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ショートストーリー

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一話完結の短い物語達。
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記事一覧

一面草

 いつの頃からか道端でよく目にする植物が有った。それは幾重にも赤い花びらを重ねた、見た目にも可愛らしく、わざわざそれを引抜こうとする者などはいなかった。
 あまりにもよく眼にする花だったので、よほど植物に詳しい者でもない限りはそれが新種の植物だという事には気が付かない位、それはあちらこちら至る所に茂り、人々はその花を自然と受け入れていた。
 そしてその花の咲く所は一面その花が咲き誇り、他の植物の生

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スパイダーワイヤー

 2112年、人類は一つの危機に直面していた。そう、人類絶滅、いや人類のみに止まらず、地球規模の災害が後十年後つまり2122年に到来しようとしていたのだ。
 なぜ、これほどの事が予測できたのか? それはいたって簡単な事だった。なぜならそれは、地球外からの小惑星の観測に基づいた結果だからだ。そう、後十年後に地球に小惑星『メンフィス』が地球と衝突する事が観測結果で分かったからである。
 今まで観測され

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戦い ~JISの秘密~

この文章はならざきむつろさんの『私的国語辞典』の「JIS」

https://note.mu/muturonarasaki

の続きの文章です。

公園中の人たちの視線が集められた俺達二人、いったいなんだって言うんだ?

ただ俺たちはJISマークの話をしていただけなのに……

そう思った時、俺の頭の中に何か鈍い音がして気を失った……

 そして次に眼が覚めたのは、コンクリートの打ちっぱなしで、窓も

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ありがとう。

久しぶりに旧作でも。
以下本文です。

 どんなに今まで辛い事があっても、それでも今まで私が生きてこれたのはあなたのおかげ。本当にありがとう。
 その感謝の言葉を伝えたいけど、あなた聞いてる? あなたと一緒にいれたから私はどんな事でも乗り越えていく事が出来た。あなたがいつもそばで私の事を支えてくれたから。だから私はいつも頑張る事が出来た。
 だから私はあなたと一緒に居たい。本当にそう思った。

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悪夢

 最近夢を見るんだ。いや、大した夢じゃない。まあ夢なんてのは覚めちまえばなんてことなかったって思えちまうもんだろ? でもな、夢の中では本当にその出来事が起こっているんじゃないかって、本当に思っちまうもんだろ? それがどんなに良い夢でも、その逆に震え上がっちまうほどの悪夢でも…… お前だって悪夢ぐらい見たことあるだろ? まあいい。とにかく俺が見た悪夢って奴をちょっと聞いてくれないか? なに、そんなに

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過去からの告発

 あれから九年の時間が経った、もう誰も俺の事を覚えている人間なんていないだろう。
 ようやくこんな生活からもおさらば出来るだろうか。俺はそう思うと酒でも飲んでしまいたい気持ちになってしまう。しかし、今ここで酒でも飲んでうっかり過去の事を口を滑らせてしまっては元も子もない。
「後もう少しだ。そうすればもっとましな生活をする事もできるだろう……」
 とにかく、今はもっとも慎重に行かなくてはいけない、後

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進み来る炬人

 20XX年、人類は駆逐されようとしていた。
 人類は来るべき氷河期に向け、着々と準備を進めていた。そして、ついに人類は偉大なる氷河期対策家電を発明した。その名を炬燵という・・・・・・
 しかし、炬燵は人類を堕落させ、人類は文明を退化させ始めていた。
 そして、炬燵に取りつかれた者達は、炬燵を待たない者達の勤勉さに嫌気がさし、ついには炬燵を持たない者達を襲いだした。
 それに対抗する為、炬燵を持た

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タバコを飲む男

 苦虫を噛み潰したような顔で男が喫煙所に入ってくる。

 だいたいこの男は扉から一番離れた窓際の位置に陣取り、窓の向こうを見つめながら、胸ポケットからタバコを取りだし火を点けるが……

 やはりいつもの通り、その位置でタバコを取りだし、マッチを摩り硫黄の匂いとともにタバコに火を点ける。

 一口吸い込み、煙を吐き出す。まだ火のついたマッチを、軽く手を降って火を消しそのまま灰皿の中に捨てる。

 慣

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手紙

「これは少し前に俺の友達の所に届いた手紙なんだが」
 そう言って昔からの悪友、健一は私に話し出した。
 健一は一通の手紙を私に差し出し、それを私は受け取って中身を確認した。
 封筒の中身には便箋が一枚入っており、私はその三つ折りにされた便箋を開いて中を確認した。
 そして中身を確認した私は健一に話しかける。
「この白紙の手紙がどうしたんだ?」
 便箋には何も書かれておらず、ただの白紙だった。
「や

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乱視あるいは平行

 最近どんどん目が悪くなってきているような気がする。もともと近眼だったのだが、それに加えて乱視まで付け加えられたようだ。今はなんとか眼鏡で矯正してまともに見えているが、眼鏡を取ると目の前の景色がぼやけ、色々なものが二重に見える。
 最初は少しずれて見える程度だったのだが今はかなりずれているように見える。
 そう、まるで忍者が分身の術でも使っているかのように見えるのだ。まあまだ眼鏡で矯正出来ているの

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コメダ珈琲の歴史

 その歴史は古く、江戸中期の米田藩、今でいうと鹿児島の西側の大名、米田 騎座衛門が日本でのコーヒーの栽培の起源だと言われている。
 当時まだコーヒーと言う物はほとんどなく、庶民が口にする飲み物と言えば日本茶がほとんどだった。
 騎座衛門は初めて飲んだ琉球を経由して南蛮から来た飲み物、コーヒーをえらく気に入り、琉球との貿易を盛んに行い、コーヒーを栽培するまでに至った。
 しかし、そのコーヒー贔屓をよ

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置き去り

「ここは何処だ?」
 俺は荒野のど真ん中に連れてこられ、置き去りにされてしまったようだ。
「確か…… 昨日飲んでてその帰りに……あたたたた」
 昨日の帰りに誰かに頭を殴られ、そのままここにつれてこられたのだろう。その痛みがまだ残っておりその痛みで昨日の事を想いだした。
「くっそ……ここはいったい何処なんだ?」
 俺は辺りを見渡すが、建物など人工物は何も見当たらない。こんな所がこの日本のどこにあると

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