私が音声配信で「言いたい放題」を貫く理由【フミ子さんインタビュー】
Radiotalkで活躍する音声配信者「ラジオトーカー」を紹介していく連載インタビュー企画。今回は、番組『フミ子の雑談』を配信するフミ子さんにフォーカスします。
フミ子さんは、45歳のプロバイオリニスト。生まれ育った大阪を拠点に、音楽活動と並行してバイオリン講師としても活躍しています。
「自分のライブに来てもらう」をモチベーションに毎日アップしているトークは、合計800本を突破。バイオリニストの一般的なイメージを覆す、痛快なマシンガントークが人気ですが、インタビューからは、フミ子さんの内省的な一面も見えてきました。はたしていまのフミ子さんは、どうやって形作られたのでしょうか。
(取材・文/鼻毛の森)
英才教育からプロ、そしてフリーへ
──バイオリンはいつごろから?
フミ子:バイオリンは4歳から始めました。自分でやりたいと言い出して…… と家族は言うんですけど、私の記憶では母が熱心で、高校時代には月2回大阪から東京に通いながら、偉い先生のレッスンを受けるような生活でしたね。
高校1年の時に一度だけバイオリンから離れて、ブラスバンド部でパーカッションを叩いてたんですが、結局半年で部を辞めて、もとのレッスンに戻ってました。いま思うと全て洗脳だったんちゃうかなと(笑)
──プロになったきっかけは?
フミ子:高校を卒業して、地元の音楽大学に進学したんですけど、3年生の時に大阪の名門交響楽団のオーディションに合格したので退学しました。プロになるために大学に通っていたので「もうええかな」ってなって。で、その楽団に10年間在籍して、また「もうええやろ」と思ってフリーに。
──名門の交響楽団に所属していたのに?
フミ子:終盤は、クラシックが本当にやりたいことなのかわからなくなっていました。
ていうか、やりたいとかやりたくないとかを考えたこともなかったんですよ。クラシックよりロックやポップスを聞くのが好きだったけど、演奏では縁のない世界だと思っていたので。
ただ、たまたまジャズとのセッションの機会があって「あ、バイオリンってなんでもやれるんや」と。で、共演者からは、当時のファンキーな見た目も手伝ってか「こっち側の人間ちゃうん」とまで言われて。私も「あ、こっちやわ」ってなって。10年在籍したし、「禊も済んだやろ」的な感覚で、31歳でやめました。
──フリーになってからはどんな活動を?
フミ子:演奏は、週1回ペースでバーでの小規模ライブをやって、自分の動画チャンネルでも流す感じで続けています。
あと、食い扶持として、所属先を転々としながらですが、音楽教室の講師を続けてきました。人に教えるのが苦手で、なんだったらクラシックも嫌いなのに、みるみる人気講師になってしまったんですよね(笑)
講師は週2回なんですが、最近は演奏と配信の収入が安定してきたので、徐々に縮小しながら、演奏家活動に専念できたらとじゃ思ってますね。あとは、見本演奏の販売をしたり、弦合奏用のアレンジ楽譜を作ったりなど、なんだかんだで音楽だけで食べていけています。
「塾長フミ子」の「塾長」ってなんだ?
──現在はシングルマザーと聞きました。
フミ子:40歳の時に、15年間の結婚生活に区切りをつけて、今は中学3年の娘と暮らしています。大人しいけど面白い子で、楽しいですよ。ただ、興味があるのは音楽よりプログラミングのようで……。
──音楽の道には進ませない?
フミ子:本人がやりたいと言わないですし、基本やりたかったとしても高い確率で将来食べられないですから、親なら普通は勧めませんよね(笑)
私自身、親や先生に励まされて、色んな事を我慢してプロになったのに、「ああ、こんなもんか」な感じだったので。私の親に対してはいまも「当時、私をどうしたかったん!」という気持ちです(笑)
──最近、「塾長フミ子」から「フミ子」に改名されましたよね?
フミ子:フミ子は本名で、「塾長」は、私がやってる動画レッスンチャンネル「独学塾」での役割から自然についたものなんですが、今はほとんどやってなくて、ほぼ呼ばれないので省いちゃいました。
クラシックは本名の「安東文子」で活動して、フリーの演奏者になってからは「安東フミ」に。で、ネット上はもっとシンプルに「フミ子」としています。「安東」は結婚前の苗字で、「安東フミ」は苗字を元旦那のものを使ってて。かつては使い分けていたんですけど、今は似たり寄ったりなので、いずれ統一すると思います(笑)
集客のために始めた配信活動
──Radiotalkでの配信を始めた経緯を教えて下さい。
フミ子:ネットでの活動はYouTubeチャンネルが始まりで。演奏を見てもらって、ライブに来てもらおうと頑張ってたんですけど、効果がないばかりか、質問に答えるお喋りコーナーばかりがアクセス増えたんですよね。
だったら、いちいち化粧するのも面倒くさいし、トークだけのコンテンツ使ってもいいんちゃうかと。で、当時ハマっていたミニマリストさんが使ってるRadiotalkをインストールして、「あ、音ええやん」となって、Radiotalkに決めました。
──毎日の発信にこだわっているのは?
