レターパックや与謝野晶子に困惑している人に贈るMisskey(ミスキー)の指南
シンプルにMisskeyの使い方を知りたい方は「最低限知っておきたいMisskeyの機能」まで読み飛ばすことをおすすめする。
はじめに
イーロン・マスクがTwitterを買収し、Twitterで様々な変化が起き始めてから5ヶ月が経過した。Twitterでの居心地が悪くなった、Twitterでアカウントが凍結された、イーロン・マスクが信用できないといった理由で、「新天地」を求めて多くのユーザーが他のSNSに移動するようになった。一時期は分散型SNSである「Mastodon(マストドン)」が注目され、海外では大手ニュースメディアや、Webブラウザの「Vivaldi(ヴィヴァルディ)」が「サーバー」(後述)を開設するなど、盛り上がりを見せていた。
そんな中、マストドンと同じ仕組みを持つ分散型SNSの一つである「Misskey(ミスキー)」の知名度が上昇しており、多くのユーザーがMisskey最大のサーバーである「Misskey.io(ミスキー・アイオー)」へやってきている。現代的なユーザーインターフェイス、リアクション機能、Misskey特有の文化などが魅力的であるといった口コミが広まった結果、Misskey.ioの登録者数は2023年2月以降とてつもない勢いで増加し、2023年4月19日現在、Misskey.ioの登録者数は約16万人を数える。
しかし、筆者がMisskey.ioでしばらく観察した所、独自の機能や文化に慣れないユーザーや、操作方法がよく分からないまま登録したユーザーも多く見受けられた。そこで本稿ではMisskeyを利用する上で最低限知ってほしい要素をいくつか紹介し、これからMisskeyを始めたい方への指南書を記すこととする。
Misskeyは単一のSNSではない
Misskeyについて語る前に、分散型SNSについて理解する必要がある。筆者は以前に同じ分散型SNSである「マストドン」の仕組みや使い方について記事を書いた事がある。その際に使用した言葉を改めて記すならば、分散型SNSとは、
と言えるだろう。
一般的なSNSやWebサービスは巨大なSNSに大勢の人間が集い、企業や法人が定めた利用規約の下に、運営者や運営企業がユーザーを一元的に管理・監視する形態が取られ、「中央集権型」と呼ばれる。大抵は一つの巨大なサーバーにアカウントや投稿などのデータが集積され、このサーバーが停止することを俗に「鯖落ち」と言う。
一方Misskeyやマストドンなどの分散型SNSは、Twitterなどに比べて比較的小さな規模のSNSが、ActivityPubと呼ばれる技術を用いて相互接続されており、図で表すと以下のようになる。
分散型SNSの利点は、例えばAというサーバーに登録していながら、Bというサーバーとやり取り出来る事や、Aというサーバーが停止しても、Cというサーバーに移動してBというサーバーとやり取りを行えるといった、冗長性に近いものが挙げられる。運営も殆どの場合は個人が行っており、利用規約もサーバーによって内容が異なる。但し、基本的にはサーバーごとにアカウントを登録する必要があり、Aというサーバーにあるアカウントを用いてBというサーバーから投稿等を行うことは出来ないので注意が必要だ。
サーバーはそれぞれテーマや独自の文化を有しており、「ゲーム好きの集まり」「クリエイターの集い」「二次元好きのサーバー」といったテーマが定められている他、「すあま」「与謝野晶子」「レターパックで現金送れは全て詐欺です」といった文化やミームもサーバーによって異なる。
「Misskey」は単一のSNSではなく、あくまでしゅいろ氏が開発した分散型マイクロブログのソフトウェアの一つであるため、Misskey.ioで展開されている光景がMisskeyの全てというわけではない。つまり、「Misskeyでは「レターパックで現金を送れ」と言われる」という表現は間違いであり、厳密には「Misskey.ioというサーバーでは「レターパックで現金を送れ」と言われる」と表現するのが正確であると言えよう。
本来Misskeyやマストドンは多くのサーバーで相互接続し、それぞれのサーバー間でやり取りするのが理想的なのだが、分散型SNSがまだ定着していないために「Misskey」という単語だけが独り歩きしていたり、Misskey.ioのような巨大なサーバーのネームバリューが大きくなったりするなどの理由で、特定のサーバーに多くのユーザーが一極集中してしまう事もある。
最低限知っておきたいMisskeyの機能
前置きが長くなったが、ここからはMisskeyを利用する上で最低限知っておきたい機能や用語を紹介していく。
様々なタイムラインと公開範囲
