”ラグビーインド代表監督で得た学び” #8 人生を左右する決断
日本ラグビーフットボール協会公認 S級コーチの神宮寺です。
今回は2018年にインド代表監督としてアジア選手権に出場した際のスペシャルな経験から得た学びを綴りたいと思います。私がコーチとして得た学びが皆さんのコーチングを豊かにするお手伝いができたら幸いです。
日本では体験できない経験
下の写真は、いかついインド人の集合写真。
彼らは代表合宿に来ている選手達で、とある共通点がある。
代表選手の中でもひときわ屈強な彼らの職業・・・
それは・・・ ARMY (自衛隊)
ちょっと想像してください。
あなたが彼らのコーチだとして、この中から「2名、合宿辞退させて」と突然言われたらどうしますか?
想定していないことが次々と起きるインドのコーチング現場。
その中でも、とびきり寝耳に水のビックリな事件があった。
それが今回の話。
インドでは、合宿中でも、自衛隊側から帰還命令が出て「2名選べ」と突然言われることがあります。 本当にレアケースだと思うけど・・(汗)
2名 選べと言われても・・・
皆、インド代表でラグビーをしたがっている選手達ばかり。
それに、まだキャンプが始まって1-2週間、残念ながら選手たちの能力も見極めていない状態。 そこで、マネージャーのマナスに聞いてみた。
ちょっとその決断重いんだけど・・・
自分たちで決めてもらって良いっすか?(汗)
UP TO YOU ... もうええって。
帰ってきた言葉はUP TO YOU。
なんでもかんでもUP TO YOUだな・・そのくせOFFを増やそうとすると、コーチOFFが多いぜ!とか言ってくるくせに・・・っと腹の中で思いつつ。
MG < UP TO YOU 。
私 < むむむ。
この決断は、彼らの人生を左右してしまうものなのではないか?
もしかしたら、今までで一番重い決断になるかもしれない。。
インドってどこかと戦争してたっけ? 戻される事情も知らないだけに、これがどんな人生の分岐点になるのか想像も難しかった。
色々な思いが頭をよぎったが、
目的とゴール達成に向け、現時点での自分がつけている評価に素直になることと、まずは彼らの本心を聞きたいなと思って、フォーマルな面談ではなく、フランクに語れる"インフォーマルな雑談"をしてみることにした。
インフォーマルな雑談で心を通わせる
私 < へ、へい! キミ、目のうえ切ったよね・・?
選手 < Heyコーチ! こんな傷、明日には治るぜ!
私 < お、おぅ。。
私 < え、えーっと・・・ キミも、目のうえ切ったよね?
選手 < Heyコーチ! 全然痛くない、俺いける!
私 < お、おぅ。。
奇しくも、連絡が来た日に、目の上を切った2人は、もう必死ですよ。
これは言っておくけど、試合に出ていない選手が、試合に出たくて監督の前でウォーミングアップを始める高校生ラガーマンのレベルじゃない。
もちろん「よっしゃ今日おれ調子いいなぁ〜」「行けんな俺」みたいな、聞いてもいない独り言で確かなアピールをしてくるレベルでもない。
私 < へ、へい! キミは、身体の調子どうなの?
選手 < Heyコーチ! 全然いけるぜ!絶好調だぜ!
私 < キミ、今日練習休んでましたやん!
アーミーの選手達と雑談を繰り返した結果、手の甲を骨折して休んでいた選手とパフォーマンスが劣る選手の2名に対し、現時点での考えを伝え、泣く泣く選出することになった。
トランジット君、すまんね。
手の甲折れてなければ選びたかったのだよ。君はファイターだったから。
(でも・・・業務は大丈夫なのかな?笑 )
残念ながら不幸にも私に選ばれてしまった選手のショックな表情は忘れることは出来ない。ただ、話ができたことは良かったと思っている。
事情的にも大学のシーズンを戦うメンバー選考とは違う、インドにこなければ出来ない経験だった。
<学びのまとめ>
●想定しない事態がおきることを想定しておく
●目的やゴール達成に対して自分の評価軸を大切にする
●フォーマルな面談とインフォーマルな雑談の使い分け
(インフォーマルな雑談の方が心が通いやすいような気がする)
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