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第3の推論法「アブダクション」とは

ドコモ・イノベーションビレッジの「編集工学研究所」シリーズに今回も参加してきました。今回のテーマは「アブダクション」という推論法について。

アブダクション(abduction)の公式:
驚くべき<事実C>がある。
しかし、<説明仮説H>ならば、<事実C>がいえる。
よって、<説明仮説H>が成り立つ。

公式だけ見ると、無理無理な考え方に感じるのだが、”演繹法”、”帰納法”と並ぶといわれる3つ目の推論法だそうです。

「アブダクション」は、科学的な発見に多い推論で、ニュートンの話が例にあげられる。

何もしないのに、リンゴが木から落ちる。
でも、物体の間で力が働くならば、リンゴは落ちると言える。
そうであるならば、物体の間で力が働くのではないか。

何か、驚くべき事実があったときに、その説明仮説を考える推測をアブダクションという。事実に気づく力と仮説を考え出す力が求められる推測法になっている。
それゆえ、演繹法は「論証の論理学」、帰納法を「正当化の論理学」という称するのに対し、アブダクションは「発見の論理学」と言われる。

なので、この飛躍的な説明仮説は何でもよいわけではない。

1.もっともらしい(plausibility)
2.検証可能であること(verifiability)
3.より単純であること(simplicity)
4.説明する範囲が広いこと(economy)

という4つのポイントでチェックできる。
例えば、”リンゴが木から落ちる”のは「小さい妖精が引っ張っているからだ」という説明仮説は、ファンタジーでまことしやかだが、もっと大きなものが落ちることを、妖精がひっぱっているとすれば、小さい妖精では無理だろうし、妖精が数千匹いるとも考えにくい。ましてや、これをどう検証でしたらよいだろうか。妖精が見えるメガネの開発を待たなければ、正しい証明はできない。
ニュートンは、妖精を万有引力を見立てて、このストーリーを作っていたのだから、粘り強さも必要ともいえる。

実は、3つの推測法を組み合わせると、新しい発見につなげられる。

①アブダクション:
観察を通じて、「驚くべき事実」を見つけ、『説明仮説』を作る
 ↓
②演繹法:
『説明仮説』を大前提としておき、他の事象をみて、結論が正しいかの検証を行う
 ↓
③帰納法:
検証を繰り返し経験を積み重ねることで、仮説が正しいことを証明する

3つの推測法は、別のものと考えがちだが、これを「組み合わせ」て使えるというのは、私にとっては驚くべき事実だ。

さっそく、ビジネスアイデアにも応用したみたい。
良い仕事を終えたとき、これってこういう前提があったからじゃないかと思いを馳せ、あれ、この話もあてはまるかも、あの話もあてはまるかもと広がっていく。じゃあ、別のときにも試してみるかと動いてみると、これも上手くいって確信に変わる。
新しいアイデアというのは、こうして具体性を持っていくのかもしれない。

現実的なことになればなるほど、前例・正解・整合性を求められ、そのアイデアは阻害される。ただ、個人的な体験をパワーにできる、この推測法で、私もビジネスを科学してみたいと考えたのでした。

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