タバコを飲む男

 苦虫を噛み潰したような顔で男が喫煙所に入ってくる。

 だいたいこの男は扉から一番離れた窓際の位置に陣取り、窓の向こうを見つめながら、胸ポケットからタバコを取りだし火を点けるが……

 やはりいつもの通り、その位置でタバコを取りだし、マッチを摩り硫黄の匂いとともにタバコに火を点ける。

 一口吸い込み、煙を吐き出す。まだ火のついたマッチを、軽く手を降って火を消しそのまま灰皿の中に捨てる。

 慣れた手つきでその一連の動作を無駄なく動く。そして、タバコをくわえ、煙を吐き出す。ブラインドの隙間から零れる光と、ブラインドが作り出す影をに照らされる紫煙は、まるで駒送りのように立ち上っていく。

 窓の額縁にタバコを持った方の手の肘を乗せ、窓に背中を向けたまま執務室の方を見つめる。相変わらずまだ難しい顔を男はしている。

 仕事に行き詰まっているのか、難しい問題を抱えているのか……

 タバコの半分がその役目を終わらせた所で男はタバコを灰皿に押し付け火を揉み消し、喫煙所を出ていく。

 結局男は終止難しい顔をしたままだった……