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斜路をすり抜けて

先日、ゆるい坂道が折り返し状になっている、いわゆるスロープを歩いて下っていたが、丁寧に歩くことより急ぎたくなった僕は手すりのすき間から身を乗り出し、50センチほどジャンプして下の段に降りた。

たかだか50センチだと思っていたが、後になって考えてみればこれだけの段差を降りるのは久しぶりで、何故か僕は肩を痛めた。

人間が50センチ落下するとどれだけのGがかかるのか僕にはよく分からないし、着地には成功しているので足首は無事、なのに肩に負荷がかかり、痛い。

しばらくの間肩を回したり、さり気なく胸を張って筋を伸ばしながら歩いているうちに痛みはすぐに引いた。

よくよく考えれば、こんなことをしてすぐ回復できるのもある程度の身体年齢までなんだろう。

2020~2022までの僕の祖母は、歩く際に歩行補助器のようなものが必要ではあるが、それなりに元気に過ごしてくれていた。

だが昨年末、その歩行補助器を使うことを面倒に思ったのか、補助器なしでトイレに立ったら転んで脚の骨にヒビが入ってしまった。

良くも悪くも痛みが分かりにくい身体ゆえ、本人はなんともないと主張していたが、同居している家族が病院に連れて行ったらヒビという名の骨折が判明した。

かかりつけの病院は医療体制逼迫の影響で病室に空きがなく入院を断られ、少し離れた別の病院に。

入院が遅れ、知らない病院で知らない主治医に身体を委ね、手術の日程も遅れ、その後の治療も遅れ、そして家族は見舞いにも行けず。



僕がしたことと、祖母がしたことは大して変わらない。

“ こっちの方が手っ取り早いから、これを選んだ。”

“ その結果ちょっと痛みを伴った。”

性格がよく似た血の繋がってる家族だと笑い合えたら良いのだが、身体年齢の違いによって格差が生まれ、世の中の問題が回復を遅らせ、祖母が自宅にいない暗くて寂しい2023の幕開けだった。



かつて会社経営をしていた祖母は、頭の中にビジネスマンの基礎が入っており、現在はそれのほとんどを忘れてしまっているものの、僕がうまく誘導すれば思い出してスラスラと話すこともある。
(「聞き方が9割」を参考にしたら本当に成功するので驚いている。)

普通に、ビジネスマンの先輩として参考になる話もあれば「あの時代に女性が会社の一番上に立っていた」、実は凄いおばあちゃんなのだ。

どうしてもっと早く祖母にこの辺の話を訊ねなかったのだろう。

後悔は当然のように先には立たない。

祖母は病院からリハビリ施設へ移り、きっとあと少しで自宅に帰って来ることができる。

できれば早く直接会って話をしたいが、またまだこんな世の中なので電話でも良い。

祖母が自宅の椅子にゆったり座ってくつろいでいてくれればあとは何でも良いんだ。

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