坂本龍馬がご近所さんになった話 2

【坂本龍馬がご近所さんになった話1を読んだのちお読みください。】
→【坂本龍馬がご近所さんになった話 1|hitomi #note https://note.com/runrun115/n/n4ed9f10f399f】

不動産屋に駆け込むと、スーツをピッチリ着こなした男性社員が颯爽と案内してくれた。
自分とは対照的な姿にとまどったが、
五月にもなろうかという頃に大学生が部屋を探すなどなかなかイレギュラーだったろうにテキパキと対応してくれた。

「○○大学の学生さんですか!でしたらこの辺りがおすすめです!」

ひろげられた資料には○○大学まで~分!!という文字が赤や蛍光色で書かれていた。が、今回は大学から少しでも遠ざかりたかった。
すみません、大学から遠いところを、というと怪訝な顔をしたが(当然だ)、直ぐに希望を聞いてくれた。

LDKなんて考えていなかったから予算と、できれば寺社仏閣の側が良いことを伝えた。
なんとなく、この気鬱にご利益があればよいと思ったのだ。

勧められたのは三十三間堂のすぐそばの物件だった。近くに女子大があるから学生さんも多く住まわれてますよ、と案内してくれたが、うちの大学でなければ構わない。値段もそれなりにやすく、ぜひ内覧をさせて欲しいと頼んだ。
スケジュールを決めるべく手帳を出そうかと思ったが、今日いますぐ行けるとのことで二つ返事でお願いした。

車にのせてもらい、他愛もない話をするまでもなく、物件にすぐについた。
駅にも程近いようだ、これならばいつでも地元に帰れるぞと喜んだ。
内覧してみると、案外広く、悪くない。
ここにしよう。
そう決めた私は両親にお伺いをたてるべく何枚か内装の写真を撮り、送った。
その日は
また考えますと返事をし、下宿に帰った。

久しぶりになにかをやった達成感と、人と話した疲れでその日はぐっすりと眠れたのを覚えている。

引っ越しの話はビックリするくらいスムーズに進んだ少しは親からの小言なんかあるのではと身構えていたが、そんなこともなく、引っ越しの手伝いにさえ来てくれた。

引っ越しが終わり、親と別れ、夕暮れ時の近所を散歩していた時、石の置物?を見つけた。

余談だが、歴史のある町である京都には ~の碑のようなものがたくさんある。
誰々がここで殺されたとか、こんな有名な事件がここで起きましたとか、どこどこの藩邸がありました、など。

【出典】
https://images.app.goo.gl/gEmEaMEKQScXvKpt8

これは坂本龍馬が好きには言わずと知れた「酢屋」の前のものであるが、こんな感じのものが京都にはあちこちに点在している。


ちょうどネットに写真があったので私の見つけたものをあげるが、

【出典】https://images.app.goo.gl/3A5s6gLp49HpCeXP9

見つけたのが夕方だったため、目を凝らす必要があったが

そう、新居の側にはかつて坂本龍馬が住んでいたのである。(2 にしてようやくタイトル回収ができた。)

実は私は大の龍馬ファンであった。
きっかけは月並みな大河ドラマ「龍馬伝」からであるが、とにかく当時小学生であった私には衝撃であった。
龍馬伝から入り、お~い竜馬、そして竜馬がゆく…次々と読みあさっても、龍馬伝のブームにより巷では龍馬の本が溢れ帰っていたし、雑誌の特集なんかにもあったから読むに事欠かなかった。

そもそも京都に大学進学したのも裏を返せば坂本龍馬に憧れてであった。

ほうほうの体で助けを求めて引っ越した先が坂本龍馬とご近所であったとは!!
なんたる偶然!なんたる幸運!

アホとしかいえないのは百も承知だが、こんな些細な事でそれからの大学生活ががらりと変わった。

もちろんサークルは辞めたが、大学にも足がむくようになった。毎朝ニヤニヤしながら石碑をみつつ大学へいき、1日乗車券(京都には500円で1日バスを乗り放題にできるサービスがある。今は600円になっているようだ。)を利用し、石碑を探すべくさまざまな京都を見て回った。

11月15日は坂本龍馬の命日であるが、墓のある霊山歴史館へお参りにもいった。(また詳しく書くつもりである。)
毎年高知の方々による軍鶏鍋が振る舞われるのだが、「龍馬さんはよく食べるから、多く盛らないと。」という会話を聞き、ほほえましい気持ちになったりした。

結局私はその部屋で約三年ほど過ごした。
はじめての一人暮らしで夏は虫と格闘したし、自分で炊いた米が思ったより膨らんでとまどったり、料理が不味くて悲しくなったり、布団をカビさせたり、
大学でも教授ともめたりと快適なことばかりではもちろんなかった。

それでも、前よりもずっと楽しく、ずっと快適にキャンパスライフを送れたことは間違いない。

ありがとう坂本龍馬さん。
ありがとう不動産屋のおにいさん。

私の話はこれで終わりだ。

ここまで読んでくれてありがとう。

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