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身近な人が自ら死を選んだ

 つい最近の事だ。身近な人が自ら命を断ってしまった。早朝の公園で首を吊っているのを通行人が見つけたらしい。寝耳に水だった。

 私には妹が三人居るのだが、2年ほど前に一番下の妹に彼氏が出来た。件の人物その人である。
私は現在一人暮らしをしていて、家からそれほど遠くない実家へ立ち寄ると、よく彼が遊びに来ていた。妹と仲睦まじく、弟が出来たみたいで嬉しかった。2人を車に乗せて遠出に連れて行ったりもしたし、律儀に私の誕生日を祝ってくれた事もある。そんな彼が、自ら命を断った。
彼が以前からASDを抱えていた事は知っていたが、鬱病を併発していて、こういう結末になったと聞かされた。

 知らせを聞いてからの私は、問題なく食事が喉を通り、ちゃんと眠れるのだが、ずっと上の空になっていた。とにかく頭が回らない、自分の感情と折り合いが付かない。そして私よりも辛い境遇にある妹の事も心配だった。母によれば、食事も睡眠も取らず、ひたすら泣き続けているという。
あまりにも自分の処理能力を超えていたので、行政のそういった窓口に電話を掛けてみたが、一度たりとも出る事は無かった。

 知らせを聞いて2日ほど経ってから通夜に向かった。棺に収まる彼は安らかに眠っていた。それまで連絡を介してしか事実を知らなかったため、いざ対面してみると実感が湧くと同時にとても辛くなった。

 遺族の方や関係者から彼に関する話を聞いた。それを知った上で思ったのは、彼にとってはこの選択しか無かったのだろうという事。複雑な家庭環境や持病、その他の要因が重なり合った結果だったように思えた。あの時相談してくれれば、助けてあげていたら、そんな話が入り込む余地はもはや存在しなかった。仏教の教えでは、この世に生まれてくる事自体が苦しみとされている。苦しみから開放された彼の冥福を祈る。


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