Misskey.ioに登録したばかりで誰からもフォローされていないにも関わらず急に「ようこそ」や「レターパックで現金送れ」と送られるのは、デフォルト設定では自分の投稿が「ローカルタイムライン(LTL)」に流れているからだ。ローカルタイムラインとは、同じサーバーに登録しているほとんど全てのユーザーの投稿が流れてくるサーバーである。サーバー内での投稿が活発であるほどローカルタイムラインは高速で流れ、Misskey.ioのように常に数千人単位のユーザーがオンライン状態になるような大規模サーバーでは、深夜早朝でないと投稿が追いきれないことも少なくない。
ローカルタイムラインは性質上、見ず知らずのユーザーの投稿が大量に流れてくる。見知ったユーザーのみ流れてくるタイムラインを見たい時は、「ホームタイムライン(HTL)」を見るとよいだろう。当然誰かしらフォローする必要は生じてくるが、穏やかにMisskeyを利用したい場合はホームタイムラインを見ることをおすすめする。
この他、ホームタイムラインとローカルタイムラインの内容を合わせた「ソーシャルタイムライン(STL)」、自分のいるサーバーと接続されている他のサーバーの投稿も流れてくる「グローバルタイムライン(GTL)」などのタイムラインが存在する。
これらのタイムラインとうまく付き合うには、「公開範囲」を有効に活用することが必須になってくる。公開範囲は投稿時に投稿フォームから設定でき、設定画面からデフォルトの範囲も設定可能だ。
公開範囲は4つあり、それぞれ機能が異なる。
パブリック:LTLとHTL、STLとGTL全てに流れる。
ホーム:HTLのみに流れる。
フォロワー:フォローしないと見ることが出来ない。HTLのみに流れる。
ダイレクト:メンションで指定した相手のみ見ることが出来る。DM機能はこれで代替する。
自分の投稿をローカルタイムラインに流したくない場合は、公開範囲を「ホーム」に、アカウントを「鍵垢(非公開アカウント)」として運用したい場合は、設定から「プライバシー」を開き「フォローを承認制にする」にした上で、「フォロワー」に設定すると適用できる。フォローを承認制にしても、公開範囲をパブリックやホームにして投稿出来る点はTwitterでの鍵垢と異なっている。
また、下ネタなど不適切な単語を含むノートは公開範囲が自動的にホームに切り替えられる仕組みになっている。具体的にどういった単語が不適切であるかはサーバーによって設定が異なる。これらの公開範囲を状況に応じて使い分けることが重要だ。
リアクション機能とカスタム絵文字
絵文字リアクション機能はMisskeyの目玉機能の一つであるが、類似の機能はLINEなどにも存在する。「偉業」「レターパックで現金送れ」といったスタンプのようなものを「カスタム絵文字」と呼び、これはサーバー内で使用できる独自の絵文字である。
リアクションを行う際の便利な設定として、よく使う絵文字を登録する機能や、ノート上で右クリックするだけでピッカーを開く機能が存在する。歯車のマークの設定画面を開き、前者は「リアクション」から、後者は「全般」から設定できる。
絵文字リアクションは大変便利であり、「おはよう」「がんばれ!」「ただいま」「おやすみ」といった日常的な挨拶や、「⭐」「👍」「❓」などの記号、「わかる」「それな」といった共感の他、「レターパックで現金送れ」といったミームも送られてくる。戸惑いを感じる要素でもあるが、慣れれば「いいね」以上に様々なニュアンスのリアクションをやり取りすることが出来る(なお「レターパックで現金送れ」には特に深い意味はない)。もちろんリプライやメンションの機能やDM機能に準ずるものも備わっているので、絵文字リアクションで伝えきれないような投稿などはそちらを利用するとよいだろう。
カスタム絵文字はノートでも使用することが出来る。コロンに挟む形で書き、例えば「偉業」と打ちたい場合は「:igyo:」と入力、「おはよう」と入力したい場合は「:ohayou:」と入力すれば投稿時に反映される。ちなみに「レターパックで現金送れ」は「:send_money:」である。
カスタム絵文字はサーバーによって登録されているものとそうでないものがある。すなわち、「レターパックで現金送れ」はどのMisskeyサーバーにもあるわけではなく、むしろ大多数のサーバーには存在しないため、実質Misskey.ioでしか使えないカスタム絵文字だと思っていただいて問題ない。どのようなカスタム絵文字が登録されているかを確認するには、画面左上のサーバーのロゴを押して出現するメニューから、「カスタム絵文字」を開くと登録されているカスタム絵文字の一覧を見ることが出来る。使いたいカスタム絵文字を探す際に有効だ。
ちなみに、マストドンなどの絵文字リアクションに対応していないサーバーに向けて絵文字リアクションを行うと、相手側には「お気に入り登録」として通知される。逆に、絵文字リアクション非対応のサーバーからお気に入り登録を行うと、Misskey側ではほとんどの場合リアクションは「❤️」に変換される。また投稿時に「リアクションの受け入れ」を設定すると、リアクションをカスタム絵文字ではなく「いいね(❤️)」に置き換える機能も備わっている。
