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【山雅2022レビュー】vs鹿児島|J3 第3節

2022.3.26
J3 第3節

松本山雅FC
×
鹿児島ユナイテッドFC

※本ブログ投稿時点で、第6節まで終了していますが、最新の試合についての内容ではありません。
※第4節以降は観ていない状態でのレビューとなっています。

スタメン

山雅(緑):3-4-2-1
鹿児島(白):4-2-3-1

前節からの変更点

  • 4-4-2 → 3-4-2-1

  • 常田、米原、住田、ルカオ、横山 → 大野、稲福、前、菊井、小松

守備の理想と現実

理想

鹿児島は攻撃時に4-1-2-3に近い形になり、ビルドアップを試みる。その鹿児島に対して、主導権を握らせたくないという意図があったのだろう。この試合、山雅は5-2-3で構えたところからプレスをかけ、ボールを能動的に奪いに行こうとする姿勢が度々見られた。プレスがはまり、そのままカウンターに結びつけるシーンもあった。

プレスがうまくいった例。
菊井がCB岡本に寄せて、SB薩川にパスが出たところを、前と挟んで奪いにいく。

現実

ただ、効果的なプレスを数多く見せた訳ではなかった。まず、5-2-3の形を維持することが非常に難しい状況だった。原因は小松の立ち位置にあっと思う。

小松は最前線でプレスのタイミングを窺っていたのだが、その際に、ボランチの木村を背中で消すことにこだわりすぎていた。木村が低い位置にいる時も、変わらず木村の前に立ち続けようとしており、そうすると、小松は山雅のブロックから離れていくことになるので、小松と中盤の間に大きなスペースが生まれてしまう。そのスペースを、いつ木村に利用されてもおかしくない状態になっていた。

小松が高い位置を取ることで、中央に大きなスペースが生まれる。

この影響を受けてしまうのが、左SHの佐藤である。木村は攻撃時にアンカーのように振る舞うが、守備時は右のボランチであるということもあり、少し右寄りになることが多い。そのため、佐藤との距離が比較的近い。逆に佐藤からすると、どうしても木村のことが気になってしまう。

しかも、木村だけではなく、トップ下のロメロ・フランクもこのスペースでパスを受けに下りてくる。佐藤はロメロにも対応しなければいけなくなり、ポジションを下げざるを得なくなる。

木村やロメロに対応するために、佐藤がポジションを下げる。

本来の佐藤の役割は、3トップを形成できるように高い位置を取り、CB広瀬にプレッシャーをかけつつ、右SBの星にパスが出たらそこに寄せるという感じだったと思う。しかし、3トップを維持することができなくなり、結果的にチーム全体が押し込まれていく展開となってしまった。まずは5-2-3のコンパクトなブロックをしっかり作ってからプレスを組み立てていっても良かったと思う。

初めにコンパクトなブロックをしっかり作り、相手にスペースをなるべく与えないようにしたい。

その後

うまくプレスがかからず、押し込まれた際には、5-4-1の形で守るのだが、このときも問題が生じてしまう。

小松はまず木村を背中で消したところから、CB岡本に寄せていく。その際に、CB広瀬へのパスコースを切るように動くのだが、そうすると木村が当然村がフリーになり、ボールを受けて自由に攻撃を展開できてしまう。

簡単に木村にパスが入ってしまう。

もしかしたら、ボランチの稲福かパウリーニョがスライドして木村を見ることになっていたのかもしれない。木村にパスが入るときに、小松は「なんで後ろは出てこないんだ?」という表情をしていた。

しかし、実際にボランチがスライドして木村に寄せるのは難しい。ボランチは、まず自分の両脇でパスを受けにくる選手のことを見なければいけない。そして今回の場合、岡本から両脇のスペースへのパスコースが全く制限されていない。この状況でボランチが出ていくのは、かなりリスクが高い行動になってしまう。

ボランチは、パスコースが多い状況で出ていくことは基本的にできない。

後半

後半は4-4-2に変更していたが、1節、2節と同様に、FWとMFの間にスペースを与えてしまっていた場面が見られた。カウンターのために2トップを高い位置に残したかったのだろうし、この試合ではカウンターからPKを獲得してはいるのだが、長い目で見れば、リスクの方がリターンより大きい守備だと感じる。

中央にスペースを与えてしまう。

試合結果

松本山雅FC      1 
50' 横山
鹿児島ユナイテッドFC 2
28' オウンゴール  64' 米澤

ハイライト振り返り

ハイライト動画に載っているシーンをピックアップして振り返っていきたい。

プレスがうまくいったシーン

試合時間17'49"~

まず小松がCB岡本に寄せる。その動きに連動して佐藤や菊井も目の前の選手を捕まえにいく。小松は左右に首を振り、味方の連動を確認しながら、岡本へのパスコースを切りつつGKへプレスをかける。佐藤も後ろの味方の連動を確認しながら前に出ていく。多少相手のミスに助けられた部分もあるが、うまくボールを奪い、惜しいシュートまで結びつけることができた。

小松のプレスに、チームが連動する。

パスコースを限定しながら、スピード感を持ってプレスをかけることができれば、相手は余裕がなくなり、焦ってしまうので、ミスを誘うことができる。この試合で一番良かったシーンかもしれない。特に、ファーストディフェンダーである小松の動きは素晴らしかった。菊井も、トラップからシュートまでが非常に早く、流石のプレーだった。

