”ラグビーインド代表監督で得た学び”#14 練習の組み立て方
日本ラグビーフットボール協会公認 S級コーチの神宮寺です。
今回は2018年にインド代表監督としてアジア選手権に出場した際のスペシャルな経験から得た学びを綴りたいと思います。私がコーチとして得た学びが皆さんのコーチングを豊かにするお手伝いができたら幸いです。
コーチング手法の解説
一般的に「レベル1の無知」の状態から、「レベル6の無意識可能」の状態までの6段階の成長プロセスがあり、最終的には無意識にスキルが発動できるよう目標を立て実行していく。
私は大きく3段階のレベル、
「見る・知る」の段階にある知識レベル、「出来る」または「ときどき出来る」段階にある意識レベル、最後に「常に出来る」の段階にある無意識レベルでスキル習得の評価(区分け)を行なっている。
インド代表選手のおおくは、様々なスキルに対して「見る・知る」レベルだったので、ゲームライクの練習を多く導入するものの、改善練習ならびに次の課題へのチャレンジ練習 のほとんどは基礎ドリル中心に行なった。
判断のトラップとして、「見る」→「見ていたつもり」、「知る」→「知っているつもり」、「出来る」→「出来ているつもり」 のように、選手自身が「つもり」で判断し、本来あるべき成長の曲線を描かない場合があるので、コーチも選手自身も現在どの状態にあるのか、しっかりと観察して、コミュニケーションをとって現状を理解する必要がある。
オーソドックスな練習の組み立て方
練習の組み立て方法は様々あるが、一番オーソドックスな組み立て方は、以下の図のようなストーリーが見える手法。
1つ1つステップアップをしながら練習のゴールを目指して行くので、選手とコーチが考えていることを共有しやすい。
変則的な練習の組み立て方
2つ目は、あえて変則的な練習の組み立て方をする手法。
一貫性のあるテーマで深堀りしながら進めて行くことも手法の1つだが、以下の図のように様々な練習を重ねながら、最終的なシナリオへと向かう。
1つ1つの練習ではミスも増えるが、学びも多く記憶のフックもかかりやすいため、スキルの定着が早いと言われている。
ただし、コーチのファシリテーション能力が求められ、それ次第では、練習がダラけた雰囲気になる恐れもある。
綺麗なコーチングに慣れている選手は違和感を感じるかもしれないので、変則的に組み立てる狙いを最初に説明するのがベタ。
めちゃくちゃお洒落なコーチは、最後に狙いの意味を選手から聞き出したりもする。それが出来ると、次の練習はさらにスムーズになったりする。
BICMAC式 練習の組み立て方
インド代表で取り組んだのがBICMACパターン。ゲーム形式の中から改善と課題をみつけ、次のゲーム形式に向けて準備をする。(繰り返し)
実際に見て判断して改善する場合もあるが、コーチは常に現在のチーム状況を振り返り、課題の先読みをすることも大切。手法としての難易度は高いが実践形式を常に意識しながら取り組めるのは大きな利点。
効果的に練習を進めるために、ゴール設定と振り返りがとても重要になってきます。そしてその中でも、短期記憶を長期記憶に変えて、知識を定着させるために「良い問い」を立てて「選手自身にアウトプット」させることが必要です。
「良い問い」は、自ら文章を構成しますのでより学びが深くなりますし、コーチからの問いだけでなく、小グループの選手同士での問い(振り返り)は「アウトプット」と「インプット」を短時間で繰り返すことが可能ですので、学びの場として最も効果があると思います。
今日は比較的、真面目なトーンで。
<学びのまとめ>
●まずは選手にどのレベルのコーチングが必要なのか理解する
●選手のレベル、特性、カルチャーにあった最適な手法でコーチングする
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