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患者さんを捉える -座位や背臥位で腰痛が出る症例-
以下に記す症例について、見方、知識の使い方、考え方の流れが参考になれば幸いです。
情報)
20代の方である。
椅子座位や背臥位で寝ていると、左腰部に圧迫するような痛みが生じる。
部位は、左PSIS上部である。
![](https://assets.st-note.com/img/1701647784795-BLoM3c67fk.png)
その症状は徐々に強くなっている。
Q)原因は?
A)圧迫感があることから組織への圧迫が原因である。
部位は、左PSIS上部なので、そこで圧迫される組織として、左仙腸関節が有力である。
但し、L5/S1に近いので、L5/S1の椎間関節や椎間板の可能性もある。
まず、有力な仙腸関節について調べた。
Q)どうやって?
A)左右のPSISと仙骨の境を触診し、PSISの出っ張りの差から仙骨の偏位を確認した。
その後、骨盤の前後傾の自動運動を行ってもらい、その時の出っ張りの動きの差から仙腸関節の動きの変化を捉えた。
![](https://assets.st-note.com/img/1701647979487-aKIK45Q1hO.png)
Q)状態は?
A)左PSISの出っ張りの差が右に比べて大きかった。
そこから仙骨が右回旋方向に動いていることがわかった。
![](https://assets.st-note.com/img/1701648039018-ikfHL0uIr0.png)
※ この場合の仙腸関節の動きは、仙骨と腸骨の相対的な動きである。
よって、仙骨の右回旋以外に、左腸骨の後傾と捉えることも出来る。
しかし、腸骨が動くとした場合、下肢筋が絡み複雑になる。
そこで、腸骨が動かないと仮定している。
Q)それと症状は結びつくか?
A)仙骨が右回旋していることは、左仙骨がうなずいている。
仙骨のうなずきは、仙腸関節を圧迫する動きなので、圧迫感の症状と一致する。
![](https://assets.st-note.com/img/1701648168170-Hoq3qk09IO.png)
A.I.KAPANDJI 著 塩田悦仁 訳:カラー版 カパンジー機能解剖学 Ⅲ脊椎・体幹・頭部 原著第6版 より引用
Q)椅子座位、背臥位による痛みと、仙骨の右回旋の結びつきは?
A)仙骨の右回旋は、それによる左仙腸関節の圧迫で症状が出現する。
よって、圧迫を軸にすると
椅子座位では、自重により仙腸関節が圧迫される。
しかし、背臥位では、自重による圧迫は起こらない。
ここで、腸骨が動かないと仮定して腰椎が前弯すると、それにつられて仙骨が前傾(うなずき)して仙腸関節を圧迫する。
![](https://assets.st-note.com/img/1701648325685-Y4Y5siiQyc.png)
Q)評価では?
A)腰椎の前弯が触診と視診で確認された。
Q)アプローチは?
A)背臥位の痛みは、腰椎の前弯から来る仙骨の前傾である。
仙骨を前傾させるのは
・脊柱起立筋の緊張が高い
・腹部筋群などで腸骨後傾筋の緊張が高い
・腸骨を前傾させる股関節屈曲筋の緊張が低い
ことが考えられる。
※ 上記理由は、仙腸関節の動きは、仙骨と腸骨の相対的位置関係なので、仙骨と腸骨を別ものとして捉えている。
しかし、それでは、座位の痛みに対応できない。
そこで、仙骨の右回旋自体を押さえることにした。
Q)何筋の収縮を促すか?
A)仙腸関節包に付着する筋の収縮で、関節包の緊張により回旋を押さえる。
Q)評価では?
A)左腸腰筋の低下があった。
腸骨筋は前仙腸靭帯に付着して、仙腸関節の動きを押さえる筋である。
![](https://assets.st-note.com/img/1701648578222-WNwSo9udDN.png)
また、腸腰筋は仙腸関節の前面を走行するので、それ自体が仙骨の右回旋を押さえる。
他に
運動時に、腰椎の前後弯の動きを出したくないので
仙腸関節を骨盤底部から支える骨盤底筋を収縮させ
仙腸関節の下方で仙腸関節を左右から圧迫を加え
仙腸関節の動きを押さえる。
Q)方法は?
A)腸腰筋収縮を座位で行ったが、腰痛が増加したため背臥位に変更した。
![](https://assets.st-note.com/img/1701648708208-bjYHS402mN.png)
![](https://assets.st-note.com/img/1701648729218-7bJFtRLSPw.png)
骨盤底部に位置し、骨盤底筋群の収縮を促す内閉鎖筋の収縮を行なった。
![](https://assets.st-note.com/img/1701648760503-aBb4yLOSC9.png?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1701648784000-fHUbZpBFT4.png)
![](https://assets.st-note.com/img/1701648799970-jiLFomTi0f.png)
Q)結果は?
A)痛みは減少した。
Q)座位の運動で痛みが増した理由は?
A)それについて評価は実施してないので推論であるが
①
症例の左腸腰筋は右に比べて弱かった。
腸腰筋は腸骨筋と大(小)腰筋に分かれる。
左仙腸関節の緩みから考えて、左仙腸関節関節包に付着する腸骨筋が大腰筋より弱い可能性がある。
抗重力肢位では、筋への負荷が大きい。
このとき、腸骨筋より力がある大腰筋の作用から仙骨の右回旋が助長された。
②
左下肢を持ち上げるための股関節屈曲筋収縮で骨盤が前傾するが、それを押さえるために腹部筋が作用する。
その腹部筋を腹直筋が中心で担った場合
腹直筋による脊柱の動揺を抑えるために脊柱起立筋が働き、仙骨の前傾が助長された。
Q)①②を証明するには?
A)腹部筋や起立筋、前弯の有無は触診、視診でわかるが、腸腰筋はわからない。
しかし、座位で右下肢を上げた時の左右PSISの状態で間接的にわかる。
Q)それは?
A)座位と右下肢を上げた時の左右PSISの出っ張り具合を触診で見る。
①の大腰筋の作用とした場合
仙骨の右回旋なので、左PSISは出っ張り、右PSISは出っ張りが減る。
![](https://assets.st-note.com/img/1701649138800-qvaCGNIvfF.png)
②の起立筋の場合
仙骨全体の前傾なので、両PSISは出っ張る。
※ 仙骨と腸骨の接触面のPSISの出方に注目
![](https://assets.st-note.com/img/1701649189205-1RJsN17LVd.png)
![](https://assets.st-note.com/img/1701649205004-fm2Sf5jDDd.png)
最後までお読み頂きましてありがとうございます。
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