【掌編小説】 にな

スマホをスクロールしながら
今日はどんな人がいるのか
半分諦めと
半分期待の
入り混じった気持ちで
マッチングアプリと向き合う

今年で32歳
自分では
まだまだ若いつもりだが
世間はそうは見てくれないようだ

周りも
結婚していく人も増え
親や親戚からのやんわりとした
圧も感じる

結婚するかは
別として
相性のいい
パートナーが欲しい
と思っているのも事実だ

始めて2ヶ月

焦ってるつもりはないが
なかなか
理想通りとは
いかない

あまりピンとくる人には
巡り合えていない

日常生活では
交わることのない
人達を(距離や年齢など)
知ることができるのは
興味深いが

いくら
アプローチされても
乗り気になれなかったり
反対に
いいなと思った人からは
振り向いてもらえない

こんなアプリで
互いにいいと
思い合えるのは
どれくらいの
確率なのか？

なりふり構わず
いいねしてる人や
職業や年収を
偽ったり
顔写真を載せていなかったり
原型を留めないほど
加工してる人も
いるらしい

わたしなら
実際に会ってから
がっかりされて
ダメになるなら
会う労力が
惜しいと思ってしまう

それとも
会えば
詐称を
ひっくり返せるだけの
話術なり
魅力があるのだろうか

最初は
面白がって
いろんな人の
プロフィールを
眺めていたが

最近は
それすらも
面倒になってきた

かといって
日常での
出会いなど皆無なので

諦めきれず
続けているのが
実情だ

今日も収穫なしか
とため息とともに
閉じかけた時

いいね
の通知が入った

第一印象は
悪く無い

年齢も35歳
いい感じ

趣味や興味の一致も
結構ありそうだ

マッチングしない事には
何も始まらないので
とりあえず
いいね
返そうかな

何だか
久々に
ドキドキしてる
自分がいる

まずは
メッセージの
やり取りをして
気が合えば会いたい

何を着て行こう
なんて
気が早いか

会ってみなくちゃ
わからないことは
たくさんあるが

まずは
会ってみたいと
思える人かが重要なのだ

ひとり
思いを巡らせているうちに
お相手から
新着メッセージが届いている

これから始まる
恋の予感に
ワクワクしながら

どうか
素敵な出会いになりますように

と願わずには
いられないのだ