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論理におもいやりを、おもいやりに論理を

【プロフィール】
酒井 志郎(Shiro Sakai)

ITエンジニア。C++, VB, C#などを使ったプログラミングをシステム開発会社で10年間以上経験した後、ロケットスタート(以下ロケスタ)に転職。kintoneのカスタマイズはじめロケスタのIT部分に幅広く携わる。小学1,2年をアメリカで過ごしたなんちゃって帰国子女。



エンジニアが会社のメンバーとして働くということ

コンピューターは理屈でしか動かないが、人間は自分も含めて理屈だけでは動かないし動けないのだと、ここで働くようになってから痛感するようになった。
 
学校卒業後はCADオペレーターをしていたが数年でプログラマーとして転職し、以前の職場では10年以上アプリケーションの開発に携わってきた。ロケスタに入社してからは7年目になるが、この職場ではメンバー同士のコミュニケーションがとても大切にされているし「他のメンバーと一緒に働く」という意識が何よりも大切なのだと日々気付かされている。
 
会社で行うプロジェクトはどんな小さいものであっても一人では完結しないし、逆に完結してはいけないとも思う。一人では抱えきれない重さのものであっても他のメンバーの協力を快く得られるなら一緒に運べるかもしれないし、一人で運べると思っているものでも他のメンバーに助けてもらいながら運んだほうが遥かに良い結果になる。
 
つまり他のメンバーに気持ちよく動いてもらう。自分も他のメンバーのために気持ちよく動く。そうできるならきっと仕事は楽しいものになる。
 
でも、他の人と一緒に仕事をする限り、意見の違いはどうしても生じてくるし、意見の違いはむしろあったほうがいい。自分の意見の落とし穴に気づかせてくれるのはこうした意見の違いだし、自分とは違う意見を取り入れることで新しい視点や視座が加わって自分のアイディアを深めることもできる。 

意見の違いを自分のものとして吸収する

意見の違いが顕著に現れるのは例えば一つの仕事に複数メンバーがまったく異なる立ち位置で関わっているときだ。
 
営業メンバーにとっては受注がまずは達成すべき目標だし、そもそも仕事を受注できなければエンジニアは仕事をもらえない、というのは冷静に考えれば当たり前の現実だが、営業メンバーであれば受注確度を高めるために少しでもお客さんに寄り添ったご提案をしたいと思うのは当然のことで、お客さまが短期納品を希望されていれば納期のご提案は短めになる。
 
ところが、技術的な理由でその納期が現実的にどうしても難しい場合ということがよくあるものだ。だからといって、その溝を放置したままにしておくことは会社にとってもお客さまにとってもダメージにしかならない。
 
そこで視点を変える必要が出てくる。お客さんのご要望に対して自分が最初に考えたソリューションが、本当に先方にとってベストなものなのか、柔軟に考えてみる必要があるし、もしかしたら、自分が考えたものはお客さんの本当に必要としているものとは少しずれているかもしれない。
 
大抵、幅広く考えて調査し直したり、ご提案を見直してみることで、もっとシンプルで合理的な解決策が見つかるものだ。また自分とは違う分野のノウハウを持った他のメンバーの知見を借りることで解決する場合も多々ある。そのようにして、お客さまのご要望のご予算や納期に見合った開発が可能になることは割と多い。
 
もちろん、必ずしもすべてのご要望を飲める場合ばかりではなく、ご予算や納期を調整して頂いたり、技術的観点から事前に起こりうるリスクをはっきり明確にしなければいけない場合もある。
 
それでも、営業メンバーからの「何とかできないものか?」があるからこそ、このように角度を変えて考える必要が出てくるわけであり、その後、自分が何かを設計するときにその時の試行錯誤が必ず生きてくる。
 
引き出しが増えるのだ。

コンピューターとの会話、人との会話

ところで、プログラミングというのはコンピュータとの会話のようなものだ。この会話においては理屈を通しさえすれば物事は解決する。コンピュータは理屈でしか動かないが、理屈を通せば必ず動くからだ。
 
プログラミングは、ものすごく雑な言い方をするなら、論理がすべてだ。
 
逆に論理に矛盾があるとコンピューターはいうことを聞いてくれない。論理的であることにおいて妥協を一切許してくれないのだ。そのため、プログラミングの作業のかなりの部分がデバッグ、つまりエラーの解決作業に当てられる。自分では論理的だと思って書いたプログラムの矛盾点を一つ一つ丁寧に観察しながら潰していかなければいけない。
 
裏を返すなら、論理的な矛盾点を丁寧に解決しさえすれば物事が解決する世界。
 
そこにあまりにも長い間滞在していると、人間同士のコミュニケーションの仕方を忘れかけてしまって、なんでも理屈を並べたくなることがある。
 
相手の論理の矛盾点をしらみつぶしに突き止めて、それを指摘することで自分の主張を通したくなる。でもそうやって論理を振りかざすときの自分は、必ずしも論理的なものに動かされているのではないから不思議なものである。
 
