【山雅2022レビュー】vs八戸|J3第19節
感染問題があったとはいえ、下位のチーム相手に痛恨の敗北を喫してしまった。
山雅の攻守の問題点を振り返った上で、今後の山雅の戦い方について、考えていきたい。
2022.7.31
J3 第19節
松本山雅FC
×
ヴァンラーレ八戸FC
※第18、20節は観ていない状態でのレビューとなっています。
前回の対戦:【山雅2022レビュー】vs八戸|J3第15節
~スタメン~
~試合展開~
山雅の守備
山雅は5-2-1-2のシステムで守備をしていた。
5-2-1-2の大きな問題の一つが、サイドにスペースを与えすぎてしまうということ。
サイドにスペースを与えるということは、相手SBに時間を与えるということでもある。
この試合では、状況にもよるが、トップ下の佐藤和弘が八戸SBに寄せることが多かった。
佐藤はトップ下なので初めは中央にポジションを取っていて、そこからSBに寄せに行かなければならない。
その分寄せるのに時間がかかってしまい、八戸SBには、どういうプレーを選択するか判断する時間をたっぷり与えてしまう。
また、時間がある分、より丁寧にボールを蹴る余裕が生まれるので、相手のプレー精度も上がってしまう。
結果、プレスを受けている状況では本来なかなかできないはずの、逆サイドへのサイドチェンジという選択を、相手SBは取りやすくなってしまっていた。
しかも、5-2-1-2の場合、片方のサイドに山雅の選手たちが寄っていくと、逆サイドにはあまりにも大きなスペースができてしまうので、そこにロングボールを送るだけで、八戸は簡単にプレスを回避できていた。
山雅のビルドアップ
・いわきのオマージュ
ビルドアップの際、ボランチの浜崎が最終ラインに下りて、WBの住田と外山が中央に入っていくことで、4-1-3-2のような形を作るパターンが何度か見られた。
この形のメリットとして考えられるのは、前線にロングボールを放り込んだ時のセカンドボールを拾いやすいということだろうか。
13:08のシーンでは、浜崎がFWの田中想来にロングボールを蹴り込んだところからのセカンドボールを住田が拾い、田中のシュート、そしてその後の二次攻撃へと繋がっていた。
このような攻撃は、第14節で、対戦相手のいわきがひたすらやっていた形である。
ただ、いわきの場合はこの形を毎回意図的に作っているが、この試合の山雅に関しては、4-1-3-2でセカンドボールを狙う形を作っていたのは、13:08のシーンくらいだったのではないかと思う。
チームとして意図した形というよりは、たまたまそうなったように見えた。
・ファイナルサードでの工夫不足
山雅が得点できなかった原因の一つとして、ポケット(ペナルティエリアの横幅の境界線付近)を狙えない、というのがあったと思う。
ポケットを狙うことによるメリットは、一つは、サイドでボールを持つ味方選手とのコンビネーションが生まれるということ。
サイドの選手とポケットにいる選手が、ワンツーで突破していくというようなシーンを作ることができる。
もう一つは、相手のDFやボランチを中央から釣り出せるということ。
DFを釣り出せれば、ゴール前の守りが薄くなる。
ボランチを釣り出せれば、ペナルティエリア前のスペースが空いてくる。
ただ、山雅は、ポケットを狙えていないことが多かった。
そのせいで、サイドでのコンビネーションが生まれないので、サイドでボールを持つ選手は強引に仕掛けてクロスを上げるしかなかった。
しかし、相手DFを釣り出せていないので、弾き返されることが多かった。
また、ポケットを狙えているときは、主に相手のボランチを釣り出せていたのだが、ペナルティエリア前のスペースに誰もいないことが多かった。
せっかくのスペースをうまく有効活用できないまま、結局クロスを上げるだけになってしまっていた。
~試合結果~
松本山雅FC 0
ヴァンラーレ八戸FC 1
54' 赤松
~ハイライト~
~妙なこだわり~
山雅は今季、5-2-1-2(3-4-1-2という表現の方がメジャーかもしれないが)というフォーメーションを定期的に使い続けている。
この形の大きな問題は、ブログで何度か触れてきているが、サイドに大きなスペースを相手に与えてしまうこと。
そのせいで、いつも対応が後手に回ってしまっている。
山雅が5-2-1-2を使っていて、上手くいっている試合をほとんど見たことがないのだが、この形に強いこだわりを持っているのかと思うくらい、ずっと使い続けている。
ちなみに、先日開幕したばかりのプレミアリーグで、ノッティンガムフォレストというチームが開幕節で同じ形を使っていた。
