精霊馬 ショートショート34
八月半ば、足の生えたきゅうりやなすを玄関先に置いた。
今年で五歳になる娘は不思議そうに見ている。
「お父さん、これなに?」
「これは死んだご先祖様が帰ってくるための乗り物だよ。」
そもそもご先祖様の意味も娘には分からないだろう。
「お父さん、クルマで迎えに行ってあげなよ。」
「そうしてあげたいけど、お父さんはご先祖様がどこにいるのか知らないから、このお馬さんに迎えに行ってもらうんだよ。あと、こっちは牛さんで天国に送り返しあげるの。」
精霊馬を作り出したのは二年前、父が亡くなっ