト限らず雇用や契約形態も限らずなんですが、コミュニケーションを円滑にするうえでやっぱり「信頼関係」の構築が大事だと思っています。フルコミットだろうが、パートタイムだろうが、一人の人間としては同じ。

故にRuntripでは短時間でも口頭や声でのコミュニケーションの方が相互理解や情報伝達、さらに信頼関係の構築において大事だと思えば非同期のチャットやテキストに無理に頼らず、動画や音声コミュニケーションを選択しています。チャットで何往復もやりとりするより、話した方が良いケースも少なく無いんですよね。

石倉|そうですよね、社内外問わずリモートでのコミュニケーションで仕事してきた経験でいえば、手段問わずコミュニケーション量を増やすことが重要だと思います。

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Twitterとかでも、会ったことはないのにTwitter上ではよく絡んでいると相手に対して良い印象を持っていることがありますよね(笑)家族のLINEなんかでも、短い文章でお互い伝えたいことの察しがつく。恐らく、これらは過去のコミュニケーションの積み重ねなんだと思います。

仕事に直接関係ないことも含め初期からいかにコミュニケーション量を増やせるかが複業・フリーランスとの早期の信頼関係構築に影響するのではないでしょうか。

冨田|接点が多いと好印象を抱きやすくなる、人間の「単純接触効果」というポジティブな意味での認知バイアスが働くんですよね。会話の量が、信頼関係の質に転嫁するという感じですかね。

「リモートワーク」の最大のメリットは「効率」というイメージがあるので、コミュニケーション量を増やすこととは相反するように感じる部分もあるのですが、PRO PLAYERとチームとして働く上でコミュニケーションを「投資」として捉えることが大事ですね。つまり、コミュニケーションはコストではなく「投資」。

権限と情報共有、何がベストなのか

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冨田|少し話が戻るのですが、STAFF(社員)側がPRO PLAYERたちが活躍できる環境を整備するという観点でもう一つ、実例を交えながらお聞きしたいことがあります。

昔、代表の大森がラジオでパーソナリティをしていたことがあって、そのアーカイブを辿って聴いてくれた経営アシスタントのPRO PLAYERから2つフィードバックをもらいました。1つは、「声を聴きながら作業することで一気に親近感が湧いた」ということ。もう1つは、本業後にRuntripの仕事をしてくれているその方にとって「Runtripの作業に集中する切り替えスイッチになっていた」ということでした。

他にも、大森と私の1on1を社内で音声公開したところ好評だったのですが、音声メディア流行の文脈とは関係なく、RuntripではPRO PLAYERの働く体験に寄り添えるように「声」での工夫も面白いなと思っています。

石倉|なるほど。キャスターでもプロジェクトの性質にもよりますが、DiscordやZoomで繋ぎながら仕事することはありますね。

あとは「声」も大切ですが、別の観点でいえば会社の”ノリ”を入ってきたばかりのメンバーが分かるようにしてあげることも大切だと思います。オンラインでの親睦会や飲み会などの映像だけが残っていても、その場にいた人しか"ノリ"が分からないのでもったいないなと思う時があります。アーカイブを遡るのも大変でしょう。これがテキストとして残っていると後から入ってくる人でもあまり負荷なく”ノリ”を感じられるかなと。

冨田|ノリはテキストで残す、というのは面白いですね。今RuntripではSlackでSTAFFとPRO PLAYREがチームやプロジェクトとは別に全員が入っている部屋があり、メタファーも込めて「ロッカールーム」と呼んでいて、ここでは新メンバーの紹介や事業上のトピックスなど、全員にとって「自分ごと」の情報を流しています。

石倉|オフィスに例えれば、それだけだと総務からのお知らせが届いている状態に近いかなと。他のプロジェクトがどのように進んでいるか、まで見えてしまって私は良いと思っているんですよね。私の場合、個人情報とか採用上のプライベートな情報とか経営上クローズにすべき情報を除いてどんどんオープンにしています。

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1つのチャンネルで情報共有を行うというより、必要に応じてどんどんチャンネルを作って横のコミュニケーションを促すことを重視していますね。

冨田|なるほど。Runtripはまだまだ発展途上の側面もありますが、本業があって忙しいPRO PLAYERに対して、共有する情報は絞った方が良いかなというのが現時点でのスタンスです。この場合、PRO PLAYERからの連絡や相談がSTAFFに集中してしまいますが、裏を返すとSTAFFが頑張ればPRO PLAYERとうまく協働できるかなと。

私も複業のユーザー体験として、サブのSlackは全然見る時間がなかったので(笑)チーム内でプレーする上では情報を最大限可視化しつつも、Runtripの全社観点では見るべき情報をあえて制限、コントロールしたほうが結果今のPRO PLAYREはプレーしやすい環境なんじゃないかと考えています。

その意味で、今のRuntripは石倉さんがキャスターで実践している方法とは真逆の形で実験しているので面白いですね。

リモートや複業前提でのカルチャーづくり

冨田|最後に少し抽象度の高いトピックに移らせてください。ずばり「企業文化・カルチャー」の話です。私は組織のカルチャーは経営がしっかりとデザインしていくべきものとして重視しています。会社の経営戦略や事業戦略があり、それに紐づく組織戦略がある。事業戦略と組織戦略をフィットさせるものとしてカルチャーを位置づけています。

今後、チームのマジョリティが複業・フリーランスになった場合、どのようにカルチャーをデザインし続けていくべきか。ホームチームや他の環境でもプレーしているPRO PLAYERにRuntripのミッションやバリューをどう浸透させるか。私もまだ解を見つけられていないのですが、石倉さんこの観点はどう考えています?

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石倉|前提として、労働時間の長短や雇用形態で分けないことがベースになりますよね。そのうえで、会社としての判断軸が可視化されるのは「言葉」と「行動」だと思っていて、会社としての考え方を浸透させるには言動の一致が可視化されていることがポイントだと考えています。

なのでSNSやメディアでの対外的な発信も半分以上は社内メンバーに向けて発信するイメージでいます。リモートワークにしても、雇用形態によらない情報のオープン化にしても「言行一致」が念頭にありますね。

冨田|結局カルチャーが滲み出るのは日々の「言葉」や「行動」というのは本当にその通りですね。大上段のデザインより、ボトムの言動や行動レベルで日々注意深く自社の考え方、価値観を浸透させていく。あらためてこれがカルチャーデザインの本丸な気がします。

また、対外発信と現行一致という観点だと、サイバーエージェントの藤田さんのブログ発信もまさに社内向けのカルチャー浸透が目的にだっておっしゃってますよね。

石倉|そうですよね。私は会社をマンションなどの集合住宅に喩えますが、マンションの住みやすさや治安は住民ひとりひとりの行動で決まりますよね。カルチャーでいえば、雇用形態問わずメンバー全員に等しくカルチャーを作る責任があって、その良し悪しを決めるのが管理人つまり経営者だと思います。

冨田|雇用形態問わず、全員でカルチャーを創っていく。そういったテンションにまでPRO PLAYERをいかに高めていけるかが重要なポイントだと再認識しました。まさに、複業やフリーランス等を中心としたチーム作りにおいては、どこを切っても「ボーダレス」で考えデザインしていかないといけないですね。

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Team Runtrip PRO PLAYER 003 / 石倉 秀明

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