衣服標本家:長谷川

ガラスのない美術館「半・分解展」を主宰 フランス革命から第一次世界大戦の衣服を分解し、…

衣服標本家:長谷川

ガラスのない美術館「半・分解展」を主宰 フランス革命から第一次世界大戦の衣服を分解し、100年前の「感動」を100年後に伝えるために生きてます

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  • 半・分解展の声

    半・分解展に足を運んでくださった皆さまのnoteをまとめています。

最近の記事

パタンナーとして独立した日のことを思いだして・・・

「衣服標本家の長谷川です」 と、自信をもって名乗ることができるようになった今、改めてパタンナーとして独立したときのことを書いてみる。 (正確には、私の仕事スタイルは「モデリスト」だが、便宜上パタンナーとする) 今回は、技術職が独立をするときに、必ず付きまとうであろう「設備投資」に関して記す。 なにを揃え、なにを省くことができるのか?ひとりのパタンナーの実体験をのこす。 独立を考えている方の参考になれば幸いだ。 27歳、独立。プロッターは見送った まず私の場合、カッテ

    • 技術ではなく、言葉で

      医療用ガウンを縫う人、マスクを縫う人 アパレルに携わる技術職のひとたちは、それぞれみんな自分にできることをやっている 私は、なにができるだろうか 私は「対話」することを始めた 【学生の13人に1人が退学を検討している】というニュースを目にしたとき、私は「ものづくりの未来を担う、技術職を目指す学生たちの力になりたい」と強く思った 私は、全国を巡回する半・分解展をはじめ、大学や専門学校でおこなう講義などで学生と触れ合う機会も多い 助けたいひとたちの顔が、鮮明に浮かんだ

      • 技術をふかめ、思考をめぐらし、感動をつたえる

        私のしごとは「衣服標本家」だ 旧き衣服を分解して「衣服標本」をつくっている 昆虫の標本が、虫から洋服に変わったものだといえばイメージしやすいだろうか ただサイズは、昆虫標本の何十倍もおおきいけれど これは約250年前のフランス貴族が着た「アビ・ア・ラ・フランセーズ」の衣服標本だ フランス革命が起きるより、ちょっとだけ前の服になる 私は、標本をつくることで、美の根源をさぐっている 「なぜ、美しいのか?」を言葉と構造で説明したいからだ 衣服標本のパーツひとつひとつは、すべて

        • わきの下から考えるZOZOオーダースーツ

          ゾゾスーツで採寸し、注文したオーダーメイドスーツが届きました。 このスーツをどう視るか? 私は、ひとりの技術者として向き合います。 この投稿では、目に見えるデザインには迫りません。 言葉では表しにくい抽象的な感覚を言語化し、この投稿をもって読む人に「着心地」を体感してもらうのが目的です。 私が技術者としてゾゾのオーダーメイドスーツに最も期待したのは「わきの下がピタリとはまっているか?」という点です。 わきの下なんて滅多に見えませんし、多くの人にとってそれは気にも留めな

        パタンナーとして独立した日のことを思いだして・・・

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        • 半・分解展の声
          6本

        記事

          無駄づくり

          現代では完成品よりも、未完成品がなんらかの目標に向かって変化していく過程にこそ共感と支持を得られるのではないか この言葉は、中野香織先生が日本経済新聞に半・分解展を寄稿してくださった際の一文です。 全文はコチラから。 この傾向は、今日日あたりまえの価値観となり可視化されています。 クラウドファンディングはその典型ですね。 ここで私が注視するのは「未完成品がなんらかの目標に向かって変化していく過程」という部分です。 未完成品という一見不確かなものに、どのような価値を見出す

          ググりタグる長谷川

          Instagramなら「#半分解展」 Twitterなら「半分解展」や「分解展」 で検索すると、来場者のリアルな感想を読むことができます。 SNSにシェアしてくださった皆さま、本当にありがとうございます。 広告宣伝費を一切掛けていない半・分解展は、口コミが命綱です。 そして投稿した方は、お気付きの通り。私、超エゴサしてます。 もれなく「いいね」ないし「リツイート」をさせていただいてます。すいません。 私自身、エゴサしながら、嗚咽してしまうような熱い投稿を散見しま

          ググりタグる長谷川

          視点の持ち方

          「西洋人とは骨格・体型が違うから、参考にならない」 このような意見を少なからずいただきました。 そのもう一歩先を提供することが叶わなかったのは、東京展での大きな反省です。 半・分解展に展示された衣服は、どれも個性的です。 現代を生きる私たち、それも服づくりの現場に携わる方には、ひときわ奇異に映ったと思います。 見た目よりも、袖を通した時に初めて知りえる「着心地」や「シルエット」 それらは感じたことのない、別次元の感覚だったはずです。 来場者の感想 その1 その2

