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アナリストって必要なのか⁉ビジネスとスポーツの両面から考える超個人的考察

 これはスポーツ分析に興味のある方々で作成する「スポーツアナリティクス アドベントカレンダー2020」の10日目の投稿です

■芸術は爆発だ!

私は「岡本  太郎」氏が大好きだ!
東京の南青山にある岡本太郎記念館にはもちろん行ったし、我が家の玄関には「太陽の塔」のミニチュアが飾ってある。著書のなかでは「自分の中に毒を持て」を何度も読み返した。

芸術に上手いも下手もない。あるのは好きか嫌いかだ。 

スポーツアナリティクスのアドベントカレンダーでお前は何を言い始めているんだ!と思う方もいるかと思うが、私は美術館や博物館に行くのも好きだし、デザインの書籍を読んだり、芸術・美術関係のTVを見たりもする。建築も好きだったり、習字の達筆な筆の運びをずっと見ていられる。

でも なぜか?

スポーツのためである。
もちろん私は興味関心が浅く広く、いろんなモノに手を出してしまう性格だということは否定しないが、スポーツに携わる中で、特にアナリストを含めコーチング側に立ってから「芸術」というモノをより強く意識している

ラグビーワールドカップ2015イギリス大会で強豪 南アフリカから大金星をあげ、一躍話題になった当時の日本代表監督「エディー・ジョーンズ」氏も

コーチングの大事なスキルは「アート」と「サイエンス」だ。

と言っている。

■非常に感銘を受けた一冊
『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』

私は興味同様に読む本までカテゴリは幅広く、現在はアナリストではなくなったものの、サラリーマンアナリストだったのでビジネスとアナリストの掛け持ちをしていた。なので、さまざまなカテゴリの本を読み、ビジネスに関する書籍を読むことも多く、「美意識」という言葉にも惹かれ、この衝撃的な一冊に出会えた。
    『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』

最初に断っておくが、私は「エリート」ではない。
でも 何回読み返しただろうか。非常におもしろい一冊で推し本である。
著者である山口 周氏の語彙力と知識の多さや深さ、実際の企業案件を例にわかりやすい表現や例えもさることながら、今日のように複雑で不安定なVUCAな時代の中でグローバル企業のエグゼクティブがなぜ「美意識」を学ぶのかが非常にわかりやすく書かれているガッツりなビジネス書である。
スポーツ現場に置き換えると、監督やGMがエグゼクティブと捉えることができる。
いずれにせよ、組織のトップが所属する組織を成長させ、先進的で、持続可能な組織にするには「美意識」=アートを学ぶ必要があるということだ。


ということで...すでにお気付きの方もおられるかと思うが、スポーツ現場から離れた元アナリストがビジネスの場に身を置く中で、本書を読んで感じた超個人的考察を内容に沿って書いていくものであり、データやスタッツといった生々しいアナリティクスの世界からはみ出すが、ご容赦いただきたい。

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■「アート」・「サイエンス」・「クラフト」

エグゼクティブが「美意識」を鍛える理由は、

これまでの「分析」「論理」「理性」に軸足をおいた経営、いわば「サイエンス重視の意思決定」ではVUCAの時代に舵取りをすることはできないからだ。

具体的に大きく3つの理由
1.論理的・理性的な情報処理スキルの限界
・多くの人が分析的・論理的な情報処理のスキルを身につけた結果、正解のコモディティ化が発生し、方法論としての限界にも達している。
2.「自己実現的消費」へ向かいつつある
・人の承認欲求や自己実現欲求を刺激するような感性や美意識が重要
3.システムの変化にルール制定が追い付かない
・変化の激しい時代に法やルールが後出しじゃんけんで勝つ

特に「1」の理由については、アナリストとしてドキッとさせられる。
同競技アナリストの分析するスキルや思考、判断力が同じになり、分析ソフトや分析方法が淘汰された場合、アナリストの最終的な答えが同じになってしまうからだ。極端な話、RPAがやろうが人間がやろうが最終形態が同じになってしまうのである。

また、「2」についても、現代のスポーツ選手は情報がすぐに入手できるような環境の中で一遍通りなことを伝えても、納得はしない。だから、トレーニングプログラムにしても声掛けする言葉にしても、よく観察し、想像を超えるような発想が必要になる。

「3」については、私の専門競技であるラグビーでは毎年ルール変更があり、そのルールを超越してくるというか、ルールの裏を取るような戦術を考え、実践してくるチームが必ずや出てくる。こういったシーンをみるとワクワクする。ただし、先進的なアイデアがないとこういったものは生まれてこないだろう。

そこで高名な経営学者のヘンリー・ミンツバーグは、「直感」と「感性」をバランスよく活用することが重要だと説き、「アート」「サイエンス」「クラフト」が混ざり合ったパワーバランスのとれた状態を良いと指摘。

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アート:組織の創造性を後押しし、社会の展望を直感し、ステークホルダーをワクワクさせるようなビジョンを生み出す。
▶サイエンス:体系的な分析や評価を通じて、「アート」が生み出した予想やビジョンに、現実的な裏付けを与える。
▶クラフト:地に足のついた経験や知識を元に、「アート」が生み出したビジョンを現実化するための実行力を生み出している。

このどれか1つが欠けても突出してもダメだという。
アート型は盲目的なナルシストに陥りやすく、サイエンス型は人間味が失われ、ワクワクするようなビジョンが生まれない。クラフト型は経験に根差したことだけを認め、チャレンジしないのでイノベーションが停滞するという。

■アナリストは「サイエンス」を持ち得た「クラフト」たれ!

