灰色の男
二十年前、沖縄から大阪へ出てきた。
19歳で初めて電車通学を体験したが、テレビでみてた光景と同じで、人の多さに驚いた。そして、歩くスピードの速さにも驚いた。
でも、次第に人の多さも歩くスピードも慣れていった。
ただ、どうしても違和感があったのは、大人がみんな同じ様な色の服を着ている事だった。
大人はみんな紺や黒、グレーの服を身にまとっていた。
当時、クールビズなどの言葉もなく、夏も暑そうだった。
冬になると一段と同じようなコートをまとい、向かいのホームは灰色の人間でいっぱいだった。
私はまだ社会人になっていなかったので、社会人のマナーや就業規則など知らなかった。
違和感を感じた事を、友人に話した。
すると
「緯度の関係で、沖縄は太陽が直に当たるから、はっきりした鮮やかな色が映えてきれいに見えて、内地(本州)は斜めから太陽が当たるから、落ち着いた色がきれいに見えるって先生言ってたよ。」
「なるほど~」
私の目が鮮やかな色に慣れていたのか…
とその時は少し納得した。
それから「モモ」という本に出合う。
人間から余分な時間を奪っていき、お金やモノはあるけど本当に大切なモノを失っていく。それを主人公のモモが取り戻すお話。
その本に登場する、時間どろぼうの事を「灰色の男」と表現されている。
それだ!
みんなせかせかして灰色の男に思えた。
それから社会人になり、出産してこどもを産み、お母さんになった。
仕事と育児で灰色の男になった。
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