小説「よりそう~手帳と万年筆のちょっといいはなし~」第75話
手帳を買ったとき初めにすること、それは自分の名前をしっかり書きのこすこと。そこから始めてみようと話しかけてみたんだけど、やっぱり変かな。
「今の時代、ネットとかなんとかで、全然別名でやっていくことだってできるじゃないですか?そこから始め見ませんか。」
「へ。なんで急に? 別名ってこれ以上名前を増やしたくないし。」
「そうですよね。じゃ、隆史さんが一番自分でしっくりくるお名前でいいと思うんです。あなたは誰ですか?」
「それが全部しっくりこないから困ってるんじゃないですか」 結構本気で怒っている。
「だから、今、しっくりくる名前を決めちゃいましょうって言ってるんですよ」こちらも負けじと強気の言葉になる
「そんな簡単にいくかよ。」
「知っていますよ。」
「わかるか、俺の気持なんか」
「全然わかりません」
「あんた、なめてんのか。」ガタンと椅子が鳴り、立ち上がりながら、ネクタイを引っ張られた。首根っこをつかまれるってこういうことなんだろう。く、苦しい。
「全然なめていません。でも、あなたが苦しんでいるのはわかります。だから、、、だから、何とか立ち直ってもらいたいと思っています。」なんとか、声をひねり出す。
ネクタイを話してくれた。どさっと力なく座り込む隆史さん。周りの席からの視線を感じるが。。何事もなかったように自分も座る。
「もちろん、怪しい宗教とかではありません。」
「それはわかっていますよ。でもあんた、かなりの変人だね。」ふっとあきらめにも似た笑いを浮かべて話す。敬語やらタメ口やらいろんなものが混ざっている。大分混乱しているんだろう。
「そうですね。たぶん、始まったんです、この手帳と万年筆を手にした時から。」そこで改めて、自分の手帳を見せる。
「そんなに手帳ってすごいのかよ」
「わかりません。でも、俺はこれで救われた。たぶん、マスターも。だからあなたも救われる可能性はあるかと。」
「そっか。あんたの彼女にお願いすれば、見つけてもらえるかな。」
「かもしれませんよ。でもその前にしっくりくる名前を考えましょう。」
「いや、かんがえなくていいっすよ。」
「そうですか?」
「えー、俺はやっぱり、新田隆史です。」隆史さんのその顔はすっきりしていた。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。すこしでも気に入っていただけたら、続編を書くモチベーションになりますので、スキをお願いします。
また、過去の内容を取りまとめ加筆修正したフルバージョンを作りました。ご興味があればちょっと覗いてみてください。(大分本編と開いてしまったけど)
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