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ピザというものが世に出回るずっとずっと以前のお話

本当に本当に昔のこと。

小学校低学年の頃だったと思う。
今となっては名前も思い出せない同級生の家に遊びに行った。
そんなにしょっちゅう遊んだ覚えはないので、おそらく、その時一度きり。
共通の友人でもいたのだろう。

その子の家の、小さなキッチンで、立ったままおやつを食べた。
どんな家だったかも思い出せないのに、なぜかキッチンが異様に狭かったのだけは覚えている。
そして、彼女が差し出した摩訶不思議なおやつは、半世紀近い月日が流れても、決して忘れられない。

黄色く薄い、パイのようなものだった。その上に、真っ赤な色をしたクリームのようなものが渦を巻いて乗っかっている。
ケーキの一種だろうと思い、ひと切れもらって口にすると、なんとも珍妙な味の組み合わせだった。
パイの部分だけがほんのり甘く、あとは、少ししょっぱいような(?_?)
赤いクリームはどう考えてもケチャップに他ならない。

なぜ、ケーキにケチャップが?
甘さとしょっぱさが融合した、なんとも表現しがたい味だ。
けれど、決してまずくはない。
ただ単にお腹がすいていただけかもしれないけれど。

それから長い年月が経ち、ピザというものが当たり前のように流通し始めた頃、唐突に私は閃いた。

あれは、ひょっとしてピザ、いやピザを真似て作ったものだったのではあるまいか。

パイの上にチーズを敷き詰めて焼き、その上にケチャップをかけただけの、今風に言えば、プレーンピザ。

ピザの生地は、アップルパイやレモンパイと同じものを使ったのだろう。
ピザソースなんて、もちろん存在しない頃だから、ケチャップを代用。

こんなところじゃないだろうか。
作った本人も、どこかでピザの味を知り(写真で見ただけかもしれない)、想像力を張り巡らして作った物なのかもしれない。

電話一本でおいしいピザが運ばれてくる今となっては、あのできそこないのピザもどきが、たまらなく懐かしい。
決して美味しくはない。
けれど、それは、無垢な子供時代に食べた、思い出のおやつのひとつに他ならない。

ところで。
販売延期になったドミノ・ピザの福袋はどうなったのだろう?
絶対手に入れようと、スタンバイしていたのに。
毎月、違う種類のピザを食べようと思っていたのに。
ドミノさん、一体、どうなっていますか?
チーズボルケーノで、話、逸らさないで下さいね。

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