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原爆の日--We cannot prepare, we must prevent

タイトルはニュージーランドのアーダーン首相が今日行ったスピーチの中に登場したフレーズです。2020年8月6日、広島の原爆から75年。核兵器根絶を訴えた彼女のビデオスピーチで、最もはっとさせられた一節です。


We cannot prepare, we must prevent.

(核兵器に)備えることはできないのです。回避しなくてはならないのです。

毎年8月6日は、広島が映し出され、日本に住んでいる人は誰しも、過去の被害に目を向けようという動きの中に組み込まれるものではないでしょうか。黙祷をささげる人もいれば、テレビで原爆の恐ろしさを学ぶ人もいるでしょう。中にはおじいさん、おばあさんの世代にはなりますが、まだ身近な家族に、この恐ろしい出来事が降りかかったと、自分事として考えられる人もいると思います。

あまり多くを知っているわけではありませんが、中国・韓国では、今日は日本の支配、戦争から「解放された日」と言われるようです。アメリカでは、自分たちが「戦争を終わらせた日」「戦争から多くの人を救った日」です。

今でもきゅっと心に残っている私の原爆に対する思い出。ケニアの小学校で、お昼休み図書室でいつものように過ごしていると、仲良しの双子…確かウガンダかタンザニア出身の、はきはきと喋り頭も切れる二人でした…が、ずんずんと私の元にやってきました。私は折り紙を下級生と折っていて、彼女たちも仲間に加わるのかなと思い、椅子を引くと、片方のクレイちゃんは座りましたが、もう片方のクレアちゃんは立ったまま

「日本がアメリカ、パールハーバーにしたことを昨日映画で知った。あなたのことは好きだが、あなたの祖国は間違ったことをしたと思う。Horribleだ。」

と言ったのです。クレイちゃんがそっと、昨日映画館で見たラブロマンスでね、パールハーバーを日本軍がいきなり攻撃する描写がすごかったの。と私にささやきました。クレアちゃんはどうしても、私が日本がパールハーバーをいかに攻撃したか、知っているのか、また知っているのなら、どう思っているのかと、意見を聞きたかったようです。

私は悲しくなりました。小学校5年生の知識でしたが、日本が確かにそこを攻撃したのは知っている。たくさんの命が散ったことも知っている。それは本当に痛ましいし、二度とやってはいけないことだと思う。と言いました。クレアは、うんうん、とうなづいていました。

「日本は今は分からないけど、当時は本当に酷いことをしたんだね。私はアメリカは好きだけど、日本は嫌い。」クレアが言い、クレイもうなづいていました。

「クレアは、じゃあ、その後、アメリカが日本に何をしたか知ってる?」

私はできるだけ広島に起こったことを自分なりに説明しました。ちょうど「nuclear 核」という単語を知ったばかりだったので、図書室のケニア人のアシスタント先生に本がないか聞くことに成功しました。そして、何枚か写真が載っている図録と共にできるだけ知っていることを話しました。

「すごい酷いことアメリカもしてんじゃん」と私の拙い説明を辛抱強く聞いてくれたクレアはぽんっと身体を空いた椅子に置きました。

"Now I don't like America" ――もう私、アメリカも嫌い。

とクレア。

”Now I don't know who is the wrong one” ――もうどっちが間違っているのかわからない。

とクレイ。

神風特攻隊の話もすると、それまでクレアと比べて静かだったクレイは、泣きそうな顔をして、「教えてくれてありがとう」と言いました。そして昼休み最後の5分は、一緒に折り紙で遊びました。

母に帰宅してからこの話をすると、日本ももうちょっと日本側の視点で、映画なんかで発信すればいいのにね、と言っていました。当時は2001年、その後19年で、そうした映画も出ましたが、果たしてクレイ・クレア姉妹のような子供たちに、その視点は届いているでしょうか。

今日、アーダーン首相がこうして過去の過ちを訴え、核兵器廃絶のスピーチを行う姿は、私にとっては、とてもまぶしく、ありがたい気持ちにさせられました。日本が批判、糾弾されることも多い第二次世界大戦。日本軍が酷いことをしたのは、規模など論点はたくさんあるのは承知していますが、間違いないでしょう。しかし、原爆の酷さも、また事実です。アーダーン首相はそれをきちんと切り取り、未来へつなげていこうとしてこうした発信をされていたと思います。

原爆は落とされたら、もう取り返しがつかないのだ。備えることはできない災害で、とにかく回避しなくてはならない。日本を昨今襲う自然災害やコロナなどとはまた違う核兵器、原爆という人為的災害。もし、ひとつ備え、と捉えるならば、いろんな視点を吸収し、未来へ目を向けることだと思います。難しく、厳しいことですが、過去を忘れない、だけでなく、未来についても、考えていくことが唯一、原爆を回避することに繋がるでしょう。それを目指していかない限り、発展はできないと、改めて海外の首相のスピーチで思いました。原爆を経験した日本に住むからこそ、私も核兵器撲滅の世界を望む一人でありたいと思います。

アーダーン首相のスピーチも載せておきます。

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