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【独りよがりレビュー】あのときキスしておけば

何かを作って、世の中に公開している人は、きっと誰もが思うだろう。

「私の作品は、人々に受け入れられているか?」

noteの街の隅っこで、細々と文章を綴っているだけの私のような人間でもそう思うのだから、本気で、自分の身を削り、命を削って作品を生み出すプロならば、なおさらだろう。

自分の作品は、自分の分身。

心の奥底に隠された本心をさらけだすことは、怖くてできない。でも、自分の心に沸いたこの感情を誰かに理解してほしい。
だから、私は書いている。
下手でも、かっこ悪くても、書いてしまうのだ。

モノを生み出すとき、一人であれこれ考えているときは、とても孤独。その孤独を越えて作り出した作品を公開するとき、毎回ドキドキする。
読まれなかったら? ウケなかったら? 批判されたら? 
えいやと、公開ボタンを押して、スキやコメント、シェアされたと通知が来たときの喜びといったら!

もし「あなたの作品が全部好き」といわれたら、自分の心の奥にしまった大切なものを認められたようで、うれしいというより、ああ、ここで生きていていいんだなって思うだろう。安心、安堵。

承認欲求かもしれない。
でも、人はみな愛されたいと願うではないか。
それの何が悪い。

ドラマ「あのときキスしておけば」の蟹釜ジョーこと唯月巴(麻生久美子)も同じだったのではないだろうか。
彼女は、今、大人気の漫画「SEIKAの空」の作者。
マンガは売れに売れている。
ブランド物に囲まれ、プール付きの豪邸に住み、主人公の桃地のぞむ(松坂桃李)を家政夫として、1日5万円で雇うほど。

でも、きっと彼女も不安だったのではないか。
本は売れている。グッズも大人気。彼女のマンガの影響で、スーパーの青果売り場から野菜が消えた。
それでも、信じられなかった。
自分の作品が本当に愛されているのか。受け入れられているのか。

そこに、桃地のぞむは現れた。
勤務先のスーパーで、出世欲もやる気もなく、失敗ばかり。ただ息をしているだけのような生活を送る彼が、巴の描くマンガ「SEIKAの空」のことを語るときだけは、生き返ったように目をキラキラさせて、熱っぽく、作品への愛を語る。

巴にとって、それは、自分に「愛してる」と言われることより、愛されていると感じたのかもしれない。

だから、彼女は死ねなかった。
飛行機事故で、体は死んでも、心は死ねなかった。
あんなに自分の作品を愛してくれる桃地に、最終話を読ませず死ぬことなんかできない。
隣の席に座っていた田中マサオ(井浦新)に憑依しても、生きて「SEIKAの空」を完結させたかった。そして、桃地と恋の続きがしたかった。

「僕は巴さんの描く漫画も、巴さんも好きです」
と、桃地が田中マサオの体の巴を抱きしめてキスした。
巴の全てが愛された。

そして、巴は田中マサオの中から消えた。

今週、最終回。









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