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小説 万テチョライフでレベルアップ 3 ~よりそう Season2 ~

部長にたまたま誘われてたと思っていたランチは実は、予定されていたものだった。

おかみさんと部長のやり取りを聞いていると、明らかに部長が予定を立てていてくれたみたいだ。なぜ?

そんな気持ちもあっという間にわすれるほどの、今まで食べた鰻は何だったのかというほどの柔らかさと香りのコンボアタックにやられていた。あっという間に食べ終わりそうな勢いでご飯と一緒に鰻をほおばっていると、

「おいしそうに食べるなぁ」と、部長に言われた。若干あきられているような、珍しいものを見ているような視線。

そこでハッとする。

「す、すいません。こんなにおいしい鰻を食べたのが初めてだったもので。」

「身内だから気にするな。これがお得意様と一緒とかだったら、さすがに一言言わなきゃいけないところだが、、俺と二人だし問題ないさ。」

そういって部長も負けずとがつがつ食べてくれた。この辺の気遣い、タイミングの良い話しかけ方も、カフェ「キムン」のマスターに似ている気がする。

食べ終わって、食後のおいしいお茶をいただいていると

「実はな、さっきおかみの話を聞いていてお前も気づいていたと思うが、お前に話が合ったんだ。」

ちょっとかしこまって部長が話す。

「はい。」そう答えて、背筋を気持ち伸ばす。

「お前の意見を聞かせてほしいというレベルで、何か悪いことを話したりするわけじゃないから緊張しなくていい。」

あ、もう全部読まれている。

照れ笑いのようなものを浮かべていると、

「実は、新規プロジェクトを任されることになった。」部長がぽつりと言う。

「え、おめでとうございます」そういうと、

「良いところ半分、悪いところ半分というところなんだ。

悪いところは、任されはしたが、何も決まっていない。メンバーも何をするかも。」

うん? 何も決まっていない新規プロジェクト?

全然わかっていない顔をしていると、

「逆にいいところは、俺がやりたいことをやりたいメンバーとやっていいというプロジェクトだ。」

そこで、部長はニコっと笑う。

「それは、すごいですね。ちなみに、部長はどんなことをやろうと考えているんですか?」

「まだ決まっていない。」

えっ!!! 用意周到な部長なのに。

「俺に聞きたいことっていうのは?」なんとなく察しつつ、一応聞いてみる。

「何をするかを含め、新メンバーと一緒に決めようと思っている。すでに気になっているやつ2人には声をかけていて、最後の3人目としてお前をスカウトしたい。」

「ええええええええええええ。自分ですか? こんなぺいぺいみたいなやつが何の役に立つと?そんなに営業成績もよくないですし。。 まさか、今のチームにいても役に立たないから面倒を見てくれようとしています?」

「なんで、そんなに自分を卑下するんだ? お前が思っているより周りからのお前の評価は高いぞ。俺を含めてな。しかも、その手帳を持ってから特にな。スピード感とか話のまとめ方とか。」

「あ、ありがとうございます。」嬉しさ半分、驚き半分。だけど思わずうつむいてしまう。

ここで一呼吸(といっても、俺にはすごく長く感じたんだけど)

「さっき言っていたお前に聞きたいことは二つだ。

この話に乗るか、戦力として一緒にやれるか」 すごい声に力がある。

自分はまだうつむいていたけど、大きく息を吐き出す。そして前を向き、

「1つ目は、参加したいです。 

2つ目は、自信は全然ないんですけど、死ぬ気でやります。一緒にやらせてください。」 声に力がどんだけあったかわからないけど、できる限りの声を上げた。

部長は立ち上がり、「ありがとう」そう言って右手を差し出してくれた。

「こちらこそ声をかけていただいてありがとうございます。」そう言って握手をすると、部長はすぐに左手を添えてくれた。

あー、この辺ができる男のイケメンなところ。と思いながら。少し涙ぐんでいた、おれ。

なんかすごいやる気が出てきたぞー。


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