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【読書ノート】「痴人の愛」

「痴人の愛」
谷崎潤一郎著

主人公は河合譲治という男性。
将来自分の妻にするつもりで自分の理想の女性に育てようと15歳の少女「ナオミ」を自宅に引き取り、英語や音楽を学ばせるのだけど、もともと、頭は、よくないらしく、自分の理想から、外れていくのだけど、肉体関係を持ち、溺れていくのは、主人公の譲治の方で、ナオミは、手の付けようがない性悪淫乱娘に豹変してしまう。彼女を服従させるどころか、譲治の方が服従を誓わされるという訳のわからない物語。

変態的な文章が美しく並んでいて、ある意味非常にエロくて、人間の欲望と欲望のぶつかり合いが、生々しくて、エロ小説だ、と思いながらも、つい、読んでしまった。

さらに興味を惹かれることとしては、実は、「ナオミ」には、実在のモデルがいるということ。そして、そのモデルというのが、谷崎潤一郎の妻(千代)の妹「せい子」だと言われている。

谷崎潤一郎は、慎ましく従順な千代と平和なそして、やや退屈な結婚生活を送っていた。そこに、千代の妹である当時15歳の「せい子」の面倒を谷崎家で見るという事件が起こる。姉の千代とは対照的にせい子は自由奔放でわがまま。谷崎は彼女のことを「野獣のような女」と言いながら、手なづけようとしているうちに恋に落ちてしまう。

夫が自分の妹に惹かれていることを知って塞ぎ込んだ千代は、佐藤春夫に同情されるうちに恋仲関係になる。でも、それをいいことに、谷崎潤一郎は、千代を佐藤春夫に譲ってしまうのだから、驚くよ。そうやって、谷崎潤一郎は、せい子を手に入れようと求婚する。面白いことにふられる。そうなると、谷崎は、千代を返して欲しいと佐藤春夫に訴える。最終的には、谷崎潤一郎には、別の若い女性を見つけて、結婚し、佐藤春夫は、千代と生涯を寄り添うことになる。

ロクでもない奴だなあと思ってしまうが、これが俗にいう「小田原事件」。詳細は瀬戸内寂聴さんの『つれなかりせばなかなかに』を参照。

芸術家の領域のひとは、恋愛にもパワフルだ!というか、欲望に忠実になっているということなのだろうと妙に納得してしまった。

ChatAIに本書にふさわしい歌を聞いて見た。
「痴人の愛」にふさわしい歌は、情熱的で官能的な雰囲気を持つ曲です。例えば、ビヨンセの「Crazy In Love」がそのような要素を含んでおり、痴人の愛のテーマに合うと言えるでしょう。ただし、選曲は個人の好みによります。

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