          半・分解展のジレンマ

          悩んでいます。 この負の感情は、東京展を終えて愛知展が始まったころに芽生えました。 悪い芽は早く摘みとってしまいたいのですが、現在進行形で私の中で日に々に大きくなっています。 悩みの種となったのは「納得感」です。 私は、東京を終え、愛知の中盤から半・分解展を ” 納得 ” し始めました。 人は納得すると、自己肯定感や満足感に包まれます。 それ自体はきっと良いことのはずですが、私には悩みの種を育てる養分となってしまいました。 私は「伝わった」という感触に、納得感を覚え

          半・分解展のジレンマ

          今、想うこと

          半・分解展を終えて、挑戦したいことが増えました。 このBlogに書き留めておきたいことも山ほどあります。 関わってくれた人たちへの感謝の言葉や、数字でみる結果報告、半・分解展2019について、などなど。 今は、近々で挑戦することについて書きます。 まずは「オーダー会」を開催すること。 東京と愛知で開催します。 日程は、東京は盆前、愛知は盆後にできればと思っています。 なんのオーダー会をするのかと言えば、私のつくる服のオーダー会です。 個展会場では、2着だけ私の

          トークショーのお知らせ

          半・分解展の開催まで残り20日となりました。 そして2018年も5月に突入。時の流れは恐ろしいです。 さて、個展期間中は毎日、様々なイベントが行われます。 半・分解展は再入場無料。 気になるイベントにはドシドシ足を運んでください。 皆さんの知的好奇心をくすぐる興味深いイベントを用意しました。 詳細はコチラからご確認ください。 そのなかでも、特に注目のイベントが 中野香織氏とのトークショー です。 内容は「現代のブランドの価値 と その伝え方」 を探るトークショ

          トークショーのお知らせ

          それは、フランスの消防服でした

          今回の個展は「私の眼に、その一着がどう映るのか?」に焦点を当て展示します。 2016年。 初めて個展を開いたときに意識したことは「多様な価値観」に触れることでした。 展示される衣服をみて「芸術」だという人もいれば「教科書」や「コンテンツ」だという人もいる。 当時、私が最も興味をそそられたのが「他者の視点」であり、その視点を少しでも多く引き出す為に「展示のキャプションは簡潔に」「展示品に私の思想はのせない」という2点を意識していました。 しかし、今回は違います。 私

          それは、フランスの消防服でした

          想い

          半・分解展 2018のテーマは「体感」です。 本物を見て、触れて、試着して、全身で感じる展示とします。 私のコンセプトである「100年前の"感動"を100年後に伝えたい」 この想いを、より深く感じていただく為に「体感」というテーマを設けました。 これまで同様に、フランス革命から第一次世界大戦の衣服を半分分解し「標本」のように展示します。 標本の前にガラスはありません。 直に見て、手で触れて、その質感や重みを感じとって下さい。 そして、分解されあらわになった内部構

          圧倒的な体験・体感を

          2018年5月23日(水)~28日(月)の6日間。 東京、渋谷にて半・分解展 Vol.2 を開催します。 半・分解展って何ぞや?と興味を持って頂けた方は、InstagramやTwitterで「半分解展」と検索してみて下さい。 個展の様子や雰囲気が感じとれるかと思います。 半・分解展では一貫して「体験・体感」に重きを置いてきました。 100年前、200年前、果てはフランス革命まで遡り、旧き衣服を展示しました。 その展示方法も常識に捉われない方法をとりました。 1着

          圧倒的な体験・体感を

          技術が循環する環境をつくる

          生産管理をされている方から質問を頂いたのでこたえます。 私は生産管理を本職とした経験がありませんし、いわゆる低価格帯の商品を扱ったこともありません。 なので具体的なアドバイスは出来ないです。 しかし、質問主さんはもうやりたいことが決まっているように見受けられます。 質問内容をみると「もっと良いものを、しっかり作りこみたい」と自分の想いを書いてありますね。 だけど「値段や納期に制約される」と。 やりたいことをやるには、環境を変えるのが1番だと思います。 相手を変えるより、

          技術が循環する環境をつくる

          パタンナー外に出る

          最近は パタンナー副業体験談 や 手に職を 足取りは軽やかに など「副業」に関連した投稿が続きました。 改めて読み返してみると「具体例」をきちんと出せていなかったな。と反省したので、今回は 実録:副業シリーズ!! 第3弾として「セミナー&レクチャー」の副業体験談を書きたいと思います。 実は、前々から私が言っていた「技術職ほど、多様な価値観に触れるべき」の真意は 評価基準が全く違うところで、自分の技術で戦ってみよう! という想いを込めたものでした。 他のブランドのパターン

          パタンナー外に出る

          手に職を 足取りは軽やかに

          パタンナーの方からこんな質問を頂きました。 「副業をしようと思っている」そして「どのようにして仕事をもらうか」考えているとのこと。 私は「やってみてから、どのようにするか考えれば良い」と思います。 パタンナー副業体験談にも書きましたが、私の場合は「ある日突然仕事がきて、それに応えてみたら面白くて続けた」という状況でした。 「ある日突然くる仕事」って何やねん! と思うかもしれませんがSNSなどで発信していたら勝手に仕事がくる時代です。 もしくは身近な人から、洋服つくって

          手に職を 足取りは軽やかに