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廣瀬俊朗とラグビー Vol.3

RUGGERSオリジナルコラム
「廣瀬俊朗とラグビー」
第3章 社会人ラグビー

筆:廣瀬俊朗
1981年生まれ、大阪府吹田市出身
元ラグビー日本代表キャプテン
株式会社HiRAKU 代表取締役
NPO法人 Doooooooo 理事

1.東芝ブレイブルーパス
 東芝入社当時、ラグビーを長くプレーする気持ちは無かったので、4年間で辞めるという約束でブレイブルーパスの門を叩いた。東芝に入ってみると、一人一人が自分の判断を大事にしていて、それが有機的に動くラグビーであった。慶應の決め事のさらに上をいくチームとしての柔軟さや厚みがあった。自分が社会人でラグビーを続けた意義がここにあると感じられてとても嬉しかった。また、皆、本当に人が良く、お互いの距離感が近くて、泥臭い。寮と職場とグラウンドが全て近くにあるので、練習が終わってからも一緒にいる時間がとても長かった。寮では一緒によく音楽を聴きながら、ラグビーのことやプライベートなことを話した。たまには遅くまで語り合った。また、東芝の社風として、実直で派手ではなく、なおかつ、工場勤務であったので、現場の人との接点も多く、より濃い人間関係が仕事でも構築されていった。スマートな慶應とは違った良さがあった。純粋にラグビーが好きな人も多かった。ラグビーを仕事でやるというより、皆で東芝のラグビーを作っていくということが好きで、その過程に誇りを持っているように感じた。
 僕自身もますますラグビーが好きになり、一選手として何度も日本一を経験できて、幸せであった。
 その後、キャプテンに任命された。これまでキャプテンになった時は、自分自身が一番うまい選手であったので、比較的簡単にチームをまとめられた。でも、今回は勝手が違った。自分より年齢が上で、上手くて、経験がある選手がいる。これまでの強みでは勝負できない中で悩んだ。結局、前キャプテンの真似をしてしまいチームは停滞した。申し訳なかった。
 その経験からの学びが重要と考えて、皆にアンケートやインタビューを頼んで、僕の1年間の活動について、レビューをしてもらった。その時に、皆も苦しんでいることがわかった。一番の原因は、自分らしさが出ていなくて、皆もサポートしにくいということだった。「あーなるほど。」と腑に落ちた。人は人、自分は自分と腹を括った。そこから、自分らしくチームをリードすること。そのためには自分自身を知る必要があることを学んだ。
 2年目以降は、順調にチームを皆と作ることに成功。不祥事もあったが、2年連続で優勝できて、最高の時間を再び過ごすことができた。この経験から、自分自身のリーダーとしてのスタイルを確立できた。今もその軸は変わらない。1つ目は、組織として、個人としての大義をしっかりと持つこと。2つ目は、人間関係を構築することで、そのために、それぞれが活躍できる居場所を作ること、お互いのことを知る場を作ること、個人を尊重することが大切である。3つ目はチームカルチャーの構築で、それはチームとしての価値観の共有、オリジナリティの追求である。
 日本代表でも同様のスタイルで良いチームを皆で作ることができた。

東芝01

東芝02

(東芝時代の筆者)

2.日本代表キャプテン
 東芝のキャプテンを終えて、30歳になって、引退を考えていた。
 その矢先に、エディ・ジョーンズから日本代表のキャプテンに任命された。本当にびっくりしたが、とても光栄であった。新しい歴史を名将と築いていくことは、とても刺激的であった。今までの練習スタイルも大きく変わって、1日4回の練習を実施することもあり、スケジュールは朝から晩までみっちりであった。ラグビースタイルも「JAPAN WAY」を掲げ、自分たちのオリジナリティがあり、とてもワクワクした。一方で、世界基準のスタンダードに僕らは到達していなかったので、エディさんから辛辣な言葉をかけられることが多かった。特に僕自身はキャプテンであったので、なかなかのものであった。あるときは、1日5回以上怒られた。最後に一応和解。翌日はテストマッチであったが、全く寝られないまま試合に突入。なんとか試合には勝利したが、とてもきつかった。このように、良いことばかりでは無かったが、これまでのラグビー人生では味わえない時間となった。
 途中でキャプテンは外されたが、2015年のワールドカップでは、南アフリカに勝つなど3勝1敗で終了。選手生活のキャリアとしては申し分ない形で終えることになった。キャリアだけでなく、「不可能はない、信じることが大事、チームを作るには、大義、人間関係、文化が重要である。」など多くのことを実体験できたことは人生にとってとても大きなことになったと思う。

2015代表

2015代表02

(日本代表でのオフのひととき)

~第4章に続く~
第1章はコチラ
第2章はコチラ

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