「アート」「サイエンス」「クラフト」の中でアナリストの部分は、有無言わさず「サイエンス」になる。これは間違いない!
ただし、今後より発展した創造性豊かなアナリストになるには、「サイエンス」だけでは限界があるのは前出のとおりだ。
もちろん最初は「サイエンス」のみでも良い。
経験値を上げるとともに、競技性をより理解し、世界の先進的な担当競技をアナリストとして早く目にすることで、「クラフト」にもなれるのではないか。これから求められるアナリストは、サイエンスを用いたクラフトである。と個人的には思っている。

本書では「アート」「サイエンス」「クラフト」のパワーバランスは、

トップに「アート」を据え、左右の両翼を「サイエンス」と「クラフト」で固めて、パワーバランスを均衡させる
PDCAで言い換えれば、Planをアート型人材が描き、Doをクラフト型人材が行い、Checkをサイエンス型人材が行うというのが1つのモデルになる。歴史上でも現代でも強い企業や類稀な革新を成し遂げた企業の多くは、強烈なビジョンを掲げてアートで組織を牽引するトップを、サイエンスとクラフトの面で強みを持つ側近たちが支えてきたという構造がある。

やはり「アナリスト」の存在はチームにとって、必ず必要だということがわかる。まずはアナリストとしてチームに所属している場合は、トップである監督をサイエンスとクラフトで全力サポートすることが役割になる。
私は4人の監督の下でアナリストを務めたが、常に話し、普段読む本などを共有してもらい、監督の思考を少しでも自分の中に入れて、サポートするよう心掛けた。
そんな過程で、アナリスト自身にも「アート」な感覚は備わり、アナリストからコーチになったり、世界のスポーツでは国代表のコーチにまでなったアナリストもいる。

■アナリストの将来は無限大

アナリストだけじゃなく、みなさんの将来は無限大であり、自分が経験し、学んだ分だけ、将来の自分に返ってくると私は信じてやっている。
実際、私はラグビーという競技で「アナリスト」を10年間務めた。
みなさんが想像されるような試合のスタッツ集計や分析、機器の準備はもちろんのこと、チームの事情で外国人監督・コーチと日本人コーチの間を受け持つコーチングコーディネイトもやった。また、マネジメント部門にも参加し、チームの「中期強化計画」を作成し、会社経営層にプレゼンしたこともある。
アナリストを極めることも1つのキャリアであり、アナリストのキャリアを生かして他のキャリアを選択できるようになるのも将来への準備だと思う

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おわりに・・・

今回 完全自己満足的な内容になったが、ビジネスとスポーツは相反するような、別の場所のモノと捉えられがちだが、そうでなく、マネジメントもコーチングも同じだと感じている。
本書においては、「アート」である監督やGM向けの話になっているが、彼らがチームを最高の方向に導くには「サイエンス」や「クラフト」の存在、つまりアナリストの存在が重要であるということもわかっていただいたと思う。

私は大学卒業後、高校教師としてラグビー部の顧問(監督)を勤めた。その後、私立高校と大学のコーチを勤め、2008年からトップチームのアナリストになった。
日本ラグビーリーグの最高峰ジャパンラグビートップリーグでは、企業チームとして、アナリストサラリーマンの二足の草鞋を踏んだ。
サラリーマンとしては、特に人事部門に所属する期間が長く、人材開発や組織開発、社内研修の企画や運営、講師をしていた。リーダーシップやマネジメント、ビジネススキルの企画が多く、学びと刺激の多い時間だった。スポーツバイアスのある私の脳では、すべてがスポーツに変換され、納得できることばかりだったので、良い経験だった。
こういった経験が今の私の礎であり、更に興味関心を広げていく理由である。より多角度的な視点でアナリストを捉え、後進の育成や現役のサポート、その他 分析に関する機材やソフトを作成される企業と現場をつなげて、更なるアナリストの開拓をしていきたいと考えている。

私のアナリストの師匠であるスマイルワークス株式会社村田 祐造氏RWC2003 アナリスト)の言葉で

「ビジネスにスポーツの感動を スポーツにビジネスの知性を」

とはまさにこのことを示すのかなと日々感じている。


さっ みなさんの投稿内容で刺激と学びをもらいましょう!
昨年2019年のアドベントカレンダーも貼っておきま~す


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