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働きアリに花束を、を読む

『労働賛歌』も納得の内容


さてさて・・・



『もはや僕は人間じゃない』を読んでから、一旦政所さんの本を挟んでまた爪さんの本を読みはじめる。


『働きアリに花束を』


作家・爪切男さんと出会ったのはスナック掟ポルシェでした。

そして本書が連載されていたころ、爪切男という人を知らなかったので、中身の大半を知りませんでした。なので『もはや僕は人間じゃない』と同様に初見というかワクワクしながら読み進める。


まず指が驚く紙質


まず目を引く・・・というか、指を引く、とでもいうのか内容に入る前にページをめくる度に感じる紙質の快感


これ良い。この本の紙質がすごく良い。


わら半紙みたいな質感で目次の印刷の感じが学校で配られるプリントを彷彿とさせ読むのが楽しくなるね。

この本は内容だけでなく紙の質感も楽しめて嬉しい。

このことは爪さんにもお伝えしたけれど、その内容を記した紙も素晴らしい。学校で配られるプリントのような懐かしく暖かみのある紙質。

最後の『この本をつくった働きアリたち』にある『紙屋』国際紙パルプ商事株式会社さんなのか、株式会社竹尾さん等のお力なのかしら。

どちらのお力なのかは不明なれど最高な仕事だといえますね、これは。


帯に『労働讃歌』とあるのも納得


本書は幼少のころから働き続けてきた爪切男本人と、その周囲の働く人たちのお話である。本当に色んなことがあるよなあ、と感心すると同時に爪さんの何でも受け入れる懐の広さ、深さに驚かされる。

働くことって大変だよね

・・・と、いうのはとても簡単だけれども、仕事をしてお金を得て、それで生活を行い、あまつさえ家族を養っている人たち。もう全員リスペクトですよ。それだけで。

相当厳しいお父さんのスパルタ教育で育った爪さんも同じく、香川から上京されて夢を抱えつつも日々の仕事の毎日は、読んでいて本当に勇気づけられるというか、

この本に、10代ぐらいの頃に出会いたかった

・・・という読み終えた自分の率直な気持ち。

だから、もしも10代や20代で本書を読める人はとても幸せである。

働くことって辛くて大変だけど、それでも悪いことばかりじゃないよ、ってひっそりとさりげなく後押ししてくれるような。

それでいて、全裸のババア今なら70過ぎのババアでもヤレます、をブッコんできたり、50歳で夢をかなえた親父のことジーンとさせるから卑怯だ。

それと、やたら自慰行為が出てくるし、本文中でも医学的にリラックス効果が~云々という記述もあるけれど、アレ、本当ですよね。爪さんは自慰行為をして、そのことを紙に記して本にして売ってお金を得る。それこそ我々には計り知れない最高の自慰行為ではないだろうか。


タレ瓶について

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爪少年が子どもの頃に、せっせと内職をしていたというタレ瓶、こういうヤツだろうか。あんまりお弁当買って食べないから分からないけどこういうのって手作業で行われていたのか!と驚きましたね

もしかしたら、同時期に俺が食べた弁当の中に入っていたタレ瓶は、爪さん(またはご家族)が詰めたやつだったのかも知れない。



極上の書き味、ずっと書いていたい魔性の紙


あと、選挙の投票用紙ユポ紙って呼ばれているのも本書で知りました。



選挙ってね、気持ちいいんですよ。


あの投票用紙に鉛筆で文字を書くほど気持ちの良いことって早々ありませんぜ。アレはボールペンじゃダメだろうし、それなりに気持ち良さそうではあるけどシャーペンとかサインペンでもダメなんだろうなあ。あくまでも尖った鉛筆じゃなきゃならない。あれでサラサラ書くのが本当に気持ち良い。


上にも書いたけど、

さとう 明

たかはし 司

とか、簡単にすんなよ!

って言いたくなるんですよね。もっともっと画数を多くして、よりオレに書き味を楽しませてくれよ!!って選挙のたびに心から思う。


あと、本書にちなんだインタビュー記事で思わずうなってしまったのがこちら。



——期待していないんですか?

爪:全く期待していないです。仕事はしんどいだけで終わることが普通で、しんどいからお金をもらえるんだと思っているので。


——だからこそ、しんどいなんてことはわざわざ書くまでもない、と思っているんでしょうか?


爪:そうです。今日は本当に何にもなかったな、というからっぽの一日はあるし。この本を読んで「働くことって楽しいのかも」と思う人がいたら、そんなことはないよ、と言いたいです。仕事ってしんどいことが8割ぐらいだと思いますけどね。その中で、このしんどさなら何度でも体験したくなる仕事が自分に向いている仕事なんじゃないでしょうか。

(上記記事から引用)


>仕事というのはつまらない、しんどいのが当たり前


めちゃくちゃ共感した。

生きていくため、食べていくために、お金を稼ぐためにやることだから、仕事がつまらない、しんどいのは当たり前なんですよね。これは決してネガティブな意味ではなく。

そして、仕事がつまらないからこそ休日は目一杯遊ぼう、とか、遊びに行ってもちょっとのことをより楽しめたりする。そうした日常のちょっとしたスパイスになるんですよね。(あくまでも個人の感想ですが)


ちょっと話は逸れるんですが、最近『エンジョイ・ハラスメント』なる言葉があって、どういうことかというと、仕事を楽しめと強要するハラスメントだとか。

ハラスメントに関しては正直うんざりしてるけどこれは分かる!

そもそも仕事って楽しいものですか?


たとえば、歌手とか役者とかスポーツ選手とかケーキ屋さんとか何でもいいけど、子どものころからの夢、なりたかった仕事に就けた場合は楽しめるかも知れないけれど、でも多くの人はそうではないでしょう。

もちろん、仕事を楽しめる人はそれだけで大変な才能だろうし、心の底から楽しめる仕事に就けた人は心の底から尊敬しますが。

本当に限られた一握りの人たちしか到達できない境地。

会社を創業し、成功した社長なんかはその傾向が特に強い気がするんですよね。

自分とこの従業員に対して「仕事を楽しめ!」って半ば強制する。

そりゃあ、自分がなりたかったものを行って、なりたかった地位に就けたならばいくらだって前向きに楽しめるでしょう。

でも大多数の「その他大勢」は違う。

食べていくために仕事をする。

それ以上でもそれ以下でもない。

ましてや他人から『楽しめ』と強要されるものでもない。


そんな状況下で、何でもかんでも楽しめ常に前向きであれの強要はハラスメントというかもう一種の宗教だと思いますね。

そんなん言われんでも普通に業務を遂行するわ、っていう。



・・・ええと、いつも以上にまとまりのない内容になりましたが、とにかく毎日毎日同じことの繰り返しで、仕事って本当にツライものですよね・・・ってうつむきがちな日々を過ごす方ほど本書はオススメであります。


人間って強いよね、簡単なことじゃ倒れないよね、って心の底から賛歌を送りたくなる。


次の『クラスメイトの女子、全員好きでした』も楽しみです。

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