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至極無駄な営み
絨毯を洗った。
友達がお家にやってきてくれると言うから、嬉しくなって、絨毯を洗った。
まずは浴槽に絨毯を投げ入れたら、隠れるくらいのぬるま湯を張って、洗剤とか漂白剤とかなんだか綺麗になりそうなものを色々と入れた。
さっきまで無色透明だった水が、本当に今までこの上に寝転んでたの?って不安になるくらいの色になったので、漂白剤のせいにして見て見ぬふりをした。
絨毯を洗ってることなんてすっかり忘れて、友達と遊んだ。
彼女のターンが永遠に終わらないトークをふむふむと聴きながら、笑ったりした。
夕方には帰るって言ってたのに、深夜3時まで居た。
彼女が颯爽とタクシーを呼び寄せて、帰った後はすぐに寝た。
絨毯のことなんてすっかり忘れて、ぐっすりと眠った。
次の日、お風呂に入ろうと扉を開けたら絨毯が浴槽に鎮座していた。
朝に適した意識高めの音楽がかかる12時45分には全く似合わない香りと汚れが浴室に広がっていて、叩き起こされた気分だった。
とりあえず水気を切るかとお湯を抜いて、絨毯に触れたけど全く持ち上がらなかった。
私の3倍くらいあるんじゃない?って重さになっていて、途方に暮れた。
とりあえず隅っこでシャワーを浴びてから、何度目かの劇場版名探偵コナンを2本みるなどして、ひと通りの現実逃避を終えたので、もう一度浴槽を覗いた。
そしてまた途方に暮れて、何度か無駄な抵抗をしてから友達に連絡した。
素敵なお部屋でお出迎えしたくて絨毯を洗ったのに、不恰好な姿で浴槽に鎮座する絨毯を「この有様ですよ」と晒してしてから、2人で途方に暮れた。
なんやかんやあって、もうあいつの水分を切って乾かして、部屋に敷くなんてことは無謀だと言うことになり、2人でビショビショになりながらゴミ袋に入れた。
全部無駄だったじゃん。と思った。
ダイニングテーブルをずらして絨毯を引き抜いて、引き摺りながら浴槽へ投げ入れて、お湯を張って、洗剤や漂白剤を入れて、お湯の色に引いて、忘れて、気づいて、引っ張って、濡れて、持ち上がらなくて、途方に暮れて、コナン見て、現実逃避をした。
これら全ての無駄を営んで、わたしは絨毯を捨てた。
割と気に入ってた絨毯を捨てた。
新しい絨毯が欲しい。
せめて、冬までには欲しい。
でも、絨毯屋さんを探して、電車に乗って、買って、担いで、帰宅して、ダイニングテーブルをずらして、絨毯を敷くなんて無謀すぎる。
ばいばい、私の素敵な絨毯。
これからの人生、何度絨毯を買ったとしても、もう2度と洗わないと固く誓う。
だから、どなたか絨毯を買ってきて、そして素敵に敷いてくれないか。
足元が、寒いです。
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