そして、同じようにサイドにスペースを与えてしまい、結果的にニューカッスルに一方的に攻め込まれてしまっていた。
5-2-1-2の難しさを再認識した試合だったし、山雅が今後も5-2-1-2を使っていくのであれば、非常に不安だなと感じた。
~山雅に残された道~
この試合で見えたもの
守備面では後手に回り、攻撃面では、繋ぎたいのか縦に急ぎたいのかよく分からない中途半端なプレーをしてしまっている現状では、昇格は厳しいのではないかと思ってしまう。
ただ、この試合で、山雅が目指していくべき道が見えたのではないか。
それが、前述した、4-1-3-2である。
いわきと同様の戦い方で、ひたすらロングボールを前線に送り、セカンドボールを2列目の3人で回収することを狙っていく。
シンプルで、選手たちも分かりやすいだろうから、急にやり始めたとしても、ある程度上手くいくはず。
思えば、むやみに可変などせず、4-2-2-2の形で、シンプルにロングボールを蹴ってセカンド狙いの戦い方をしていた時の方が、攻撃に迫力があった。
2列目には、菊井や佐藤のような、チャンスを生み出せる選手たちがいるのだから、その選手たちに前向きでボールを持つ機会を作ってあげやすいこの形は、今の山雅にも合っていると思う。
具体的な形
いわきと同じように、守備時は4-4-2で守り、攻撃時はボランチの一人が少し上がって4-1-3-2の形になる、という前提で考えていく。
これまでの選手選考から大きく逸脱しないような、無難な形は、下のような形だろうか。
ここから、個人的に不安な点を考慮して変更を加えたメンバーが下の図。
変更点について触れていく。
・右SH
まず、右SHは田中パウロとした。
住田と悩んだが、田中パウロは攻撃面のクオリティがあるだけでなく、攻→守の切り替えの場面で、全力で戻ってくれるので、守備面での貢献も考慮して選択した。
ただ、試合毎に調子の良い選手を起用すれば良いのではないかと思う。
・SB
次に、SBは左に下川、右に吉田とした。
外山は、球際や1対1の守備を苦手としているので、SBとしては厳しいと思っている。
吉田は、出場した試合ではそつなく仕事をこなしていたという印象だったので、右SBでもっと見てみたいと感じた。
点を取りにいかなければいけない状況では、外山のSB起用もありだと思う。
・ボランチ
そして、安東の相方のボランチは大野とした。
この戦い方では、ボランチの一人が少し高い位置を取りに行くになる。
仮に、セカンドボールを相手に回収された場合、一時的にボランチは一人だけの状態になってしまう。
そのため、後ろに残ったボランチには、カバー範囲の広さが求められる。
大野にはスピードを活かした機動力があり、守備能力も申し分ない。
ビルドアップをほとんどしない、この戦い方であれば、ボランチとして問題なく活躍できると思う。
・CB
大野をボランチで起用するため、CBは、身体能力が高く、ラインコントロールもこなせる橋内とした。
まとめ
今回紹介した戦い方は、いわきのやり方をそのまま山雅がやってしまおうという内容になっている。
このことについての考え方は人それぞれかもしれないが、個人的には、サッカーはパクってなんぼだと思っている。
4-4-2というフォーメーションだって、最初に使った人以外は、全員パクっていることになるのだから、何も問題はないはず。
サッカーをする目的は、とにかく勝つこと。
そのために、真似できる部分は真似すればいいし、オリジナルの要素を思いついたら付け加えればいい。
なんでもいいから、山雅が強いと思える試合を、早く観たい。
~終わりに~
この試合がJリーグデビューとなった神田渉馬と田中想来に、届かないとは分かりつつ、勝手にメッセージを送りたい。
神田渉馬選手
Jリーグデビューおめでとうございます。
自分はGKに関しては勉強不足でよく分かりませんが、素晴らしいセーブもありましたし、失点に関しても、ノーチャンスだったと思います。
負けたのは、神田選手のせいではありません。
再びピッチに立つ日を楽しみにしています。
田中想来選手
Jリーグデビューおめでとうございます。
ゴール前への入り方、惜しいシュート、相手ボランチを消し続ける守備など、良いプレーばかりでした。
田中選手の良さをチームが活かしてくれるようになれば、きっと活躍できるはずです。
応援しています。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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