フミ子:これはもう単純に、収益と集客になるからですね(笑)。途切れたらファンが離れちゃうかもと思ってしまうので、毎日の収録と発信は欠かしません。もらった質問に答えていればネタはありますし、なければ自分語りで埋める感じで。もう、リスナーを逃がさないために必死です。
機材はあるけど、「スマホひとつで収録」が一番
──普段の収録環境を教えて下さい。
フミ子:音楽家なんで自宅に収録機材はあるのですが、Radiotalkに関しては、スマホひとつ手に持って、録って出しです。
毎日配信を続けるには、思い立ったらすぐに録音するぐらいのフットワークがないと。まず家にいるとは限らないので。それこそ音楽教室の合間にとか、移動中とかですね。車が無いので、いちいち機材なんか持ち運べませんし。
──しゃべろうと思った瞬間に録ると。
フミ子:ですね。強いて言うなら、朝起きてすぐ録ることが多いかもしれないです。寝ぼけてはいますけど、なんだかんだ、一番頭が回るんですよね。
もともと番組は「自分の考えをまとめるためにしゃべってる」みたいなところがあって。なんでこの話をしているのかを探りながら話しているので、「今日は何を話そう」ってストレスはないですね。
──とくにテーマは設けず、しゃべり出す感じでしょうか。
フミ子:「服買ったよー」とか「人に会ったよー」とか、だいたいの入口は決めますかね。私の配信は基本ピー音ではじまるんですが、ゴングみたいなもので、そこからはじめて「さーしゃべるぞ」と。そこからは自分とのバトルですね(笑)
──確かに、始まってからアクセルを踏み込んでいくという印象です。
フミ子:小さいときからよくしゃべるんですよ。でもクラシック三昧の生活だったせいもあって、親にも先生にも嫌がられて、怒られて。喫茶店で話していても、周囲には常に引かれているような状態でした。
なので、しゃべることが後ろめたいと感じる時代が長かったんですよね。そんななか、トークが評価された時は「そっちかーい!」と思いながらも、正直嬉しかったですね。「あ、ベラベラしゃべってええんや」と。
──トークをする上で、影響を受けた人はいますか?
フミ子:家はテレビ禁止だったので、影響どころか、タレントさんをよく知らないんですよ。ただ、受験の時にFMラジオはなんとなく聞いていて、きよぴー(谷口キヨコさん:関西エリアで人気のラジオパーソナリティ)さんの喋りが好きだったかも。「私のようなマシンガントークでも食べていける人がいるんだ」と思えて、元気をもらってました。
──収録トークとライブ配信は、どう使い分けていますか?
フミ子:ライブ配信は、喋りかけてくれるトーカーさんと交流することを目的としていますね。一方、とくにじっくり聴いてほしい話は収録トークで、という感じで、使い分けを意識しています。
演技してたら、続けられない
──集客を目的に配信を始めたということですが、実際にお客さんは増えましたか?
フミ子:確実に増えました。まぁ、元々がいなさすぎたんですけど(笑)新型コロナが収束すれば、これからもっと増えていく手ごたえは感じていますね。今は、動画配信と音声配信、そしてライブが全部入口になっていて、全てのコンテンツのファンが増えているっていう、相乗効果も感じ始めています。
──「自分を知ってもらう」上で、大事にしていることはありますか。
フミ子:とにかく「演技しない」ことです。本音でないと配信を続けられないですし、話を広げられないと思います。少なくとも私は無理すると続かないタイプなので、番組では思ったことを全部さらけ出すようにしています。しんどいときはしんどいと。
──「怒られるかな」とか、考えることは?
フミ子:そう考えてしまったら、逆に言ってみるかも。Radiotalkでは「つい言ってしまう自分」が受け入れられているという実感があるので、嫌な人は離れていくでしょうが、ついてきてくれる人の期待に応えたいと考えるでしょうね。
例えば、私がミュージシャンの後輩たちにアドバイスをするなら、音楽で食べていくためには「嫌なら断れ」「お金にこだわろう」「優等生では生きていけない」となるのですが、業界の人は確実に怒っちゃうでしょ(笑)。ただこれは、かつての私が一番教えてもらいたかったメッセージなので。求められたら、そう発信します。
──リスナーからの質問に答えているときは、どんな気持ちですか?
