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物を大切にすると起こること

高橋久美子さんのエッセイ『暮らしっく』を読むとめちゃめちゃ癒される。
転職直後で、慣れない環境に疲れきった脳みそにめちゃめちゃ沁み渡る。

「暮らしっく」とは、「暮らし」と「クラシック(古風)」を掛け合わせた言葉だそう。

本の中では、あるときは庭で土いじりをして、またあるときはご近所さんちの梅を拾い、そしてまたあるときは旬の野菜で素朴で味わい深い料理を作る高橋さんの様子が描かれている。

「丁寧な暮らし」が流行る昨今だけど、高橋さんの暮らしは見せるための丁寧さではない。

物を大切にするということは、人との繋がりを大切にするということだと優しく教えてくれるエッセイ集だ。

それは、曽祖母の浴衣をリメイクして感じる家族との繋がりだったり、庭の植物たちを交換して感じる東京のご近所さんとのお付き合いだったりする。

好きだったのは、家の前に「ご自由にどうぞ」と置いていたリースを、散歩中の幼稚園児とその先生が持って帰ってくれた話。自分でも予想外すぎるが、思いがけず涙してしまった。
なんでもない日常の一コマなのに、知らない人との繋がりがとても胸を熱くする。

もう自立したんだから、周りに迷惑かけず生きていかなきゃ。
もし身内に何かあったら、身内でなんとかしなきゃ。

そうやって知らず知らずのうちに気張って生きてきたんだと思う。こういう助け合いとか心の交流に飢えてて涙出ちゃったんかな。

また、物を大切にすることは余裕を持って生きるということでもある。

この本を読んでる途中、芸人で清掃員をやっているマシンガンズ滝沢さんの記事にたまたま目が留まった。

清掃員の視点からお金の話を語ってもらう毎日新聞の企画。
「どうせお金持ちはたくさん買ってたくさん捨てるんでしょ、、、」と思いきや、実はその逆なんだそう。

お金持ちエリアのゴミはとても少なくて、庶民エリアはゴミを買ってるんじゃないかってくらいゴミがたくさんあるんだって。

これを読んだとき、高橋さんの生き方にも通ずるー!と思った。
滝沢さんは「お金持ちはゴミが少ない!」って言い方をしてたけど、気持ちに余裕があって豊かな人生を歩んでる人は、自然と物を大切にするマインドが身についているんだと思う。お金持ちの人に、もしかするとそういう人が多いだけで。

思い返せば、私の祖母は何十年も前に買った物や服をずっと大切に使ってる。「安物買いの銭失い」が口癖だった。
セールも上手く使って、本当に良い物や気に入った物だけを買い、ながーく使うのが彼女の生き方。いや、昔の人の生き方?
祖母の好きな物で溢れた家は、訪れると時間の流れが穏やかに感じる。
何が必要で何がいらないか?何が効率的で何が非効率か?判断を求められて毎日ワタワタする時間が存在しないのだと思う。


20代も後半に入ってもう良い大人だけど、正直ファストファッションや100均のアイテムにまだ頼らざるを得ない。忙しすぎて、ゆっくりご飯を作れない時もある。

でも、ボーナスが入ったらちょっとずつ自分の好きなものを増やしていってもいいんじゃないだろうか。
服を捨てる前に、何かに使えないかな?誰かもらってくれないかな?と考える余裕を持ってもいいんじゃないだろうか。

「捨てなくてもいいよ。物が溢れててもいいよ」と語りかけてくれるような高橋さんの言葉が優しい。

気持ちに余裕がなくなったら、また本を開いて高橋さんの生活を覗き見したい。
忙しすぎる毎日を、できるだけ深くゆっくり味わって生きていたいから。

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