例えば、自分が自分のわがままで何かのタスクを他の人に無理やり押し付けたくなるようなときに限って、論理を振りかざしたくなるようなところが少なくとも私の中にはある。理屈に頼っているときほど感情的になっている自分はいない、というのは皮肉な事実である。 

論理的思考+アルファ

ちなみにプログラミングにおいては論理がすべて、というのは極論である。実は優しさと思いやりが必要な世界でもある。
 
プロジェクトは一人で行うものではない。自分が書いたプログラムコードは他の人(そして将来の自分)が読んだ時にも分かりやすくなければならない。そして、論理的な思考というのにもレベルがあって、抽象度の高い思考を駆使できるようになればなるほど、メンテナンスしやすいコードを書くこともできる。
 
論理的思考は磨けば磨くほど、思いやりのある方法で活用できるようになる。
 
ひとつのことを紐解くにも論理的解答がひとつであるとは限らない。複数の回路を持てるようになるなら、自分とは違う意見を掘り下げて背後にある論理を汲み取ることができるかもしれない。
 
あるいは、視座をコントロールできるなら、違った高さから物事を分析できるようになる。それは、より広い視野かもしれないし、あるいはもっと細かいデリケートな視野かもしれない。違う景色を手に入れることで、論理的思考はより生きたものになっていく。
 
このように論理的思考を磨くことはコミュニケーションにおいても強力な武器になりえるのだと、そして論理的思考は使い方を間違えると大変な失敗をすることにもなるのだと、ここ数年で本当に実感するようになった。そして対人的なコミュニケーションにおいて自分を磨くなら、それは自分が書くプログラムの質にも反映されていくに違いない。

論理のその先へ

ロケスタにはコミュニケーションの達人がたくさんいる。
 
意見がぶつかりそうになったときに、険悪な空気にならないようにしながらも、いうべきことを上手に伝えることができるメンバーがいる。人の心を動かす達人もたくさんいる。一見、論理的にはツッコミどころ満載に思えるのに、なぜかこの人のいうことなら聞いてみたいと思えるメンバーがいる。そういうメンバーは理屈で見通せる先を見ている直感の鋭い人だったりするし、何より言葉に情熱がある。
 
つまり、お互いが気持ちよく働くためのヒントがお手本として沢山あるということだ。
 
自分が相手と反対の意見を持っていて、どうしても自分の意見を相手に納得してもらう必要がある場面。理屈を並べて相手を論理的に説得しようとするよりも、もっと良い方法があると学んだのは、相手の気持ちを丁寧に扱いながら、相手が自分で納得できるように対話するのが上手なメンバーのコミュニケーションを直接見たときだ。
 
人は自分の考え方がまずは尊重された、と感じることで心を開くものだ。
 
相手の意見が正しいということをまず認めた上で、その延長線上に自分の意見を丁寧に乗せることができるなら、それは相手にとっても受け入れやすいものになる。あるいは、相手が本当は何を心配しているのかを汲み取れるなら、相手の主張とは違う提案であっても、そのことを心配する必要がないことを納得してもらえるかもしれない。
 
そのためには相手の意見の裏側にある心理や願望を的確に見極める力と、相手の気持ちに寄り添う姿勢が必要だが、そうしたことが本当に上手なメンバーがいる。そうしたメンバーたちに自分は何回も助けられてきた。
 
あるいは、例えば自分なら仕事の質に関わらず、まずは良いところを褒めてもらえることで仕事のクオリティを上げていくためのモティベーションを得る。また、仕事の大小に関わらず感謝されれば、それもまた嬉しい。本当に気持ちよく仕事ができる。
 
では、自分は他のメンバーの仕事に対してどのように接しているだろうか。
 
自分が感謝されたり評価してもらえたりすることが本当に多いこの職場においてはまた、こうしたことも鋭く自問自答させられるものだ。自分は他のメンバーの仕事を心の底から評価しているだろうか。それを直接言葉にして伝えているだろうか。小さな「ありがとう」が言えているだろうか。
 
コミュニケーションにおける小さな改善の積み重ねが、結局はロケスタにおいて働くことの僕の大きなしあわせに繋がっていく。
 
お互いに動かしあい、動かされあうのを体感すること。その力学を肌で感じること。
 
そうした体験は間違いなく自分がこなすタスクすべてに体温を持たせて、意義を与えてくれる。それは、自分がこなす仕事のひとつひとつが、ただ単に職務義務を果たすということにとどまらず、他のメンバーの、そしてお客さんのしあわせへと直結し得るものなのだと、そして、そのしあわせは、結局は自分のしあわせとして返ってくるものなのだと、この職場が教えてくれるからだ。


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