見出し画像

再認識の「スペインのパン」

まずは「スペインのパン」へのお詫びから。

長い間、あなたをまずいもんだと思っていました。

タパス(ピンチョス)がちょこっとのってる輪切りのパン。つまみを頼むと必ずついてくる輪切りのバゲットみたいなパン数切れ。ハム(ハモン)をはさんだサンドウィッチの岩石のように固いパン。

固い上に、ばさばさっぽいし、フランスのバゲットみたいな旨味がない。フランスのバゲットなら、美味いので、固くてもそれをちぎって齧りながらウィスキーでもちびちび飲むと、それはそれでいいつまみとなる。パンに加えてあるバターとか?美味しい塩とかが違うのか?スペインはだめだな、やはり米(こめ)文化圏なのかな、パンに旨味がないなとずっと思っていた。

アジアでいったら、日本米は炊き立ては甘くて一粒一粒おいしいが、東南アジアの場末の屋台でどさっとたべるタイ米はあまり旨味はない。ただただおかずとかっこむもの。そんな違いをスペインのパンにも感じていた。

Logroño

久しぶりのスペイン、バールをはしごすると、年を取ったせいかこのパンの炭水化物攻撃にまいる。残すには、寿司屋行ってネタだけ食べてしゃりだけ残すみたいな罪悪感あるし、食べてしまう。やはり、ぱさぱさ、旨味なくうまくない。いっそ、注文するときにパンいらんからと言おうかとも思う。

そんなことを思っていたとき、いっしょに飯をくった、あるスペイン在住30年近い日本人ポン友がぽろりと言う。

「スペインのパンって素朴なんだよね、フランスとかと違って。小麦そのものの味が感じられるって、好きな日本人もけっこういるよ」

Donostia

あ、そうか。敢えて主張してないパンだったのか。

あくまでもタパスでは脇役で、上にのったものを盛り上げる。。。

たった一言を聞いただけで、がらっと、180度、360度認識が変わってしまうという出来事(あ、360度だと元へか。では180度)。

それを聞いてから滞在中にスペインのパンをタパスを食べるごとにありがたく噛みしめて食べる。

たしかに、これ小麦そのものの素朴な味。麦の風味を感じる。

美味しい!と感動するパンではないが、飽きずにたくさん食べれる。そんな存在だったんですね、あなたは。

*はしご酒の記録

Logroño

上はメキシコにもありそうな、豚の皮つきの肉をカリカリに揚げたやつ。広東やフィリピン料理でもあるが、豚の皮って美味しい。和食にもどんどん取り入れたらいいのに。

Logroño

上のは、なんとなんと、このパンにキノコ2つのせて上にちょこっとエビのせたメニュー1つしかない店。単品勝負!の店。がちゃがちゃした店へ突入して、このつまみいくつ、ワイン白とか頼んでゲットして、道端で食べて飲む。なかなか美味い。大きなパンもぱくり。

Bilba

これは、バスク地方のチュレタという牛の焼肉。赤でなくて、バスクの‎チャコリ(txakoli)という白ワインでチョッコリあわせて食べてみた。

美味いが、やはりグリルの文化はアルゼンチンのパリージャとかブラジルのシュラスコとか、あるいはアメリカのステーキ屋のあの職人芸には負けるなという感想。自分史上は、アルゼンチンの Bife de chorizo というステーキと、NYのピーター・ルーガーが最高。



まあ、それから道中、パンに敬意を表してパンを残さずたべました。それで、お蔭で血糖値あがりまくり、帰国後たまたま予約してあった血液検査したら、自分史上の最悪の血糖値を記録。反省。

以上、スペイン北部からの食レポ・写真で美味いもん食べた自慢でした。

しかし、かつて独立テロで揺れて、暗い工業都市だったバスクが、世界から美食を求めて観光客がひしめくところにたった30年ほどで変貌したことってすごいなあと思う。まあ、前から美食の都だったそうですが。

これって、自分が生きている間に、たとえが変だが、パレスチナが美食観光地となって世界から観光客がおしかけるというくらいな復活(そうなってほしいものです)。その意味では、ベトナムが80年代90年代はまだまだベトナム戦争の後遺症でがしゃがしゃしていたのが、いまやハノイとかに可愛いアクセサリー屋とかあっておしゃれ、日本人が女子旅で人気とか聞くと、隔世の感がある。紛争地域にも必ず平和は来る、そんな希望を持たせてくれる例なのか。

東京在住バスク人知人が、「ピンチョスはしごするなら、現金いっぱいもってね、食べた串の数だけぱぱっと現金で払うから」とアドバイスをもらって、また数軒おいしいバールの名前を聞いた。

いってみてびっくり。今回のスペイン滞在で現金は一度もつかわなかった。すべてPayment Service(Wiseとか)で事前に替えておいたユーロ残高をdebit card でNFC決済で瞬時にぴぴっと払う(これだとトータルの手数料はSpot為替に0.5%くらいで安い。一方で日本のカードがSPOTの為替に何%のせているのかしらないがそこでそれなりに手数料的なものとしてとられているはず)。また、串の数でなんていつの時代?と思えるくらい、みんなPOS画面でそれぞれ価格設定したピンチョスを注文時にぴぴっと入力している。

それに驚いたのは、超有名店が数軒、11月いっぱい1か月お休みしていたこと。さすが、かきいれどきに稼ぐだけ稼いで、オフシーズンの11月は1か月休んでしまう。飲食の理想のような名店たち。おかげで名物をいくつか食いそびれましたが。

さらに後日談、その後仕事で行ったロンドンで、学生時代の在住30年の友人と晩飯だったのだが、30年ぶりにあう友人から「美味い店予約しておいたから」とメッセージ。

なんとその店名が Donostia 。ドノスティアはバスクのサンセバスチャンの別名(バスク語というよりカステーリャ人がつけた San Sebastian よりも古いローマ時代の名前らしいが、現地バスク人は Donostia と呼ぶのを好むらしい)。

それ、スペイン料理だろ、知ってるよ今そこにいるから、と言ってやりたかったが、まあロンドンのスペイン料理もどんなもんかと思って黙っていた。

まあ味はノーコメントですが、スペイン料理はスペインで食べましょうという結論でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?