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【妄想話】太郎・10話

太郎・第10話」

「おばあちゃんドコ行ってたん?」
「ドコって。龍太郎の服を買いにじゃ。そこのしまむらで。ついでにスーパーでお菓子も買ってきたんじゃ。」
「なに?」
「麩菓子。」
「いらん。…てか麩菓子好きやの。」
「じゃ、これはおじいさんにあげようかのぉ。
他のお菓子も買ったぞ。」
「なに?チョコレートか?」
「チョコレート止めてクッキーにした。森永のマリー。期間限定のミルクココア味じゃ。」
「それそれそれ!」
龍太郎はおばあさんが持っていたマリービスケットを奪うように取る。
「お菓子を食べる前に買ってきた服に着替えるんじゃ。」
「わ、わかった。」
龍太郎は服を受取り着替えた。
「よし!ワンサイズ大きめの服やな。これで来年も着れるな。♪嗚呼よく似合う ワンサイズ大きめの服〜」
「なになに?なんじゃ?」
「なんでもない。ひとりごと。…。くさいな。」
「くさい?おじいさんが着てたユニクロのフリースがか?」
「そうじゃなくて。面倒くさくなってきた。」
「なにが?」
「鬼ヶ島へ行くの。」
「龍太郎、鬼ヶ島に行こうとしてたんか?」
「うん。でもケンちゃんともまだ遊びたいし、帰り遅くなったらお母さんに怒られるし…」
龍太郎は下を向いて考え込みます。タクシーの運転手も下を向いて考えてるフリをしています。
タクシーの料金メーターだけ問答無用で上がっていきます。
龍太郎は上を向いておばあさんの顔を見ます。
「そうや。おばあちゃん代わりに行ってきて。」
「ドコに?」
「鬼ヶ島。」
「なにしに?」
「鬼退治。」
「無理無理無理。絶対無理!」
おばあさんは右手を左右に振り拒絶しました。
その度に手にかけていたスーパーの袋がカシャカシャと音を立てて振られて、中に入っていた麩菓子が粉々に割れました。


つづく

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