フミ子:実際は背景もなにもわからない相手なので、いただいた質問を呼び水にして、自分の話にすげかえています(笑)
お題をもとにするより、自力で広げたほうが伝わるというか。きっとこういう応じ方は「質問に答えていない!」と怒られる部類の方法なんでしょうけど、あくまでも自分のチャンネルなので、“暗黙の了解”と思ってもらえるかなと。
あと、音声コンテンツなので、相談してくれる人は、自分なりに落とし込んで楽しんでくれてると思うんですよ。もっとも、声やテンポが好きで聴いてる人もいるそうで、聞き流されてるだけなのかもしれませんけど(笑)。まぁでも、それならそれで、もっと好きにしゃべろうと思えていいかも。
体のいい気休めは、足かせになる
──トークの下敷きとなる人生観がどのように作られていったのか、気になります。
フミ子:一般的に見ればエリートコースに近い音楽人生ですけど、私にとっては、期待したものと違うものでした。それでも30歳ぐらいまでは「いい顔すれば道が拓ける」と踏ん張ったんですが、利用されることの方が多かった気もしますし。
で、報われないもどかしさが募って、20代と30代にうつを発症しました。ただ、それを乗り越えるごとに、「好きに生きよう」と思えるようになって、今があります。
──「努力は報われない」というトーク、印象的でした。
フミ子:「世界的なバイオリニストになるから!」と鼓舞されて、その気になって、なんとかプロになれたところで給料はそこそこ。どれだけ腕を磨いても、売れるのは可愛い女の子なんですよね。
「努力は報われる」と信じてがっかりした経験がたくさんあるから、「努力は報われない」と知ってさえいれば、違うベクトルで頑張れたのにと思うんです。きれいごとが足を引っ張ることって、残念だけどあるんですよ。
──明るいトーンとは裏腹に、達観していますよね。
フミ子:逆に、恵まれているものがあるなら、気を使わずにどんどん活かせばいいんです。私は生まれてから離婚するまで、少なくともお金には困ってはいなかったのに、それを活かしませんでした。一方で、シングルマザーになって、お金に執着したことで好転した部分もあります。
「あるものを活かせ」「ないものはないと知れ」と言ってくれる存在が、私はずっと欲しかったので、発信者としての私は、言いたい放題を貫いていきたいですね!
共感してくれる人と、もっと楽しいその先へ
──フミ子さんにとって、Radiotalkとはどんな存在ですか。
フミ子:ただただ「癒し」です。好きに喋れていることも稼ぎに繋がっていることも全部ひっくるめて、私の癒しの場になっています。
だって、配信で「お金がない」ってぶっちゃけたら、リスナーさんが本気で助けようと盛り上がってくれるんですよ。業界や、社会的な立場がブレーキになって話せなかったことを話せる人たちがいてくれる、ついでにライブにも来てくれるって最高じゃないですか。
同世代の手慣れたミュージシャンが「あるある」に共感して輪が広がるのも、楽しいです。けっこうベテランの域なので、「姉さん」と呼ばれがちなのは引っかかりますが(笑)
──「言いたい放題」を貫いていると、人気が出るほど「聴かれたくない人の耳に入る」リスクもあるのでは?
フミ子:私が話すと決めている場所なので、いいかなと。たまたま聞きに来て、勝手に自分事のように解釈して、頭に来たとしても、それも自由です。
「教えるのが苦手」なんて本音は、音楽教室の生徒さんにはとても言えないけど、私の番組の中で聞かれたのなら「ふーん」ってなるんじゃないかなと(笑)
──これからRadiotalkでやってみたいことはありますか?
フミ子:Radiotalkのアプリは音がいいので、トークだけだともったいないなと思い始めています。スマホで収録するなら、動画アプリよりRadiotalkの性能の方が、演奏の生感が伝わるはず。番組から飛び出して、コラボの生ライブとかやって、MCとしてイベント全体をガンガン回すのも楽しそうですね。
Radiotalkでしかやらない特別なライブとか、やりたいですね。Radiotalkなら、使った楽曲の著作権処理(※)もできますし。
(※編注:Radiotalkでは、JASRAC登録楽曲において、歌唱や演奏に対する楽曲利用申請を受け付けています。→詳細を見る)
現在は演奏した楽曲を自分で申請するかたちとなっていますが、動画アプリのように自動化されたら、もっと便利になりますね。ミュージシャンの思いとして、運営に届いてくれたら(笑)
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