失点①

27'11"~

SB星がDFの裏に抜け出してクロスを上げ、オウンゴールにつながってしまう。星をマークしていた佐藤が、うまくマークの受け渡しをできなかったことも問題ではあるが、下川ももっと良い対応ができたのではないか。

下川はロメロフランクに食いついて前に出てきていた。それ自体はいいのだが、あまりにもボールウォッチャーだったのが問題だった。ロメロとボールに集中しすぎて、裏に走る星のことが見えていなかった。

下川の背後のスペースを狙われる。

裏のスペースは一番相手に使わせてはいけないエリアだから、DFとしては、常に最優先で警戒しておいてほしいし、裏を狙っている相手がいないかを常に見張っていてほしい。特に、この場面で裏に抜けてきた星は、下川の死角から飛び出してきたとかではなく、正面から走ってきていたので、警戒していれば対応できたのではないかと思う。

失点②

62'40"~

ロメロフランクへのパスをCB大野がインターセプトするも、再び奪われ、その流れでクロスを上げられ、米澤に決められる。米澤には前がマークしていたが、ゴール前に走り込んできた五領に対応しようとしたことで、米澤がフリーになってしまった。

前が米澤をフリーにしてしまったのは仕方がないことだと思う。この失点シーンにおいて、問題なのはパウリーニョのポジショニングである。

62'41"の瞬間、大野はロメロフランクに対応するためにサイドに流れている。このときCB2人の間に大きなスペースができているのだが、ここをパウリーニョに見てほしい。ゴール前にこれだけのスペースを与えてしまうのは非常に危険である。

CB間に大きなスペースができる。

もしパウリーニョがスペースを埋めるためにポジションを下げていたら、失点を防げていた可能性はある。このシーンで鹿児島のFW有田をマークしているのは宮部である。有田は最終的にニアに走り込み、宮部がそれについていくのだが、もしかしたら、有田のマークをパウリーニョに受け渡せていたかもしれない。そうすれば、宮部が五領を見ることができたかもしれない。そして、前が米澤へのマークに集中できたかもしれない。

なんとか対応できた可能性はある。

絶対に失点を防げたとは言わないが、防げる可能性を作り出すことはできたと思う。今後、似たようなシーンが10回あったとして、10回とも失点してしまうのか、3回くらいは防げるのか、というのは、勝ち点にも影響してくるはずである。

ボランチの人選

3試合でパウリーニョ、米原、稲福の3人がボランチでプレーしてきた。この中で一番良かったと感じたのは稲福である。

稲福は、ビルドアップするときに、相手FWとMFの間でプレーするのが上手い。ポジショニングも良いし、ボールタッチが細かいので、パスを受けた時のボールの処理に時間がかからず、スムーズに展開していける。

また、守備面では、周りの状況を把握しながら、的確にマークの受け渡しを行なったり、スライドをしたりすることができる。失点シーンで指摘した、DFラインにできてしまうスペースをケアする動きも比較的見られる。フィジカルを鍛えて、もっといい選手になっていってほしい。

パウリーニョは、球際の強さと、リーダーシップが魅力の選手だと思う。ただ、特に守備面で改善点が多い。周りの状況に合わせてというよりは、感覚的にポジションを取っていることが多い。失点シーンのような問題点は、この試合に限らず見られる現象である。

米原の良さは、最終ラインに下りてからの配球力だろうか。守備に関しては、もう少しプレーを観たいところなのだが、今のところは稲福の方がいいかなという印象である。ただ、一番成長に期待したい選手でもある。

この中からボランチ2枚を選ぶのであれば、稲福は当確レベルだと思う。守備面もそうだが、特にFWとMFの間でプレーできる能力は、3人の中で圧倒的に高い。

もう一人は、現状ではパウリーニョだろうか。ロングボール主体の試合展開になったときに、セカンドボールを拾うために球際の強さが必要になるし、キャプテンとしてチームを引っ張ることのできるリーダーシップは誰にでもあるものではない。

ビルドアップを重視するなら米原という選択肢もありだと思うが、米原と稲福の二人だと、やはり強度が不足しているように見える。

ダブルボランチではなく、中央に3枚並べるのも面白そうである。佐藤、稲福、パウリーニョの組み合わせで見てみたい。

正念場

今季の山雅は、タレントはそこそこ揃ってる印象を受ける。だからこそ、絶対に今季のうちにJ2昇格を決めたいところである。もしJ3に残るとなれば、戦力を保つことはまず不可能だろう。なんなら、昇格したとしても、「このチームでは勝ち上がっていけないな」と思われたら、主力は移籍してしまう可能性が十分に考えられる。

今季はJ3で無双しなければいけない。できるポテンシャルはある。そのためにはまだまだ改善が必要である。選手たちに、来季もこのチームで戦いたいと思ってもらえるような、そんなチームになってほしい。

余談

プレミアリーグのブレントフォードが好きでよく観ているのだが、その中でも一推しなのが、MFのヤネルト。ドリブルが上手いとか、足がやたら速いとか、分かりやすい特徴はないが、とにかくポジショニングがいい。目立った武器がなくても、基礎的な「止める・蹴る」技術の高さと、そこそこのフィジカルがあれば、あとはサッカーIQをとにかく鍛えることで、プレミアでもプレーできる、ということを教えてくれる。観ていて勉強になる選手である。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

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