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本まとめ:『一般意思2.0』で読み解く、新しい統治の形 7つのポイント

ルソーの社会契約論で述べられている一般意思について、現代への応用を試みた東浩紀氏の『一般意思2.0』。
そこには、新しい統治の形が書かれている。そして、ネットプラットフォーマーが出現し、データベースやビッグデータに溢れる未来像についての話へと移る。
何かを定めるときに、要因やプロセスよりもますます結果が重視され、それは一様ではなく、応変な柔軟性が求められていくことが前提として考えられている。

(1)一般意志2.0=新しく創出される決定過程

何かを熟議するのではなく、自然発生的に意思決定されるもの。
全体を俯瞰したときに『そうならざるを得ないようになる』という考え方。

(2)一般意思が社会契約を実現する

一般意思は、<個人>と<属する組織(ここでは国家)>の矛盾する期待を両立させるためのもの

それぞれの期待
個人:社会的制約からの解放/孤独と自由
国家:絶対的統合/無条件包含

コミュニティやコミュニケーションをつかさどる上位概念となる。

(3)世論との違い

一般意思と世論は違う。
世論(著内では、全体意思)は、全意見の単なる積み上げだが、一般意思はベクトル量として相殺・合成を繰り返しながら1つにまとまっていく。

【全体意思】
みんなの意見の総和(全体集合)=世論
誤っている場合もある
スカラー量
【一般意思】
みんなの意見から見える、1つの意思
誤ることはない
ベクトル量

(4)データベースやビッグデータが活用できる

個人の存在によって事実の積み重ね(データベース)によって、コミュニケーション(熟議)に裏打ちされてものではない意思決定や統治が行われていく。

データベースに含まれるものは
・「数字」や「言葉」など文字化できるものだけではない
・「態度」のような雰囲気も含まれる
・しかし、「(3Dなどの)動画」「脳科学」のようなリッチコンテンツ・高度な技術に頼るものではない

データベースの活用とは、筆者の言葉を借りるのではあれば
・風を読む
ということになる。単に結果に対して、肯定・否定、Yes・Noで割り切れるものでもない。

(5)コミュニケーションとの違い

コミュニケーションは、複数の仮説・意見から1つを選ぶことがゴールとなる。A、Bという2つの概念を、肯定・否定のいずれかで結びつけて強固にしながら、否定的なものを棄却して戦わせる。

対して、一般意思は、概念や仮説を棄却しない。
否定的な関係も、結びつくポジティブな関係と考え、マインドマップのような理解で想像力を働かせ解を求めていく。

学説としては、「多様性予測定理(スコットベイジ)」の考えに近い。

(6)統治の意義

統治の役割(本書では国家の役割)は、
・秩序を守ること
・外部からの侵攻を防ぐこと
にまで最小に絞り込むことができる。

治安と防衛は、組織・統治の役割であるが、これ以外は、すべて一般意思に任せることができる。

(7)現実への応用

・一般企業やマーケティングへの置き換え
本書では、政治・文化の側面で語られているが、一般企業やマーケティングに置き換えることができる。
大きなデータベースでの総記録(いわゆる、デジタルデータに限らない)から、風を読み、一般意思を導き、それに委ねて<商品開発>や<内部組織>の見直しを行うことができる。
マネージャーは、内部組織の強み・弱みをコントロールする治安と外部・競合などの脅威への防衛の専門家であればよいとなる。

・期待値と結果
期待値が最大になるように行動することが最適とするならば、条件が同じであれば、結論は1つになる。
ただ現実には、期待値がマイナスであることが自明の宝くじやギャンブル市場は拡大している。また、長期的な効率の良さに対する大きなリスクを見て脱原発の動きは活性化し、代替手段の積極的な選択が進んでいる。
単に条件だけから割り出されるのではな、状況の把握によって、段階的に意思が変わることが示唆できる。

※2012年1月に作成したデジタルメモを再編集しました。・・・最近の国際情勢ってこの延長線かもと思うことばかり

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