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キレる

『キレる!(小学館新書)』中野信子著

著者は、「ホンマでっか」でもお馴染みの脳科学者。



日本で議論というと相手のことを論破することに主眼がいってしまい、相手を黙らせること、否定すること、喧嘩することになってしまう。肝心の論が欠けてしまうことが多いように見受けられる。日本の学校では、話し言葉を学習しないため、言葉を使って自分の〝怒り〟を表現して抵抗する方法を学ぶチャンスがほぼない。本書は、〝感情的にキレる〟のではなく、自分の感情をきちんと表現し、〝守るためにキレる〟ことを伝えたいのだという。
生きていくためだけでなく、自分の能力を発揮するためにも、怒りの感情が必要とされることもあるのです。自分の不利益が見えてきたら、テクニカルに切り返す言葉の運用力が求められるのです。

① 老化問題

「老化は後頭葉より前頭葉のほうが影響を受けやすいということがわかったのです。  前頭葉はキレる自分を抑えたり、相手の気持ちを理解したりして、自分の行動を決めるという理性を司る部位です。〝暴走老人〟という言葉が表すように、情動の制御、行動の制御ができなくなり、ちょっとしたことでカッとなってしまったり、些細なことで暴言を吐いたりするのは、ブレーキとして働いていた前頭葉が萎縮することが原因で、感情を抑えるブレーキが弱くなるということで説明ができるのです。年をとると、自分の考えに固執するというより、人の話を聞く機能が衰えているのです。」

② 正義のための制裁 ドーパミン

「ドーパミンは前頭前野を興奮させ、意欲的にさせる物質でもあり、大量に分泌されると興奮状態になり、過剰な攻撃をしてしまうことがあります。何故、攻撃で快感を覚えるのか?それは「間違った行動をした人を正す」という正義感をもって制裁行動を行っているため「自分は正しいことをしている」という承認欲求が充足するからと考えられます。

③ 愛情・絆を守るための制裁 オキシドシン

オキシドシンは「愛情ホルモン」と呼ばれ脳に愛情を感じさせたり、親近感を持たせたりして、人と人との絆をつくるのです。仲間や子供に愛情を感じるなどオキシドシンが促進する行動は人間関係を作るうえではよい面はあるが、愛着が強すぎると、「憎しみ」「妬み」の感情も強まってしまうという側面もある。そのため、愛情を裏切るような行為や、お互いの信頼を裏切るような人や行為に対して、攻撃する行動を促進する。愛情ホルモンこそが、社会、組織、家族の構成員に息苦しいまでのコントロールを強いてしまうということは、が、生理的な要素として説明できるのです。

④ セロトニン

セロトニンが多く分泌されているとリラックスして、満ち足りた気持ちになり、セロトニンが少ないと不安を感じやすくなる。日本人は一般にセロトニントランスポーターの濃度が低く、普段は攻撃な人ではなく、真面目で、人を信頼しやすいが、相手がズルをしているとか、自分に不当なことをしていると感じると自分の時間やお金などコストをかけても、相手を懲らしめたい報復したいと思ってしまう傾向がある。

大事なことは、不当な攻撃を受けたときに、小さくとも抵抗を示すことが必要だということ。これには、言葉の運用力が大きく影響する。
マツコ・デラックス、有吉弘行などのトーク番組は言葉の運用力を高める良い素材がたくさんあるのでTVの視聴を勧められている。また、「深夜のダメ恋図鑑」という人気漫画もユーモアを交えながら不当な攻撃をかわす会話例がたくさんあって参考になるという。

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