こめだわら

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こめだわら

出来れば毎日小説を更新したい人です。小説(基本的に1分程度で読めるショートショート)を投稿しています。 スキやコメントいただけるとすごくうれしいです。 酷評でもよいのでコメントいただけると励みになります。

マガジン

  • ショートショート集

    一つ一つの小説が1分あれば完読できるショートショート集です。 ジャンルは青春・恋愛・SF・ホラー・サスペンスなど多岐に渡ります。 少しでもいいので見て行ってください。

最近の記事

精霊馬 ショートショート34

八月半ば、足の生えたきゅうりやなすを玄関先に置いた。 今年で五歳になる娘は不思議そうに見ている。 「お父さん、これなに?」 「これは死んだご先祖様が帰ってくるための乗り物だよ。」 そもそもご先祖様の意味も娘には分からないだろう。 「お父さん、クルマで迎えに行ってあげなよ。」 「そうしてあげたいけど、お父さんはご先祖様がどこにいるのか知らないから、このお馬さんに迎えに行ってもらうんだよ。あと、こっちは牛さんで天国に送り返しあげるの。」 精霊馬を作り出したのは二年前、父が亡くなっ

    • オンライン墓参り ショートショート33

      美雪と母の時子はこれから墓参りを行う時間だった。正確には、私達の先祖が眠っている墓掃除をしている坊主を映す映像を見る時間だった。 政府はコロナ感染拡大を防ぐため、外出自粛を促しており、お寺はご時世に乗っかり、オンライン墓参りなる事業を行っていた。墓地の所有者に代わって住職が、墓の掃除を行うというものである。掃除の際は中継放送を行い、リアルタイムで見れなくても、アーカイブが残るようになっている。 このオンライン墓参りを実施しているのは時子の体調がよくないためだった。墓地も家か

      • 生き様 ショートショート32

        彼は自分の欲望に赴くままに生きる様を教えてくれた。 彼は恥ずかしげもなく、好きな時に好きな人に甘えることで相手も喜んでくれることを教えてくれた。 そんな彼はもういない。 彼は普段はクールだけど、私が寂しい時、辛い時にそっと寄り添ってくれる。 彼は他人に厳しかっったが、女、子供には優しかった。 そんな彼はもういない。 私のせいだった。私の不注意で、私の傍から彼はいなくなってしまった。 彼はベランダから飛び降りた。 それから半年後、彼は姿を現した。ピンピンとしており、玄

        • カンペちゃんの指示は絶対です①

          「ここでボケて!」 そんなカンペを出す女の子が私の目の前にいる。 今は私が勤める化粧品会社の新企画のプレゼン中である。 社長も出席しており、新企画が通るか通らないかの大事な局面である。 そんな局面で、この場に似つかわしくない白髪眼鏡、身長150センチ童顔の女の子が「ボケろ」というカンペを出していた。 一丁前にプロデューサーのようにカーディガンを首に巻いているのが少し腹立たしい。 私はボケろのカンペを無視し、新商品のプレゼンを進行させ、無事に終了させた。 私は須藤真紀、今年で

        精霊馬 ショートショート34

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        • ショートショート集
          20本

        記事

          色が奪われた世界 ショートショート31

          今年で五十歳になった。 半世紀を生きて、突然世界から色が消えた。 何かを患ってもおかしくないとは思っていたが、色覚異常を起こすとは思わなかった。 突然の出来事だったが、生活する上で困ることはあまりなかった。 信号機も三ヵ所の光の点灯を頼りに車の運転をすればいい。普段通りに通勤し、仕事にも支障はでていない。 しかし、地味に困ったのは、焼肉の時に肉が焼けているのか分からなかったときだ。 危うく半生の肉を食べて、腹を下すところだった。 そんな私に再度、色のある世界を与えてくれたもの

          色が奪われた世界 ショートショート31

          シリアルキラー ショートショート30

          何十人も殺害した殺人鬼が捕まった。 殺人鬼は華奢な少女であり、看守を殺害し、脱獄を図ろうとしたが失敗。 懲罰房に入れられた。 それから月日は流れ、この殺人鬼は改心し、出所できた。 改心した犯人は世間の注目の的となり、ライブビューイングもできる講演会が開かれることになった。 殺人鬼は小さい頃に親から虐待をされ、罵詈雑言を浴びせられながら生きてきた。 壮絶な人生と犯行に至るまでの心境、狂気は誰にでも芽生えることを語る。 「ご清聴ありがとうございました。」 会場には、たった一

          シリアルキラー ショートショート30

          弱肉強食 ショートショート29

          「こんにちは、宅急便です。」 玄関先で宅配会社の制服を着た男性が立っていた。 「はーい。」と返事をし、玄関を開けると男はナイフをこちらに突き付け、土足で家に入ってくる。 私は泣きながらリビングまで後ずさる。 「金を出せ、早く!」 怒鳴る男に追い詰められ、鞄から財布を出し、現金を差し出す。 それをひったくり、家の中を物色しようとする男。 男が私に背を向けた瞬間、バチバチとした音が男を襲う。 男は体を痙攣させ、倒れる。 「この時を待ってました。」 手に持ったスタンガンを鞄に戻

          弱肉強食 ショートショート29

          忘却人 ショートショート28

          「今までの記憶がないんだ。だから記憶を取り戻すための旅をしているんだ。」 私は寝ると全ての記憶を忘れる旅人と食事をしている。レストランで偶然相席になった旅人のカルマに衝撃を受けている。 なぜ、そんなことになったのか。それは当の本人に聞いても理由は分からなかった。もちろん記憶がないので当たり前だが。 呪いなのか魔法なのか分からないが、そんな残酷な枷を掛けた人が憎い。しかし、私には解決出来るすべはなく、明日には忘れられるであろう彼とはさよならをした。 私自身も旅人であり、偶然に