閲覧注意機能を使いこなそう
Misskeyにはイラストレーターも多く登録している。Misskeyに来たばかりのイラストレーターからよくある質問が、「R18指定のイラストは上げてもいいの?」というものだ。答えは「条件付きで可能」である。その条件とは、「NSFWフラグやCWフラグを付加していれば許可」というものである。
「NSFW」とは、「Not safe for work(職場で見ない方が良い)」という意味の機能で、これを設定する基準としては、アダルト系の画像はもちろんのこと、広義には薬物や犯罪に関する内容、また一部では水着や露出の多い衣装、際どいコスプレなどにも適用される。
「CW」とは、「Content warning(内容に関する注意)」で、こちらは画像や動画ではなく文章に対する閲覧注意機能で、公開されたばかりの映画などのネタバレ防止に使える他、NSFWの基準に当てはまるような内容の文章(猥談など)に対するNSFWの適用に使用できる。
これらの設定の基準を一言で言ってしまえば「親に見せられない画像や文章」が対象であると言っても過言ではない。またMisskey.ioでは画像や動画の他、文章や音声にもこの基準が適用され、内容によってはAIが自動でNSFWを付けてくることもある。詳しい基準は各サーバーのガイドラインを参照していただきたい。
Misskey.ioのNSFWガイドライン:https://support.misskey.io/hc/ja/articles/6657417016463
ではここからは閲覧注意機能をどのように使うのか説明する。
これらの閲覧注意機能を適切に使用しない場合、ローカルタイムラインに投稿できなくなる「サイレンス」の処置が下されたり、最悪の場合アカウント凍結に至ることもあるので注意が必要だ。
その他覚えておきたい機能
リアクション機能や公開範囲、閲覧注意機能など様々な機能が備わっているMisskeyであるが、この他にも多数の機能が備わり、Twitterやマストドンなどの他SNSと異なる部分も多く存在する。
猫モード
リノート解除方法と投稿の見方
Twitterで言うリツイート、マストドンで言うブーストにあたるリノートは、解除する場合にはノートの右上に表示される「たった今」や「1分前」などの時刻表示を押して行う。リノートボタン(左から二番目のボタン)では、もう一度リノートされるだけになってしまい解除ができないので注意が必要だ。
Misskeyアプリのインストール方法
Misskeyにはいくつかのサードパーティアプリが存在するが、筆者のおすすめは「PWAアプリ(プログレッシブウェブアプリ)」の活用だ。スマートフォンのWebブラウザからMisskeyを開くと、「Misskeyをホーム画面に追加しますか?」というダイアログが出現する事があるはずだ。これを利用すると、ホーム画面にMisskeyのショートカットを追加することができ、厳密にはアプリではないが、ストアアプリに近い感覚で使用することが出来る。
なお、このアプリはサーバーごとに追加する必要があり、PWAアプリを追加する場合は登録しているサーバーの数だけ追加する必要がある。
検索機能の使い方
実はMisskeyやマストドンではTwitterと同じ感覚で検索機能を使うことが出来ない。Misskey.ioなど一部のサーバーは検索機能を強化しているが、検索機能はTwitterほど使い勝手がよくないと考えたほうがよい。幸いハッシュタグ検索はどこのサーバーでもある程度は使えるので、そちらを活用するのがよいだろう。
Twitterから移行する形でMisskeyを始めたユーザーの中には、知り合いを追う形で始めるユーザーも多いだろう。相手方のユーザーIDが分かっている前提になるが、知り合いを探す場合は「照会」機能が便利だ。他のサーバーのユーザーも検索できる。
この他にも、Misskeyには本稿で紹介しきれないほどの多数の機能が備わっている。詳しくはMisskeyのヘルプを参照して欲しい。
あとがき
この記事を書く前に、Misskeyの使い方を下調べしてから登録したかという内容のアンケートを取った所、下調べせずに流行っているからという理由で登録したと思われるユーザーが多く見受けられ、Misskeyは「とりあえず登録して使って慣れる」だけでは使いこなせない要素の多いSNSであるため、本稿を記すに至った。
本稿がよいMisskeyライフを送るためのテキストとなることを切に祈るばかりである。
マストドンもどうぞ。少し古い内容ですが一部の内容は本稿と共通しています。
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