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持ち込みの手順について〜企画提案書の書き方 その2

作品の梗概の書き方

エンタメ文学における新人賞でも、作品の梗概(あらすじ)が求められますが、多くの場合、「このように書いてください」という内容指定はありません。そのため、自由に書かれている方が多いようですが、梗概は作者の感性や文章力が表れる重要な部分です。

持ち込みの場合に私がお勧めするのは、あらすじは1~2文にまとめることです。ハリウッド映画の脚本術でいうログラインに近いものです。例えば、昔話の「桃太郎」であれば、「桃から生まれた男の子が、犬と猿とキジを仲間にして、鬼退治をする話」となります。もしあなたの作品がそのように短くまとめることができるなら、略歴などと一緒に一枚の資料としてまとめてしまってもいいと思います。

一方、ミステリやSF、歴史小説など、設定や展開が複雑な場合は、編集者さんの誤読を避けるためにも、人物や舞台設定、ストーリー展開、作品の構造などが分かるようにポイントを抽出してまとめます。

注意してほしい3つの例

また、注意していただきたい例を3パターンに分類して紹介します。

①キャッチコピー系
書籍の帯や販売サイトの作品概要に掲載されているような、興味を惹く言葉が散りばめられているけれど、途中で終わっているものがあります。例えば、物語の途中まではちゃんと説明してあるのですが、最後は「やがて高尾は腹心の部下であった寺地の裏切りに気づくが……」「一度は破局しながらも愛し合うふたりの運命はいかに――」などと、結末が濁されています。

完成している書籍のあらすじは、編集者さんが読者の興味を惹くように考えて作るものですが、小説家が編集者さんに作品を読んでもらうためのあらすじは最後まできちんと分かりやすく説明しているものが好まれます。「最初からオチを明かしてしまうと詰まらないと思われるのではないか」という心配は無用です。

② 作品解説系
キャッチコピー系もあれば、作品解説系もあります。例えば、物語をざっと説明したあとに、「現代社会を鋭く風刺し、その毒をはらみながらも、けっして小難しくなく、エンタメミステリとして一気読みできる、実験的小説に仕上がっている」といった作品解説のような文章でまとめられている梗概です。古今東西のベストセラー作品や文豪にたとえて、「まるで○○のようだ」などと自分について書いてしまう方もおられます。

解説をしてしまうと「自分はこういうつもりで書きました」という、作家としてもっとも大事なネタばらしをしているようなものです。作品を読んだ印象と大きく違った場合は、評価を下げることにもつながります。残念ながら評論家が用いるような言葉(でも自分にとっては不慣れなもの)を並べ過ぎて、意味がよく伝わらなくなっている……ということもあります。

③ だらだら系
やたらと詳しい梗概もあります。登場人物の詳しい言動や心理まで記してあり、冗長に感じられてしまうものです。このタイプは作品に忠実に書かれていることが多いのですが、だらだらした梗概を読んだ段階で、多くの編集者さんが読む気をなくしてしまうかもしれません。あらすじに必要な情報を取捨選抜してまとめていないことから、作者の力量が予測されてしまうためです。簡潔に書くためには、人物や出来事だけに注目して書くといいでしょう。(次は「原稿の準備」へと続きます)

*文芸作品の持ち込みに関するご質問があれば、コメント欄にて受け付けております。直接お返事をさせていただく場合、note記事にてご質問内容に触れる場合とあると思いますが、あらかじめご了承ください。

お読みいただき、ありがとうございました!