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ヘモグロビン値と私のQOL

少し前から腸活をしていた。今のところ快調。今年の1月に最大級の「出ない」苦しみを嫌というほど味わったのを最後に、まだ一度、遭遇していない。

おかげで、私のQOL爆上がり。

もう一つ、私のQOLを爆上げしたことがある。

それが、貧血の解消

10数年前、娘を妊娠中に、初めて「貧血」と診断され、鉄剤が処方された。その鉄剤が私の体に合わなくて、吐き気や胃の痛みに悩まされ、産科の先生と相談して飲むのをやめた。
それ以来、人間ドックの血液検査のたびに、じわじわと貧血度を測る私の血液中のヘモグロビン濃度は下がり続け、数年前、D判定(要治療)となった。
当時、成人女性のヘモグロビン値の正常値が12.0g/dl以上であるところ、私は9.0g/dlを切っていた。

貧血の自覚症状は全くなかった。
毎日、仕事に行って、家事も普通にこなしていた。日常生活に困ったことは一つもなかった。
当時、かなり忙しい部署で働いていて、深夜に帰宅し、風呂場で何度も眠りそうになりながらも、朝には起きて仕事に行けた。
取引先をはしごするときは、昼ごはんが車内でクッキーやチョコレートだけなんて日もあったけど、それでも人間ドックの結果は、貧血を除いてオールA。すこぶる元気。憎らしいくらいに元気だった。

どんなに無茶に働いても、たいした風邪もひかず、血液も尿もピカピカ。あまりに元気すぎるの自分がバカみたいで恥ずかしくて、むしろ、ヘモグロビン値が低いくらいのほうが、「あたし、貧血なんですう」と「か弱い女」を演じられていいと、「貧血である自分」を歓迎していた。

そして、ついにD判定(要治療)

それでもまだ、「女性は生理があるんだし、貧血になって当たり前じゃないか、貧血くらいで病院に行くなんて大げさだ」と思っていた。

治療のきっかけは、メンタル不調。
あんなに元気な体を持っていたのに、突然、心が風邪をひいた。
朝起きられなくなり、体が鉛みたいに重くなった。
ふいに涙があふれてとまらなくなったり、何も考えられなくなったりした。

そんな自分の症状をネットや本で調べていたら、「貧血がうつの原因になることがある」という記事を見かけた。
何でも、体にビタミンやミネラル、鉄分が足りなくなると、メンタル不調のような症状が出ることがあるらしい。

そのときやっと思い出した。
自分のヘモグロビン値がD判定だったこと。
もしかして、このメンタル不調は貧血にも一因があるのかも……?

「貧血、絶対治した方がいいよ!!」
以前、久しぶりに会った友人から強く言われたことも思い出した。
彼女も極度の貧血だったけど、病院に通って治したら、びっくりするほど体調が良くなったと言う。聞いた当時は、「貧血が治ったくらいでそんなに元気になるもんか」と彼女の言葉を聞き流していた。

でも、もしかしたらと、藁にもすがる思いで、婦人科へ行ってみることにした。

「このままだと死にますよ」
婦人科の先生に真剣な顔で言われ、やっと事態の深刻さに気づいた。

「こんなに低いヘモグロビン値でよく暮らしてますね。血液中に、酸素を運ぶ役目のヘモグロビンが少ないと、心臓が普通以上に働いて血液を送らないと酸素を全身に行きわたらないでしょ? だから、貧血は心臓に負担がかかるんです。このまま放っておくと、あなたの心臓がもちませんよ」

たかが貧血と軽く見ていたけれど、心臓にまで影響するとは、考えもしなかった。

まだ、40代、死にたくないし、死ねない。

「鉄剤を処方しますから、毎日飲んでください」
はいと素直に、鉄剤を飲んだ。
妊娠中に貧血を診断されてから10数年が経過し、鉄剤も大きく進歩したようで、処方された青いカプセルに入った鉄剤(フェルム)は、鉄臭さもなく、飲んでも吐き気はしなかった。

効果は劇的だった。
わずか数か月で、長年の貧血が一気に解消された。

現在のヘモグロビン値は12~13の間。
お世辞にも高いとは言えないけれど、献血できるくらいには改善された。

そして、貧血が治ってはじめて、貧血の自覚症状があったことに気づいた。
一番貧血がひどかったとき、友人と京都を旅行し、鞍馬山に登ったが、坂や石段を登ると、息切れと動悸が激しくて目が回る。先を行く友人の足を何度も止めさせ、私が追いつくのを待ってもらったことがあった。
本当に死ぬ思いで登って「やっぱり、牛若丸が天狗と修行した山は違うわ」などと悠長に思ったものだが、日ごろから運動不足だったのもあるけれど、あれは「貧血」のせいだったのかもしれない。

貧血を治したあと、県内のお寺を訪れる機会があったが、長い石段が軽々と登れた。

それだけじゃない。
朝、目がぱちっと覚めるし、ハードに動いて息切れしても回復が早くなった。目のまぶたの裏や爪が真っ白だったのが、ほんのり色が差しピンク色になった。以前は、運動すると酸素不足でよく脳貧血を起こしていたけど、ダイエットをはじめてウォーキングを習慣にしても一度も脳貧血を起こしていない。
メンタル不調も改善された(心のお薬を飲んだからもあるけど)し、前より風邪もひきにくくなった気がする。肌荒れも良くなった。
残念ながら、声がデカさは変わらなかったけど。

自覚症状というのは、元気な時と比べて調子が悪いということらしい。
つまり、元気な時を知っていなければ、調子の悪い状態分からないのだ。不調が普通で、自覚症状を自覚できない。
調子が良くなってはじめて、「あれは不調だったのか」と知るという、なんとも皮肉な話。
また、じわじわと長い年月をかけて調子が下がってくるのも、自覚症状を自覚できない原因。私の場合はその両方で、貧血を自覚できなかった。

だけど、たかが貧血とあなどるなかれ。
ヘモグロビン値は生活の質の向上にとても重要な役目を担っている。
友人が「絶対、治したほうがいい」とアドバイスしてくれたときに、すぐに病院へ行けば、もっとこの快適な生活を早く手に入れられていたのにと悔やまれる。

最近、年のせいか、生理がほとんど来なくなった。婦人科で女性ホルモン値を調べたら、ずいぶん下がっていた。どうやら更年期に突入したらしい。
そしたら、特に鉄剤を飲まなくても、レバーをたくさん食べなくてもヘモグロビン値が下がらなくなって、安定するようになった。
逆を返せば、生理がある間は、心がけてないとすぐに貧血になってしまうということ。
ただでさえ、年中女性ホルモンに翻弄され、やれPMSだ生理痛だと苦しめられるのに、動悸や息切れ、果てはメンタル不調まで襲ってきたら、女子のQOLはどこへ行く?

もし貧血の人がいるなら、私のようになる前に、早めに治して快適なQOLを保ってほしいなと切に願う。

「調子いいでしょ。これが本来のあなたの体ですよ」
婦人科の先生に言われた言葉が忘れられない。

今じゃ、血液検査も尿検査も「オールAで何が悪い。健康、最高」と開き直っている。

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