          忘却人 ショートショート28

          殺されたのは誰か ショートショート27

          これは私が体験したお話です。 当時の私はタクシードライバーを始めて半年、ようやく大阪の街路に慣れ、初めての「おばけ」と呼ばれる客を乗せることになりました。 ちなみに「おばけ」はタクシー業界では長距離利用客のことをそのように呼んでいます。 その日のお客さんは二十代後半くらいの男性でした。泥酔されており、お客さんの友人に担がれておりました。その友人はタクシーを呼び、お客さんだけを乗せて去りました。お客さんは意識があるようでしたが、ぐったりしておりました。 住所を伝えられる程度の意

          殺されたのは誰か ショートショート27

          手紙 ショートショート26

          「親愛なるあなたへ。  あなたがこの手紙を見る頃には、私はあなたの前にいないでしょう。 私は今の自分の才能に失望しました。誰もを魅了する最高の役者になりたかった。目指すべき場所を見失った私は、あなたの前からいなくなることを決意しました。 何年も多くのアルバイトを掛け持ちし、空いた時間は役者演技の練習に打ち込みました。 周りにも役者を目指す同志がいましたが、気づけば、私の周りからいなくなっていました。 そして、私が大舞台に立つことはなかったです。鳴りやまない拍手も、声援を受ける

          手紙 ショートショート26

          ピアニストの苦悩 ショートショート25

          世界中に愛されたピアニストである私がスランプに陥った。 数々のコンクールで受賞し、「この時代を牽引するピアニスト」と雑誌でも紹介される程度には世間に知られている。 そんな私が弾けないわけではないにせよ、以前のように人々を魅了し、思わず聞き入る音を奏でられなくなってしまった。 通院、検査もしたが、身体的には問題がなかった。 練習の際、私は周囲の音に苛立ちを覚えており、これが原因だと感じた。 出来る限り消音の中で練習をするように心がけた。 音が少ない中での練習は功を奏し、スラン

          ピアニストの苦悩 ショートショート25

          兄弟 ショートショート24

          「我ら、兄弟の契りを結び、共に助け合い、成長していこうではないか!」 兄さんが声を上げる。この場には自分を含め、兄さんと二人しかいない。そして、僕と兄さんは血のつながりのある兄弟であり、契りを結ばなくても兄弟である。 兄さんのお酒を酌み交わす挨拶だったので、軽く流して乾杯した。 少し残念な兄さんだが、僕は尊敬はしている。兄さんは正義感が強く、僕が小さい頃はよくいじめっこから守っててくれていた。 お互い成人になり、家を出て久々に山でキャンプをしていた。 「兄さん、居酒屋の調子は

          兄弟 ショートショート24

          人類との聖戦 ショートショート23

          一月二六日 我々は一週間後に向けてウォーミングアップを始めていた。 人類と我々の決戦の日を一週間後に控えていたからだ。 我々は棍棒、人類は豆を武器に戦う祭り、そう節分である。 我々の村と近隣の人が住む村にて、毎年節分の日になると戦っていた。 我々、鬼たちのコンディションは良好。あとは決戦の日を待つだけである。 二月二日 12時 鬼族の族長へ、近くの農村の村長からの電話でのやりとり。 「こんにちは、鬼族族長です。」 「こんにちは、村長の渡辺です。」 「どうも、お世話になってお

          人類との聖戦 ショートショート23

          コンティニュー ショートショート22

          「疲れた、、」 最終列車を待つホームで口から漏れた。二十五歳の私はそうぼやくと待っていた電車はホームに到着する。すっと空いたドアから人は下りず、私は乗り込んだ。 乗車率は空いている座席が半数くらいだ。私は空いている席に座ると、隣に60代くらいのサラリーマンが花束を抱えて寝ていた。 数駅先で、ほとんどの乗車客が降りていく。先程のサラリーマンも寝過ごしかけたせいで、慌てて降りていった。 一枚の封筒を落として。 私は封筒を拾いに行く間に、ドアは閉まる。どうやら手紙のようで、封は切ら

          コンティニュー ショートショート22

          冷蔵庫には幸せが詰まってる ショートショート21

          こんにちは、冷蔵庫です。 先輩から仕事を引き継いで早十三年。私は田中家の食品衛生管理の職に携わってきました。 先代の冷蔵庫さんは十六年も働いていたそうです。いやぁ、頭が上がりません。 そんな先代からの引継ぎも兼ねれば、二十九年分の田中家の歴史を知っています。 もうすぐ私の役割も終わり、この家の歴史も同時になくなります。私で最後となります。せっかくなので、私語りという田中家に歴史を聞いてください。 先代は田中清さんと陽子さんの新婚生活と共にこの家にやってきました。それはそれは

          冷蔵庫には幸せが詰まってる ショートショート21

          魔法少女 ショートショート20

          「大人になったら魔法使いになるの。」と意気込む姪っ子。 最近はよく実家に帰るのだが、玄関で姪っ子が待ち構えている。 そよ風も起こせない軽いプラスチックのステッキを私に振りかざす。 見えない魔法で私は後ろに転ぶことにしている。 ちゃんと転ばないと姪っ子が怒るからだ。 帰り際、「指切りしよう、また来てね。」 そういって姪っ子は私に笑顔を向けてくる。 「また来るよー。」 指切りした後、自分の家に帰る。 おかしい、最近よく実家に帰りたくなる。 心当たりはある。姪っ子との指切りだ。

          魔法少女 ショートショート20