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Caba la moi Toki

小さいころ 父母の部屋には大きな本棚がありました。
はじめは居間にあったそうですが
上下2段の大きなガラスの引き戸が入ったもので
子どもが危ないからと移動しました。
部屋の中で本棚は、前の道を大型トラックが通ると
ガラスがガタガタと音を立てたので怖かった覚えがあります。

本棚の中には、仕事の専門書らしきものや料理の本、古い小説本の類が多く
私が興味を引くようなものは少なかった。
少ないもののマンガのコミックスがありました。
これがまた古いマンガです。

知らない作家のがほとんどの中、楳図かずお氏だけは知っていました。

本の背は色あせて、カバーや中身の本自体に痛みの目立つコミックス。
「何度も読み込んだ」というより「たくさんの人が読んだ」そんな感じです。

学校から帰ると、こっそり持ち出して読みました。
その中で、いちばん覚えていたのが「おろち」です。

そのころの私は、とても臆病でした。
とにかく「暗闇」が怖くて、夜に明かりを点けるために部屋に入ることも
ひとりではなかなかできませんでした。
だから「星空を見上げる」というロマンチックなことも
あまりした覚えがありません。

動物は生まれた頃から本能的に「恐れ」を知っています。
常に猛獣の脅威に晒される生き物は、生まれ落ちてからすぐに
自分の足で立ち上がることをします。
走ることが大自然の中で生き残る唯一の方法だと生まれながらに知っています。
それに比べ、ヒトは精神的にも肉体的にも未熟で生まれてくるため
「保護」が必要となります。(ワンコやニャンコもそうですね)

とろろご飯…
もとい  ところがですよ
ヒトも教えられたわけではないのに「恐怖」を知るような気がします。
心の底にある「恐怖」は教えられて身についた覚えがしてましたか?

暗闇が怖い
隣の家の大きい黒犬が恐い
学校の庭の大木が怖い
理科室の標本が怖い
窓にとまって暴れている虫が怖い
パンジーの花の模様が怖い�

「さぁ! 今日は、身の回りから
   恐ろしいものをたくさん探して
        心に焼き付けましょう♬」

そんな授業はした覚えはないのに「怖いもの」が増えていく
やっぱり本能は、生き物であるヒトにも備わっている… 

とでも言うのだろうか…

カーツ大佐は、こう述べました

「恐怖。恐怖と友達になるべきだ。
 もし友達にできなければ
   君にとって恐るべき敵となる。
          本当の意味の敵だ」

(映画:地獄の黙示録より)

それを理解した訳ではありませんが、
ものすごい臆病でありながら「怖いもの」は大好きで、
学校の図書室で怪談や妖怪の本を借りたり、
友だちと回し読みしていました。

ある時は恐れ
またある時は自分から首を突っ込む
そんな自分の心に矛盾を感じながら恐怖を友達にしていたのかもしれません。

でも、その友達は、時にはイタズラで
夜、私に余計な想像や妄想を膨らませ
薄暗い部屋を不気味に細工しました。

闇は光の断たれた空間というより
それ自体が黒いゼリー状の生物に思えて
部屋の中いっぱいに充満した。

♪オバケなんて いないさ 
  オバケなんて ウソさ
   寝ぼけた人が 見間違えたのさ♪

だけどちょっと だけどちょっと 私まだ眠れてない!

闇は目の前まで膨張して、もうその正体を現す寸前だった。

「これ以上、こいつに囚われてはならない!」

私は意を決し、恐怖に身を任せることなく行動した。

「ママ… 今日、一緒に寝ていい?」

あわわ…地震だ!(◎_◎;)(リアルで💦)

すいません脱線しました。

なんでしたっけ?

こうして臆病で怖いもの好きに仕上がった私ですが
怖いもの好きは止められず
「おろち」を読んでいました。

怖いのは確かに怖いけど
他の恐怖マンガよりかなり違っていて
恐怖を生みだすものが「人の心」や「記憶」。

「おろち」は主役でありながら物語の主人公ではなく
「人を観察するもの」として見え隠れし、
「人には干渉しない」と言いながら大いに干渉し
見届けたあと人知れず去って行く不思議な少女です。
作中において「おろち」自身の事はあまり語られず、
彼女の生きる目的も宿命も説明はありません

数年前に実写映画にもなりましたね。


歳をとらずに何百年も生き続けて、ただ人の一生を傍観。
指先ひとつで重い扉を開け、時には突き破り
人の記憶に別の記憶を埋め込み
大の男、数人をあっという間に弾き飛ばす。
時には人形に命を入れようとする(これは失敗)

このマンガを読んでいて思いました。

「わだば おろちになる!」

そうでなくて…
でもホントになりたいなぁと思っていました。


普通の子がヒーローやヒロインに憧れて
刀やベルト、不思議なブローチやスティックで
武装、あるいはコーデしている時に
私は右手に包帯を巻いて、猫や犬を指さして睨んでいました。

ところがその包帯
あまりに きつく巻きすぎたため、腕が痛くなってきました。
母に訴えたところ
それはそれは恐ろしいほど叱られてしまいましたとさ。

そういえぼ母さん、本棚にあったけど昔は恐怖マンガ好きだったんだねーっ

あれ、父さんのだよ

えっそうなの?

あーっ? あれか? 中坊の時に友達に借りたやつだ。

それって「借りパク」か…orz

その後 夢中で読んでいた「おろち」
私が札幌市へ進学した頃

他の本もろとも母の「断捨離」で消滅しました。


信じようと 信じまいと それは、あなた次第!

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