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カーテンを開けて窓を開けると、適度に涼しい風が部屋に入ってきて、部屋も目を覚ましたように感じる。

「部屋も呼吸をしているんだな」なんて思いながら、これはもう“清々しい朝”と言って差し支えないだろうと声に出す。

「漬々しい朝だね」

一瞬にして背筋が凍り、一瞬にして耳が熱くなる。すぐさま脳溢血か脳梗塞か脳卒中か、あと脳のって何がある? と、再度おそるおそる声にする。

「漬々し、」

“清々しい”が言えない。

リビングのテーブルに置いてあったスマホを手にして、「言語障害」とググる。ググりながら、――手に痺れはない。――文字も打ててる。不安を消すように確認していく。

「言語障害には、“音声機能の障害”と“言語機能の障害”とがある。」

前者と後者のどちらなんだろう。「清々」を「漬々」と言ってしまうのは。

ドーーーーーー

動揺なのか、恐怖なのか、脈拍が、鼓動が、早くなりすぎてもはや全音符のようだ。

ドーーーーーー

「侍って、侍ってよ」

「待」が「侍」になっていることに気がついて愕然とする。「侍って」って何だ。と、ソファでスフィンクス座りをして窓の外を眺めていた猫が、振り向きざまに「んな」と鳴いて、2秒ほど黙ってから小馬鹿にしたように笑ってこう言った。

「清々しい朝だね」

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